勇者として生まれました

@moru20220223

プロローグ

「おぎゃーーーー、おぎゃーーーー」


 寒く雪が積もる中、王都から遠く離れた外れの村に天から降り注ぐ光の柱が現れた。それは、勇者が生れたという証である。


「よ~頑張った!立派な男の子じゃ!それに、光っておるぞ!?」


 赤子を抱きかかえた村の老婆が興奮気味に、タオルに包まった赤子をその母へと抱き渡す。


「はぁ~。かわいいぃ~...私の赤ちゃん。」


 とても、とても愛おしそうに顔をほころばせ赤子を抱きしめる母に、天から光が差し込みまるで神様からも祝福されているかの様に見える。

 そこに、ドタバタと慌ただしくドアを開けもう我慢できないとゆうように一人の男が入ってきた。


「うっ生まれたんだよな!男の子か?女の子か?......?光ってないか?」

「これっ!うるさいわ!静かに入ってこんか!」


 老婆に叩かれながらも気にせず赤子と母親に歩み寄る。


「元気な男の子ですよ。あなた。」

「そうかぁ。かわいいな...がんばったな!」


 赤子の顔を見てようやく落ち着きを取り戻した父親は、二人を抱きしめる。そして、村の長でもある老婆に光の理由を問いかける。


「村長。どうして、この子は光っているんだ?」

「おそらくだが、勇者様の生まれ変わりなのではないだろうかと思っておる。言い伝えでは、勇者様が生れた瞬間に光の柱が現れ、その後成長したその子は、魔物を打ち滅ぼし、世界を救ってくれるそうだ。おぬしらもよく小さい頃から絵本や、詩人から聞いてきたであろう?」

「それは、まぁ。よく聞いてきたけど、作り話だろ?」


 村長の話に半信半疑の父親は赤子の顔をまじまじと見つめる。それに対し母親は意気揚々と話し出す。


「この子はぜっったい!勇者様ですよ!だって、私とあなたの子なのですもの。それに、こんなにもかわいいんです。間違いないですよ」

「そっそうだな。俺とお前の子だものな。うんうん!間違いないな!!」


 父親は納得したように、再び二人を抱き寄せ幸せをかみしめる。


「いや、可能性の話ではあるのじゃがな...」


 と、村長は二人の親ばかっぷりにややあきれながらも祝福し、温かい目で見守る。



 勇者が生れた村が温かい空気に包まれる中、それと同時期に、さらに遠く人が踏み入れることのない深い森の奥には、禍々しいどす黒い闇の柱が現れた。それは、活性化された魔物たちを統べる魔王の復活であった。


「魔王様の復活じゃーーーーーっ」


 闇の柱を中心に、無数の魔物が魔王の復活をはやし立てるなか、闇の柱が徐々に収まり魔王の姿が現れる。

 その容姿は、背丈はゆうに5メートルは超え、漆黒の肌に、額には2本の白い角。禍々しいオーラを纏い、魔王たる風格を醸し出す。

 魔王は、閉じていた目を開け自分の姿を確かめる。そして、辺りを見回し怪訝そうな顔をしたかと思うと、けだるそうに片腕を払う。


「...さわがしい」


 一言つぶやいたかと思うと、凄まじい爆風が魔王の腕から巻き起こり、目の前の無数の魔物たち、木々が吹き飛び、吹き飛ばされた魔物たちの悲鳴とともに巻き添えを食らわなかったその他の魔物たちが一斉に黙る。

 そこに、一人のしわがれた声の魔物が魔王の前にひざまつく。


「ま・魔王様。ご復活おめでとうございます。私は、この度、復活のお力添えをさせていただきました。先の侵略では参謀を務めておりました。覚えておりますでしょうか?」


 おずおずと顔色を伺うように話しかける。それに対し、魔王は一瞥すると、


「我の復活に何年経った?」


 魔王の質問に対し、即座にその参謀の魔物は


「およそ、千年でございます。時間がかかってしまい申し訳ありません」

「かまわぬ。よくやった」


 魔王が労いの言葉をかけるとその参謀の魔物は涙を流しながら


「もったいなきお言葉、誠に・・・。ご復活を心待ちにしておりました」


 魔王は一つ頷き

「我は復活した!!これより、すべての人間を支配し、この世界を我ら魔物の手のものに!!!!」

「「「うおぉーーーー」」」


 魔王の言葉に、沈黙していた魔物たちが一斉に雄たけびを上げる。



 勇者と魔王の誕生によりこれから世界をかけた戦いが始まる。

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