とあるTRPGプレイヤーの卓その2

国見 紀行

皆さんには「推し活」に取り組んでもらいます

「は? 推し活?」

 はい、予想通りの反応ありがとうございますマック田中。

「まず、皆に作ってきてもらったのは『ゲームキャラ』って位置付けね。で、そのゲームを操作する人としてプレイヤーがいる、と」

 俺はシナリオをざっくり説明した。


 あなた達は、とあるオンラインゲームのプレリリース体験会に参加しています。

 この体験会では、クエストをクリアするごとにもらえる『友情ポイント』を10ポイント集めることで、キャンペーンガールであるアイドルグループ『神輿坂みこしざか64』の特典カードがランダムでもらえます。

 あなた達は、自身の推しであるアイドルグループのカードをもらうために徹夜で体験会に参加しました。

 見事、10ポイント集めて自身の推しの特典カードをゲットしてください。


「……つまり?」

「焦るなフレイア飯田。クエストはまあ、技能判定を何度かしてクリアするタイプな。最初に推しアイドルを全員1D100で決めてもらう。64を超えたら振りなおしな」

「名前を略すな! ……私は24」

「俺は55!」

「私は、13」

「僕は71…… いや、17ですね」

「いや振りなおせよ、それでいいならいいけど」

「これで構いません」

「まあ、セイイチ黒田がそういうなら。で、このクエストなんだけど、一人一クエストじゃなくて、最高全員が同じクエストに参加できる。ただし、職業補正が強く出るから、得意そうでないクエストに無理に参加すると逆に失敗する。もちろん、複数人で参加するとボーナスとして人数分のポイントが入る。一人でクリアすると1ポイント、四人でクリアすると4ポイントが四人にそれぞれ入る計算だ。もちろん複数人が参加した場合、全員が成功しないと得点にならないから、その辺慎重に頼むぜ」

「なんだ、簡単じゃない!」

 早速フレイア飯田が余裕発言。果たしてそうかな?

「時間限定クエストですね、まとめてクリアできるなら早く終わるし、ポイントも多く入る。逆に手堅く行くなら得意なクエスト単身でコツコツとクリアする方が良い、と。なるほど練られていますね」

 セイイチ黒田が不敵に笑う。ああその通りだよ。

「まあ、言いたいことはほとんどセイイチ黒田が言った通りだ。お前たちの職業は結構被りなく設定してくれたおかげで一点突破は難しいと思うけど」

「わかった、制限時間は?」

「残念ながら秘匿情報だ」

「ずりーぞ! 計画が立てらんねーじゃねえか」

 何度かマック田中と押し問答が続いたが、結果的にプレイヤーで話し合ってまずは一点突破できるクエストを全員で行こう、ということになった。


「では、こちらの『流鏑馬やぶさめ危機一髪!』を全員で行いますわ。使用武器に制限がなさそうなので、私でもポイントが確実に取れそうですし」

 数分の相談ののち、アレックス佐藤さんが最初のクエストを宣言する。佐藤さんはガンマンだからまずは手堅く、ってところか?

「はいはい、それは投擲に関する技能がある人は技能成功値に+20していいぜ」

「私ですね。なにせガンマンですし」

「私もよ! なんせ錬金術使うし」

「待てって、流石に錬金術の何処に投擲要素があるよ?」

「GM《ゲームマスター》、魔法は集中力コンセントレーションですよ?」

「最近見たアニメに影響されやがって! さすがに+20はやれん! せいぜい+10だ!」

「使う技能は馬術でいいわよね?」

「まあ、……あ! そうか騎士か!」

「さんきゅー!」

「俺はそもそもニンジャに投擲技能がある! しっかり+20もらうぜ!」

 ぐぬぬ確かにニンジャならあってもいい! さすがニンジャ汚い。

「そもそも僕も裏の顔はアサシンですから、遠距離攻撃はお手の物です」

「……お前ら、またまともにクエスト進行しない気だな?」

「いえいえ。この上なくルールに則って行っているはずですよ? きちんとGMの許可を得ています」

「ああそうだよ! 許可したよ! くそうそのリアル技能のコミュスキル俺にもくれー!」


 結局、全員がさっさと10ポイント以上を獲得し、見事特典カードをゲットした。

 だが…… ここからが地獄の始まりなのだ。余裕があるのも今のうち。


「じゃあ、特典カードを1D100で。64を超えたら振りなおしだ」

 全員の目が凍る。

 これこれ。この「おまえは何を言ってるんだ」って空気だよ。

「そういえば、クエスト前にも同じダイスを振りましたね」

「もしかして、それぞれ同じ目が出ないとダメとか?」

「その通り。もし違っても、再入手した時に出目から除外していいから」

「お前、ふざけんな! 1/64とか一晩で終わらねーよ!」

 くっくっく。そうそうそれ。で、さらに追い打ち。

「お前たちがカードを引くたびにカードは減る。被ることはないけど、クエストを失敗しても減る。常に成功し、ずっと引き続ければいつかは当たる。失敗したときにロストした番号が当たり番号だったら、セッション失敗になるぜ。そのかわり……」

 そう、こんな内容だと厳しすぎる。救済措置がないと流石にひどいからな。

「もし引いたカードが誰かの『推しアイドルのカード』だったら交換してもいい。自分の排出テーブルからロストしても、他人から貰うのはアリだ。ま、ざっくり全員15回くらい周回すればお目当てのカードは手に入るぜ」

「ちょっと、卑怯じゃない!?」

「道理で一周が五分もかからないと思ったんですよね……」

 なんせ前回は半月もかけて作ったシナリオが三分でクリアされたんだ! これくらいダイスの転がる音を聞いてもバチは当たらんだろう!

「さあ、どんどんクエストを回してくれ! 時間は『まだまだ』あるんだからなぁ……


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とあるTRPGプレイヤーの卓その2 国見 紀行 @nori_kunimi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ