第4話 第2の彼氏 ⅰ

午前8時21分。

電車は、53分発だ。8時半に北改札前にと、鷹取主任に言われている。

名刺と名札と、資料、うちの市の案内セット。

とりあえず、大事なものは忘れていない。あ、あと、切符…

切符…上着のポケットに手を突っ込んだ。

あ、あった。よかった。

私が持ち物を確認していると、鷹取主任が現れた。29分、1分前だ。

「おはよう。待たせたね。」

「おはようございます。いえ、それほどお待ちしていませんよ。大丈夫です。」

「53分発だったね。行こうか。電車で出張内容、確認しよう。」

「はい。」

1泊だから、スーツケースは軽い。主任の後を追って、改札を抜ける。

「主任、6号車です。」

「そうか」

指定席の切符も昨日渡したのにな、見てないのかな。

座席につき、荷物をまとめて上にあげた。

「貸して。」

主任が私の分もあげてくれた。

「すみません。」

ガタン

電車が揺れて、動き出した。長野までの出張が始まる。

「早速だけど、資料を確認しようか。手短にいこう。」

「はい。」

鷹取主任の指示は的確で、分かりやすい。

「うん。よく出来た資料だ。準備ありがとう。」

そういうと、腕時計を確認し、着くまで休もうと言ってくれた。

「はい。」

ふぅ~、ひとまず、よかった。

それにしても、主任の腕時計、チラッとみえたけど高価なブランド物だ。確か、奥さんは、東海南銀の頭取のお嬢様だったはず。奥さんからの贈り物だろうか…。たしか、まだ、子どもはいなかったはず…。

あ~、早く終わらせて、旅館の美味しい御飯食べた~い。

恭くん、遅刻せずに、行けたかな…

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