第4話 地下の運び屋

 貨物運送協同組合員1033号。

 球野 久は運送組合に属している。表向きはアプリ経由の派遣型の配達人となるが、主な稼ぎは地下SNSからの仕事だった。金が欲しいと地下SNSに潜り、ウラの仕事を取りに行く。

 「まいど、タマキュウ?」なおしまはエセの大阪弁を使いこなす謎の女だ。いや、貴重な相談相手。裏家業のオペレーターである。

 「バイクに乗ってるん? オーケー薬局 三寨溝店に封筒取りに行ける?」

 薬局はドラッグディーラーの隠語だ。ってことで販売するヤツはヤク剤師と言っているのはタマキュぐらい。

 「あのきたねー薬局だな? 今、バイクだし、あとすぐに着くよ」 

 運びの仕事は薬局からの依頼で軽い封筒をチテイの落伍者どもに届けることが多い。中身はぶっ飛ぶやつに決まっている。落伍者があの世にぶっ飛んだところで、誰も構やしない。安価なせいか、飛びたい奴らに飛ぶように売れている。

 いつもの薬局の前で携帯端末から流れるニュースを見ていると、湾央区 特別区長 新道誠司とガーコム社の野屋が会見を話している。暗号データの流出についてのようだ。記者からの質問に新道は毅然と答えるものの、話している内容はようとしてとして知れず、ただその場をかき乱しているだけのようである。記者は時折、怒号を上げ新道と野屋を問いただした。やれやれ、この既視感だけはどうにもなんねーななんて呟いて、タマキュウは薬局に入った。

 「はい封筒。いつもの場所、わかるよね」カウンター越しに配達物を受け取る。

 「ワンオーの地下ってどうなってんのかね。暗号データって資産になったりネットワーク上の鍵になったり、すごいみたいじゃん? さっきネットのニュースでやってたよ」   

 ニュースが本当なら、湾央全体で使用する倍の電気はどこに消えているのか? 発電の余剰分で暗号資産の密造をしているのだろうかといくつか気になったことを聞いてみた。

 「暗号を作っているらしいってことはここら辺の人達、みんな言ってるけどね。ジンクさんとかに聞いてみれば?」

 「ジンクねぇ。悪い噂ばっかじゃない。会える方法から探さないと」

 タマキュウは電動バイクで届け先に向かった。パートナ一体、湾央の最下層では何が起こっているんだ?

 なおしまにコールを入れてみる。

 「そう、あいつはいつも俺が尋ねたい時にコールに出ない」

 落伍者に薬局からの届け物を渡し、そのまま家へ向かった。


 湾央区 貨物運送協同組合員 1号様宛。

 ポストに封筒型の宅配便が届いていた。住民ひとりひとりに区から携帯端末が貸与されている湾央区では封筒が届くのは珍しい。

 球野は大きな仕事が入ってくることをの招集と直感した。

 

5月25日 湾央ベースボールスタジアムのデーゲーム。

東京モップスサイドに来られたし。山野

 球野は山野の名前を見つけ、半年前の仕事で嫌な記憶がよみがえってきた。

 仕事に対する情報は確かだが、とにかくのミスが抜けが多い野郎だ。仕事とはいえ、山野と組むことを思うとうんざりした。

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湾央区九寨溝 kowoegaku @kowoegaku

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