第6話 告白

 野田の話を聞いた翌日、佐伯と会うことになった。

 佐伯の方から会いたいと連絡が来た。

 彼と最初に会った日に行った例のカフェで待ち合わせた。


 どうやら昨日の夜、やっと野田と電話で話ができたとのこと。


 好きな人が出来たのは本当で、だからさっさと乗り換えたかった、そう言われたと。


「…彼女が決めたことだから、いいんです。だからもう忘れることにします」

 コーヒーを前に彼は言った。


 諦めたような、そんな様子だった。


“忘れることにします”


 そう言った彼の口からは赤い色が見えた。


 彼が野田を忘れることなんて簡単にはできないだろう。きっとこれからも。


 嘘が成立する限り2人は会わないのだ。この先、一生。



 ……本当にこれでよかったんだろうか。



 本当に?



 異母兄弟は結婚できない。ましてや子供も作れない。

 どのみち2人が一緒に幸せになることは難しい。

 余計なことはしてはいけない。


 けれど――。


 私は耐えきれなくなって言ってしまった。


「実は……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る