第2話 振られた彼
泣くのを待ってから、とりあえず近くのカフェで彼の話を聞くことにした。
お店のオリジナルコーヒーを目の前に、彼は泣き腫らした顔で話し始めた。
振られた彼の名前は、
見た目からしていかにも真面目そうな彼は、職場で清掃員として働く彼女、
最初は挨拶する程度だったが、天気やニュースの話から次第に趣味や休日の話をする仲となった。
より親密になったきっかけは、急な雨だった。
天気予報が外れ激しさを増す雨に、傘もない彼はタクシーで帰ることにした。丁度その時会社のエントランスで一人たたずんでいた彼女を見て、一緒に乗らないかと声をかけた。
最寄り駅の方向が同じだったこともあり、そのまま相乗りして別れた。
数日後、休憩室に行くとゴミをまとめている彼女と遭遇した。彼女は彼に気づき、この間のお礼がしたいと食事に誘った。
その後2人で過ごすことが増え、正式に付き合うことになった。
「結婚も考えていた頃なんです。もっとずっと長くいるならって、一緒に家具とか見るようにもなってて……。両親に会うことも話してました」
「でもここ最近、連絡が少なくなったりして、だから今日会って話したいって伝えたんです」
「で、振られたと」
振られたというワードが既にトラウマになっているのか、彼の目に涙が溜まり始めた。
「あ、いや、その……」
しまった。追い詰めてしまった。
しかし、結婚の話まで進んでから別れ話を切り出すとは……。
「実は彼女、詐欺師なのでは?」
「そんなことありません!」
佐伯は強く反論した。
「葵さんは、僕が今まで出会った中で一番優しい人なんです。僕なんかに勿体ないくらいの人です……」
「僕がプレゼントに指輪を贈ろうとした時だって、高価なものはいらない、それよりも思い出が欲しい、一緒にいたいとか言う人なんです」
ごめん、ごめんとすぐに私は謝った。
もし結婚詐欺師なら、指輪なり高価なものを貰ってから別れるだろう。
詐欺師の可能性は低いかもしれない。
「好きな人ができたなんて、やっぱり僕、つまらない男なんですかね。何が足りなかったんだろう……」
“好きなひとができたの”
そう言った彼女の口からは赤い色が見えた。おそらく嘘なんだろう。
しかし、なぜ彼女は嘘をついた?
少し時間を置いてから佐伯は言った。
「……好きな人ができたってことは、浮気されてたってことですよね??」
「
「へ?」
「浮気現場を見たら僕、きっと諦めつくと思うんです。あの人は運命の人じゃなかったって」
「葵さんの尾行を手伝ってください‼︎」
なぜそうなる……。
そうして私は彼に協力するハメになった。
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