第4話

 投票前日、相模さんから聞かされた私の順位は最下位に転落していた。新曲のイメージ動画のせいだ、誰が見てもおかしい。

 それとは別に楓の人気は上がっている、何かを振り切れた者と振り切れなかった者の違いなのだろうか。

 ネット投票とグッズが売れた値段が人気となる。最後の集計までまだ時間はある、諦められない、やっと掴んだアイドルなんだから――――




 蘭、紀子に電話をかけるが、繋がらない、それどころか、いくらこちらからメッセージを送っても、沖縄からの返信すら返って来ていない。



「このままじゃヤバイって、マジ」





 この時期になるとメンバー同士は誰とも口をきかなくなる、だがもう皆の中では私が落ちると確定つけているのだろう。



「幸利、そうだ、幸利にも」


「――――もしもし」



 幸利の声が電話ごしに聞こえると、安心した。



「幸利、私推しの活動やってる?」


「ん? やってるよ」


「じゃあなんで私が最下位なのよ!」


「え? そんなこと言われても」


「幸利、私がどうなってもいいの? ちょっと今からCDとかDVD とか、あるだけ全部私推しで買ってよ!」


「は、はぁ?」


「ヤバイのよ! このままじゃ地獄行きなの、蘭や紀子達とも連絡つかないし、幸利も私推しなんでしょ! じゃあこんな時にしっかり推し活しなさいよ!」



 幸利は黙ったまま電話の向こうにいた。



「もしもし、幸利、聞いてる? 早く買わないと時間ないから、早く、早く買って――――」


「もういいだろ」



 私の声を遮るように、幸利は声をあげた。突然の声にこちらも言葉が詰まる。



「お前がなりたかったのはこんな姿なのか?」


「そ、そうよ! 私はアイドルになりたかったの!」


「友達を無くしてまでお前はこんな姿になりたいのか? 俺も含め蘭や紀子達は必死にお前の推し活してたよ、だがお前は今月も、今月もって、自分のことしか見えていないお前はお前じゃないよ、あいつらもお前とは縁を切るってよ」


「そ、そんな――――」



 そこで電話は切れた。持っていたスマホがスルリと手から滑り落ちる。



 私が、本当になりたかったもの――――



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