とあるケモナー推し男の転移して獣人族を推して生きて行く。
御峰。
とあるケモナー推し男の転移して獣人族を推して生きて行く。
僕が学生だった頃、夢中でゲームにハマり、クラスではイジメに遭うくらいにはオタクと呼ばれていた。
学生も卒業した僕は、何となく就職して、何となく働いて、夢も希望もないままに生きていた。
そんな中、僕が見つけた
僕が見つけたそれとは――――――アイドルである。
たまたま仕事帰りにゲームを見に寄った町で、たまたまアイドルを見つけて、そのアイドルのライブというものに誘われたので、そのまま見学して、僕は見事にそのアイドルにハマってしまった。
本来なら普通の
何故なら――――――
なんと! アニマルコスプレアイドルだったのだ!
そう! 何を隠そう!
僕は、重度のケモナーなのだ!
いつもケモ耳の可愛らしいキャラクターが出るゲームは全買い、アニメは欠かさず見ている。
そんな中、まさかこういう活動をしているアイドルがいるとは思わず、僕はそれからどっぷりハマりにハマった。
全ての有り金をはたいてまで、アイドルに貢いで、それで更に金がなくなり、休む時間も惜しみなく働いた。
――――享年、三十二歳。
僕はアイドルに貢ぐ為に働き過ぎて、その短い人生を終わらせてしまった。
◇
「ほっほっほっ、目を覚ますのじゃ」
どことなく、僕が幼い頃に亡くなった最愛のお爺ちゃんの声がする。
「っ!? こ、ここは!?」
目を覚ますと、僕が生きていた場所とは、明らかに違う風景に戸惑う。
だって、どこを見ても真っ白な世界が広がっているだけだ。
「ほっほっほっ、おぬしは過労働で倒れて、そのまま亡くなったのじゃ」
お爺ちゃんの言葉に、僕はその場で崩れ落ちた。
ああ…………僕が亡くなったら、誰があのアニマルコスプレアイドルを推すのだ…………ファンは僕を込みで一人しかいかなったというのに…………。
「それで、おぬしを別の異世界に転移させる事が決まっておるのじゃ」
「へ? どうして、僕なんですか? 僕は何か良い事もしてはいないんですが……」
「そうじゃが、おぬしのお爺ちゃんは、世界にとても大きく貢献したのじゃ。そんな彼の最後の頼みで、孫であるおぬしが亡くなった際に異世界に転移をさせてあげる事を確約させたのじゃ」
お爺ちゃぁぁぁぁん!
最愛のお爺ちゃんはそんな事まで……。
「それで、新しい世界でおぬしに、特別なスキルを一つ与える事になっているのじゃが、どんなスキルがいいのじゃ?」
「……何でもいいのですか?」
「何でも良いぞ? 魔法でも使えるし、最強の剣士にもなれる! 思いのままじゃ!」
僕が願うのはたった一つ。
それは――――
「僕が欲しいスキルは『推しを応援する力』でお願いします!」
◇
ああ、目が覚めると、今まで見て来た景色からまた変わり、田舎っぽい世界になっている。
そう言えば、お爺ちゃんからスキルを一つくれるって言われて答えたら、凄く笑われたっけ。
まあ、いっか。
心の中でスキルを思い浮かべるのその内容が浮かぶという。
ステータス。
『スキル - 推しを応援する力』
術者が応援した者に絶大な力を与える。
おお~、ちゃんとスキルを獲得出来ている。
その時。
向こう側に誰かが戦っている音が聞こえる。
怒声も聞こえる。
なになに…………。
「このクソ獣人共め! 〇ね!」
…………。
僕は真っ先に戦場に向かって走った。
お爺ちゃんが言っていたけど、欲しかったスキル以外にも、高いステータスを与えてくれたそうで、生活に苦労はしないと思うと言われている。
本当にその通りになっているようで、元の世界とは比べものにならないほど早く走れる。
――今なら車にだって追いつけられそう。
というか、こんなに走ってるのに戦場まで着かないんですけど!? どんだけ遠くまで聞こえるんだよ! 僕の耳は!
暫く走ると、向こうには重々しい鎧を着た人間と――――ケモ耳だ!!
ケモ耳の人が戦ってる!
僕は迷わず戦っている中に飛び込み、
「ばっきゃやろ~!! ケモ耳の尊さを知らんのか~!」
殴った鎧の人間が漫画みたいに、戦場の奥に飛んで行った。
あれ? そんなに強く叩いたっけ?
そもそも、僕が人を叩くとか、ありえないんだけど!?
「お、おい! 何故人間が獣人の味方をする!?」
一人の人間が僕に叫んだ。
「ばかもん! ケモ耳は世界一最高なんだぞ!」
「は、はあ!? お前……何を言っているんだ!?」
ほら!
僕の後ろを見てみろ!
こんなに可愛らしいケモ耳が沢山いるんだ!
お爺ちゃんありがとう!
こんな素晴らしい異世界に送ってくれて!
鎧の人間達が全員僕に剣を向ける。
「同じ人間でも、獣人の味方をするやつは許さねぇ! 覚悟は出来ているんだな!?」
剣!?
何か本物みたいなんですけど!?
その時、獅子のような獣人が一人、僕の腕を掴まえて、後ろに投げ飛ばした。
「う、うわああ!?」
「助けてくれてありがとうよ! 本当な人間なんて信じないが、お前のおかげで、私が到着出来るまで犠牲がなかったからな、ここからは私に任せておけ!」
獅子獣人は頼もしく叫んだ。
なるほど…………人間は僕に剣を向けたが、獣人族は僕を助けたとみる。
つまり、どっちが正義で悪なのかくらい明白だ!
着地した僕はそのまま獣人を助けに行きたかったのだが、相手は武装した人間だ。
そもそも鎧はともかく、本物の剣に斬られたら、いくらステータスとやらが高くても怪我しそうだしな……。
その時、僕の視界に震えている獣人達が目に入った。
んあああああ!
ここは天国なのか!!
その時、ふと、向こうでアニマルコスプレアイドルを推していた時の光景を思い出す。
ああ、こういう感じだ。
アイドルの子が舞台で歌って踊って、見えない敵と戦っていた。
今は目の前に敵がいる。
いま僕がやる事はたった一つ!
そう!
推しを応援する事のみ!
行くぞ!
「ヲタ芸スタート!」
僕が叫ぶと、両手に眩く光る棒が二つ現れる。
なんの躊躇もせず、その棒を両手にしっかり掴むが、今まで握って来たペンライトと違って、握り心地がとても良い! これもスキルの力かも知れない。
「オタ芸技!
僕の身体が思うように動き、ペンライトをぐるぐる回し、応援を始める。
そうだ!
これぞアイドルを推していた僕がやってきた事だ!
これで獣人達を
僕の視界に入っていた全ての獣人達に色とりどりの光が纏う。
「獣人達よ! 僕が
獣人達はあたふたしながらも、その身体の奥から
ああ…………あの日僕が連れられて見たあのアイドルのライブがまさにこんな感じだった。
たった一人、僕の応援で、彼女は懸命に歌い踊った。
今の目の前にいる多くの獣人達もそうだ。
僕の技で彼らが戦えるなら、もっと推してやるぜ!
「二番目の技行くぞ!! オタ芸技!
獣人達の身体に、もう一つの光が灯る。
「な、なんだ!? この身体の底から燃え上がるような力は!?」
「す、凄い! これから私達も戦えるかも知れない!」
「ああ! 俺達も戦おう! この応援さえあれば、俺達でも人間達に勝てるかも知れない!」
獣人達は応援をバネに、鎧の人間達に向かって飛びかかった。
戦場がどうなっているかは知らない。
でも僕は懸命に獣人達を
そして…………僕は最後の力を振り絞り、最後の大技を繰り出す。
「ヲタ芸秘技! ウルティマゲイザー!」
すると、僕の周囲に僕の残影が四人現れ、僕と寸分違わず動いてくれる。
五人となった僕の秘儀は、獣人達をますます強くするのだろう。
――――そして、僕は秘技を終えると気を失った。
◇
周りのガヤガヤした音が聞こえ目を覚ます。
「お! 起きたか! 人間の英雄よ!」
「ん……こ、ここは…………」
「ガーハハハッ! ここは獣人族の村だよ! 君が守ってくれた村だ!」
「ん? あ! そう言えば、応援していた獣人達はどうなったんだ?」
「ああ! 君のあの不思議な踊りの応援によって、全員無事に帰還出来た上に、人間共を全員追っ払う事が出来たよ。悪いが人間達には数十人が亡くなってしまったけどね……」
「それは仕方ないのだ。ケモ耳を蔑ろにするやつが悪い。万死に値する!」
「そこまで……まあ、私達は助かったからいいが、君はそれでよかったのかい?」
「ああ。僕はケモ耳の味方だ」
「そうか…………その、なんだ、もしよければ、これからもこの村で住まないか?」
「なっ!? い、いいのか!?」
「もちろんだ! 君はこの村の英雄だからな!」
そして、僕は獅子獣人によって、手を握り外に出された。
あれ?
獅子獣人さんって……もしかして…………。
外では獣人の皆さんが踊ったり歌ったりしていて宴会の真っただ中だった。
そして、獣人の皆さんは僕を出迎えてくれて、僕は村の一員となった。
これは、ケモナーの一人の男性が異世界に転移して、そのスキルで獣人族を応援し、世界を征服する話だが、その話はまたいずれ。
――――後書き――――
ここに書いてあるヲタ芸の技をぜひ探して見てみてください。
ものすごくカッコいいです! 本当に!
とあるケモナー推し男の転移して獣人族を推して生きて行く。 御峰。 @brainadvice
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