第5話 大いなる厄災 その4

変化が生じてすぐに仕事が増えた俺は、膨大な書類に目を通しながら確認のサインを書く


今のところ共和国軍と連邦軍から異常は発見されていない


しかし慢心は一切ない


いまだ自分たち以外の生物や、知的生命が見つかっていない現状


調査隊によると我々が存在する場所は島なのではないかという意見が多くみられた


全長が3000k㎡もあるこの国が丸々入る大きな島だというのは誰も信じないだろう


資料を見た俺でさえも「ありえないだろ」と思ったほどだ


しかし東西南北全ての先に海のような広大な水辺が広がっていた


海岸線に沿っての調査も現在行われているため、俺たちがいる場所が大陸か島かわかるのは時間の問題だろう


しかし、もし本当に島ならばこの国はランドパワーからシーパワーへの急速な転換が必要になる


それは多くの時間と資金を必要とし


国土防衛に置いてノウハウの少ない海軍力を早期に身に着けなければならない


元の世界の米国がいい例だ。あの国はシーパワーの運用が世界で最も優れていた


パナマ運河を通じて太平洋と大西洋の航行を可能にし、ユーラシアの蓋であるイギリスと日本を味方陣営に取り込んだ


できれば我々もそうした巨大な防衛網を築きたい


人間のような知的な生物がそもそもいればの話だが


自室から見える、赤いレンガが多く利用された城壁と大広場


そこに歩く人々


彼らの生命の安全も自分が守っていかなければいかない


俺には、いや、今の私にはとんでもない責任がある


この連邦に住む生命、財産、土地それら全てを守らなければならない


そう思いながら空を見上げるとドアにノックが鳴った


「誰かな?」


俺の問いに答えたのは褐色肌のメイドだ


そうそう彼女の名はファイツレという


説明していなかったね


「閣下、お伝えせねばならぬことが」


そう言い俺のすぐ横にまで迫ってくるファイツレに俺は言った


「あれ?電話でもよかったのでは?」


と、どう考えても失礼な態度に言った後で気付いた


「いえ、傍受を避けるため口頭での伝達に参りました」


なるほど、ぬかりないな


そう言われて俺を人差し指を耳に向け、もっと近くに寄るように指示した


スッと美しい白髪の髪を揺らしながら俺の耳に唇を近づける


なんてすごい光景だろう


元の世界じゃこんなこと絶対にされなかった 


「調査隊の全工程が終了いたしました。やはり我々のいる場所は巨大な島である可能性があります」


「やっぱりか」


俺がそう言うと彼女はもっと小さな声で囁いた


「それと、見たことのない生物を捕らえたとの報告があります」


!?


ドクッとなった心臓が早くなる


これが俺たち連邦が最初に接触したこの世界の生物だった













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