第3話 怒涛、入学式後の一週間

各クラスで自己紹介が終わった後、クラス写真の撮影や校内探検、教科書購入など、入学式でずっと座っていたのとは逆に立ちっぱなしの動きっぱなしという状態がずっと続いた。

ようやく全てが終わり教室に戻ってくると、

「はいみなさん、お疲れ様でした!今日の予定はこれで終わりです。早速明日から授業があるので、教科書忘れないようにね!じゃ、解散!」

先生の解散の一声で、

「やーっと終わったわぁー」

「疲れたー、さっさと帰ろうぜ」

「明日から授業かよ、めんど〜」

といった疲労を隠せない声が上がる。

またそれとは反対に、

「この後どうする?カラオケでも行くか?」「いいね!仲良くなるにはもってこいじゃん!いこ!」というまだまだ元気な声も。

かくいう颯真は早々に帰宅する準備を済ませて、真っ先に教室を出ていた。

しかし結論から言えば、「さっさと帰ろう」という声も「カラオケ行こう」という声も、双方共に完全に砕け散ることとなる。


校舎を出ると、そこには熱気渦巻く戦場と化した中庭が広がっていた。

そう、新入生第一の関門、「部活動勧誘」である。

「そこの君!いい体してるねぇ!!柔道部どうよ!!」

「いや!君には筋肉同好会がよく似合ってる!同志にならないか!」

「何言ってんだ!その筋肉はレスリングやるためにあるようなもんだろ!ぜひレスリング部に入ってくれ!」

と筋肉を見込まれた者。

「君身長高いね!バレー部どうよ?」

「いや、我がバスケ部ならすぐにレギュラーメンバーに入れるぞ!」

と身長を見込まれた者。

他にも女子マネージャーを求めた野球部や、

全国大会常連の吹奏楽部など、女子を必死に勧誘している部活もある。

案の定、同じクラスの鳴瀬なるせ 海翔かいとはサッカー部やら水泳部やら色々な運動部から声をかけられていた。

もちろん颯真そうまも例外ではない。散々声をかけられ、「はぁ、なるほど」とか「ごめんなさい、入る部活決めていて...」とかテキトーに誤魔化しながら、なんとか拷問のような中庭を抜けて校門を出て帰路に着いた。


予想外だったのが、この部活動勧誘が同じ熱量のまま一週間続いた事である。

どうやら、この月上島高校における部活動は高校生活の大半を占めていると言っても過言ではないらしい。

小学校や中学校では授業が終わった後のおまけ程度の感覚でしかなかったが、月上島高校の生徒は合格した時点である程度の頭の良さを持っているとされているため、学校は勉強と部活の両立に力を入れているようだ。

またここでは何かしらの部活動に入部することが義務であり、そのこともあってか部活動勧誘は毎年こんな感じだよ〜というのが帰りのSTで聞いた実里みのり先生談である。


昼はまだ慣れていない授業、帰りには部活動勧誘と怒涛の1週間(主に後者)が終わり、家に着いた颯真はベッドに突っ伏していた。

「あ〜、疲れた、人生で一番疲れた、人多すぎでしょ」

あの熱量は年始の神宮か某レジャー施設の入場開始直後しか味わったことがないし、それらに並び立つくらいじゃないかと感じるほどだった。

極度の疲れからか、普段口に出さないような独り言も今は自然と出てくる。

「部活動どうしようかな...帰宅部ダメなんだよなぁ〜。

部活動の入部が義務とか、入試前はあまり深く考えなかったけど、よくよく考えたら結構だるいな...運動部はあんま興味ないし、写真部とか読書できるところも無かったしなぁ」

そんなことを愚痴りつつ、風呂に入って布団に入るとそんなことはお構いなしに眠気が襲ってきた。

(明日明後日は休みだし、写真でも撮りに行くか...)

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