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驚愕しているボクの隣で、父は斧を持ったまま唖然と佇むと勇者の前に跪いた。
「あんたの勝ちだ……! さすが勇者様だけにある。私はモブとして、薪をひたすら割るという役目の人生だったが、もう悔いは無い。最後に勇者様をこの目で見れた事を誇りにおもう…!」
「はぁ…えっと、自分はただ薪を軽く割っただけですけど?」
その瞬間、父は燃え尽きたようにガクッと固まって動かなくなった。両手に斧を握りしめたまま、彼は役目を果たして亡くなった。死因は無理な過労と出血死だった。だが、彼の顔は穏やかだった。またこうして役目を果たしたモブキャラが勇者の前で燃え尽きた。まるで蝉の一生の様に一瞬の命の儚さと煌めきの中で彼は役目を終えたのだった。アルムは父に駆け寄ると声をかけた。
「父さん、父さん! 死なないで! ねぇ、起きてよ! 父さぁん!!」
斧を握りしめたまま亡くなった父の亡骸をアルムは抱き締めて泣いた。そして、そこから立ち去る勇者に向かって怒りをぶつけた。
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