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「父さんやめてよ、そんな事したら死んじゃうよ!」
ボクは泣きながら父を止めた。
「どけアルム! こっ、これが父の役割りだ……! お前はそこで父の最後の勇姿を見ておけ…――!」
「で、でも……!」
『ふんっ!!』
父は両手が壊れているにも関わらず、力いっぱいに斧を振り上げて薪割りを始めた。その勇姿と役割りを必ず果たすと言うプロフェッショナル魂を息子の前でみせつけた。
手は血だらけで斧が血まみれになった。アルムは、泣きながら父に『お願い、父さんやめて! 死んじゃうよ!』と言って止めに入ったが、聞く耳を持たなかった。そして、豪快に薪割りをし続けた。一心不乱にまるで何かに取り憑かれように彼はひたすら斧で薪割りをし続けたのだった。そこに勇者が現れると、父は死にそうな顔で自分の台詞を勇者に向かって話した。
「そっ、そこのお前さんが、ゆ、ゆ、勇者だと…? どうみても…ひよっ、ひょっこじゃないか…。そっ、それなら…この、この俺と勝負をしろ……!」
「あなた大丈夫ですか? 顔色、凄く悪いですよ?」
勇者は斧を持ちながら血だらけの手をした男をギョッとした表情で見ると、心配そうに話しかけた。男は口から吐血を流しながら勇者に挑発して見せた。
「俺と勝負をしろ……!」
父は死にそうな顔で勇者に薪割りを挑みにいった。その言葉に彼の覚悟が伺えた。勇者は不思議そうに、「薪割りですか? はぁ、べつにいいですけど……」といって近くの斧を手にした。父はアルムに「これが父ちゃんの役目だ! お前もいつか立派なモブキャラとして役割りを果たせる人間になりなさい!」といって頭をポンと叩いた。
「父さんやめてよ…! もう十分だよ!?」と言って止めに入ったが、父は勇者に堂々と薪割りを挑んだ。精悍な顔付きで震えた手で斧を握った。勇者は彼らの前でトコトコと歩いて切り株の前に立つと、両手に斧を構えて一言話した。
「はぁ…じゃあ、いきますよ。」
勇者は父の前で斧を振り上げて、軽く薪割りをして見せた。その瞬間メキメキバーン!と切り株を薪ごと叩き割って粉砕した。そして、斧が地面に突き刺すと大地が割れた。その衝撃は凄まじく、人の力とは到底比べようもないほどの力だった。そして、勇者の頭に戦闘時に出る時のステータスとコマンドが現れた。
今の薪割りでレベルが99から100に上がったと表示され。そして、お宝アイテム。モブの割れた切り株を入手、経験値が手に入ったと、謎のテロップが空中で流れた。そこに居た誰もが勇者の力に驚愕すると鼻水を垂らして釘付けになった表情で勇者を一斉に見た。
「あ、すみません……! 薪を割ったつもりが、力を出していないのに切り株ごと壊してしまいました!」とポリポリと頭をかいて見せた。アルムは勇者の脅威的な力を目にして驚くと息を呑んだ。
「こ、これが勇者の力……!? レベル100…!?」
見かけはただの青年なのに、レベルの数値が異常に高く、これが選らばれし主人公である勇者の証しなのかと脅威せずにはいられなかった。
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