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父の掌は薪割りをし過ぎて、ボロボロになっていた。もうまともに斧を振るなんて無理だった。村長は次の代役を村会議で話したが、誰も名乗り上げなかた。何故ならそこに居た誰もがそれぞれの役割りとモブキャラを務めていた。そんな父を心配する母は、村役の井戸の前で水汲みをする女として役割りを果たしていた。そして、台詞は『あら、そこの勇者様。良かったらこの村の美味しい水を飲みませんか?きっとその喉の乾きも潤いますわ』そう言って勇者に、井戸の汲んだ水を飲ますのが母の役割りだった。そんな母は、父と同様に何かに取り憑かれように、毎日井戸の前で水汲みをしていた。
村の前で見張りをしている人も毎日何かに取り憑かれように見張りをしていて、与えられた台詞も無いから、彼は無言で村の見張りをしたまま佇んでいる。そんな彼が話した様子をみた者は、誰一人もいない。そして、村の中に居る全員が毎日、何かに取り憑かれようにそれぞれの役割に務めていた。ボクはそれにある意味。恐怖を感じていた。狂気すら渦巻いてて、ボクはモブキャラとして生きることにこのままで良いのかさえ思ってしまった。
ベッドの上で寝たきりの父はある日、ボソッとボクに話した。この村に居るみんなはただのモブであってそれ以上にはなれない。もし、なれるとしたら村人Aから、台詞とちゃんとした役割りのあるサブキャラになるしか無いと話して、父は涙を流した。その父の言葉にボクは涙を流して天を恨んだ。『勇者』さえいなければ、ボク達はモブキャラの呪縛から解放されるのに――。
そして、ついに時は来た。
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