パセリの風味の香る蛤スパゲッテイ

mitre refen klj

第1話   

田舎の新潟県から、単身上京して、社会人生活5年目に入った昭雄は、

今日は、取引先の創業50周年のパーティーに、出席して、大企業とい

うこともあり、大会場で開かれた。200人にも及ぶ初めて見る光景に

昭雄は、パーティーの初めから足ががたがた震えていた。そして、同僚

や取引先の社員の優秀賞や、優秀アイデア賞など表彰が、行われた。

 そんな進行の間、昭雄は、当日営業に邁進して、昼飯を食べていなか

ったことに気づいた。昨日、取引先から数量ミスの指摘があり、陳情に

向かっても相手先の課長に会うにもなかなか会えず、2時間かけて、待

機していた。その間に、こちら側の数量ミスでなく、急で集荷センター

の取り違えを納得していただくように説明をいかにするか。また、取引

先の今回の数量ミスによる不信をどううまく払拭させていただけるよう

にいかにしめくくれるか等色々と熟考していた。

 そして、実際化粧品の出荷のルートミスを必死に伝え、理解を頂くの

に、これまた1時間もかけてしまった。そして、どうにか従来通りの取

引継続のとりつけ応接間を出た頃には、汗びっしょりで、心の中では、

発狂寸前だった。会社へ戻る車中では、涙まじりの顔で、必死に何かず

っと独り言を言っていた。会社の駐車場へ着いて報告書を記入するまで

、呆然と固まっていた。そして、会社の上司にその旨を伝えると「よし、

よくやった。お疲れ様。今日、盛大なパーテイー楽しんで来いよ。」と

言われて、ひたすら、まだ未熟なのに、信用して、取引先に出向かわせ

て頂いて感謝するばかりであった。

 盛大なパーテイーが、順調に進行されてきた。そして、しばらくし

て、豪華なメニューが、テーブルに並べられていった。そして、昭雄

は、明らかに司会の声もだんだん聞かなくなり、一人夢中でテーブル

の豪華なメニューをすごい目で追っていた。ハンバーグやお寿司やカ

レーライスやスープなど、昭雄の大好物がずらりと並べられていた。そ

して、バイキング方式で、食事が、始まり、昭雄は、先ほどの好きな料

理を次々と食べていった。

 いつも、こういうケースでは、彼は、最後に一番の大好物を食べるこ

とにしてきた。そして、当日の、彼が最後に選んだのは、パセリのたっ

ぷり香った蛤のスパゲッテイでした。

 その、スパゲッテイをテーブルに置いて、彼は、余りの感動でしばら

く瞑想にふけっていた。彼の地元新潟県では、あさりやしじみなど勿論

大量に出漁されていて、よく少年時代は、友人と週末浜辺で潮干狩りを

していた。夕方まで、仲間と無我夢中であさりやシジミを取っては、バ

ケツに入れ、他の仲間の変わった貝の色をよくじいと見てはなかなかご

く普通の貝しか取れなく自嘲していた。

 そんな中、日も耽ってきたころに、昭雄は、ようやく蛤を取れて大喜

びしていた。そして、帰路し、食卓では、親が、早速お吸い物を作って

くれた。昭雄は、まだそんなメニューしか蛤では、食べたことがなかっ

た。 だが、その食事も、三つ葉が浮いて、蛤がパカーンと口を開いて

よい香りがして、なかなか大好物の一つではあった。

そして、今現在の世界に、ふり返って昭雄は、パセリと独特のバターで、

パスタが、踊りだすほどのイメージを自分の世界で描いてしまっていた。

早く食べたいな、早くと焦りかけていた。しかし、このメニューを昭雄

は、10分も凝視して、この味は、自分の予想と同じか、シムレーショ

ンに浸かっていた。

 そして、彼の想像で、次は厨房の中で、コックが、どういう料理をし

ていたのか透視に挑戦していた。その風景とはまず、パスタを、千切り

機械に通して繊細にきっていく。次に、フライパンに、オリーブ油や、

バジリコ、そして、玉ねぎの千切り、パセリを入れ、弱火で加熱した。

その間、パスタを様々な香辛料で、湯がき、大きなボールに入れ、それ

をすぐフライパンに投入して、ベースを完成していた。

 そして、蛤のみ、小フライパンで、バターをたっぷり弱火でじっくり

浸していた。細かく卵とじとイタリアケキャップソースとケチャップラ

イスを蛤に乗せて蓋をした。

 しばらくして、昭雄の横の席に、綺麗な女性が声をかけてきて、びっく

りして、椅子が、ひっくり返りそうになった。しばらくの間、昭雄は、我

に返り、恥ずかしくなる謎の時間が続き、慌てて女性に「あ、大丈夫です

。余りに豪華な食事ばかり満悦して、酔ってまして」と答えた。

 そして、昭雄は、ゆっくりとパセリ風味の蛤スパゲッテイを食べ始めた。

ゆっくりと味を噛みしめて食べて、ケキャップライスとケキャップの独特

な味と蛤の奥深さと調整された味に「ん、これは」と感心させられていた。

 昭雄なりに、化粧品メーカーの営業社員では、あったが、この初めて食

べた蛤のオリジナル調理には、目をみはるものがあった。そして、彼なり

に、普通の調理で、終わることなく、これを今彼の営業の基本でも、もっ

と顧客の感心するようなプラスアルファの工夫を今後努力しようと彼の人

生を大きく変えるきっかけでもあった。

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