お死活
@aqualord
第1話
「あなた自分のやったことわかってますか?」
ぼんやりとした視界の中で、警察官が血相を変えて私に詰め寄ってくる。
「とにかく、その手に持っている物を渡しなさい。」
私は自分の手が握っている物を見た。
これは何なんだろうか。
私を取り囲んでいる警察官の1人が自分の腕を押さえている。
血が飛び散ったようなシミが制服についている。
手に持っているギラギラした物にもぬるりとした血のようなものがついている。
「これを渡せばいいのですか。」
私は、今自分が手に持っている物を渡せと迫られていることは理解した。
「そうだ。渡しなさい。」
はいどうぞ、という感じで私は無造作に手を差し出した。
その途端、正面に立っていた警察官が飛びすさる。
「危ないじゃないか。」
私の後から怒号が聞こえ、地面に引き倒された。
倒れた私の上に警察官が飛び乗って、身動きできないようにする。
いったい何が起こっているのだろう。まるで私が犯罪者で逮捕されようとしているみたいじゃないか。
私が何をやったというのだろうか。
私は。
何を。
やったのだろう?
記憶が混乱しているのか、今に至るまでの記憶が、曇りガラスの向こうで誰かが踊っているかのようなとりとめない映像としてしか出てこない。
その誰かは悲鳴を上げている。
私が心から愛していた存在に思える。
怒号もあげている。
私と同じようにその人を愛していた存在に思える。
多数の人影が大声を上げながら一斉に動いて、私はそれを追って道路に飛び出した。
道路に飛び出して、何をしたいのか。
自問自答していた記憶がある。
自問自答と共に呆然としていたのか。
あるいは満足していたのか。
私に強く声をかけてくる人がいて、私は手を差し出した。
その次の記憶は、今だ。
その記憶は今途切れようとしている。
それはわかった。
さっき、押し倒された拍子に私の体にぎらぎらした物が突き刺さったからだ。
私は、深く満足した。
お死活 @aqualord
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