〇〇を運ぶ仕事

「営業部第2課の甘利です」

「人事部の蜜川です。ご相談内容は何かな?」

「担当部署を変えていただきたく」

「異動の希望ね。ちなみに今の部署は着任してからどのくらい経つの?」

「8時間ほどです」

「じゃあまだ着任してすぐだね。それなのにどうして? 最初は大変だと思うけど、仕事は徐々に慣れていくものだよ」

「健康上の理由でして」

「どこか悪いの?」

「はい、実は花粉のアレルギーが出てしまって」

「はあ~若いのに、災難だったね。それじゃ仕事にならないでしょう」

「ええ、全くダメです。上司からは、『お前はチームの足を引っ張るだけだから部署を変えてもらえ』と言われてしまいました」

「ただね、会社の内にも外にも花粉はそこかしこにあるからね。できるだけ花粉を避けた部署というと、あそこしかないかな。死体運び」

「死体運び……具体的にはどんな仕事ですか?」

「社内で死んだ社員を社外へ運んで捨てる仕事だよ。死体は仕事の妨げになるし、社員の士気を下げかねないから早く取り除く必要がある。気が進まないかもしれないけれど、会社運営には絶対に必要な仕事だよ」

「いえ、仕事をいただけるだけでありがたいです。精一杯務めさせていただきます」

「いい心意気だ。では、早速今日からお願いします。私の死体もいずれ甘利さんに運び出してもらうことになるかもしれないね。その時はよろしく頼むよ」

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