出発日未定 片道切符の旅

「あの~、私の列車はぼちぼち出発ですか?」

「君の列車はまだだよ」

「切符には日付がないのですが、私が乗る列車はいつ出発ですか?」

「それは私にはわからない。タイミングだからね」

「出発の日が決まらないことには、準備の段取りができないですよ」

「明日出発だと思って準備をしなさい」

「だけど、明日ではなくてもっとずーっと後、例えば五十年後に出発するかもしれないんでしょ? なのに今日から準備をするのってなんだか馬鹿げてないですか?」

「そういう人に限って、出発の時に『もっと前から準備しておけばよかった。早くから準備しておけってどうして誰も教えてくれなかったんだ』って言いますね」

「まあでも、忘れ物をしたら、取りに帰ればいいですよね?」

「それはできない。片道切符だからね」

「帰りの切符はないのですか?」

「切符以前に列車がありません」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る