原液を好んで飲む男
カルピスでも何でも原液を好んで飲む男がいた。
「君、原液をそのまま飲んではじきに体を壊すよ」
「ふん、なぜ?」
「なぜって、原液というのは、希釈して飲むことを前提として製造されたものだろう。薄めて飲むからちょうどいい
「中毒ね。そうかもしれねぇな。仕方ねぇのよ。だって世の中にはやたらと味が濃くて中毒性が高いものがあふれているんだから。カルピスを飲むときだけ、お行儀よく薄めていちゃあね、そっちの方がかえって毒なのさ」
「どういうこった?」
「俺たちはみんな原液に侵された生活を余儀なくされているというこったね。効率化、自動化、合理化……いろいろと
「それはあまりにも極論だろう。百歩譲って君の言うように世間が徐々に遊びを許さなくなっているとしても、自らその遊びをつぶしてしまう行動をとらなくてもよかろうに」
私は、ガラスの容器から角砂糖を摘まみ上げて自分のカップに入れた。彼に苦言を呈した立場上、いつもよりはかなり控えめに、10個にとどめた。
スプーンで混ぜる時間も勿体ない気がして、まだ溶けきらない砂糖といっしょに、あまり甘くないコーヒーをいっきに飲み干した。
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