井戸の水は汚れている?

「井戸の水は汚れている」

 というデマを、ソウは村中に流した。

 それを真に受けた村人達は、その日から水をくみに、遠くの川まで行かねばならなくなった。

 井戸水が本当は汚れていないことを知っているソウは、密かに井戸を独占した。

 ところが勘のいいトンホという者が、すぐにそのことに気づき、ソウの家に来て言った。

「昨日、俺は井戸に小便をした」

 その井戸の水で、今さっき喉を潤したばかりのソウは、顔面蒼白になった。

「一昨日は大きい方もしたな」

 まもなくソウの口の中には、酸っぱいものがこみ上げてきた。

 トンホは、井戸水をたたえた甕の前まで行くと、ひしゃくで豪快に掬った水を、がぶりと飲んでみせ、目の前で身悶えしているソウを見くだしながら、高らかにあざ笑うのだった。

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