DANSHARI

 押入れというのは、社会の縮図である。

 その価値を理解されずに何年もほこりをかぶり続けている陶器類、場違いなくらい異国情緒あふれる置物、分厚いくせに情報が古くて役に立たない辞書、壊れているのにどこか魅力のある照明器具、デザインがきれいというだけで保管されているデパートの紙袋etc。関連性のないモノというモノが一所ひとところに会して無秩序の極みを体現している。


 妻か夫のどちらか、あるいは両方が、断捨離の番組でも見て感化されたのだろう。F家の大掃除は、年末でもないのに突然始まった。

 比較的状態のよいものはフリーマーケットサイトで販売し、それ以外のどうしようもないものは、ゴミ袋に入れて街のクリーンセンターへ。

「押入れって案外たくさんものが入るんだな。ゴミ袋を多めに買っておいてよかったよ」

「そうね、中にはゴミ袋に入りきらないものもあるしね」

「スノーボードのことを言っているのか、大丈夫だよ。あれは冬になったらフリーマーケットで売るよ」

「……」

 

 センターから帰ってくると、妻は居間のソファでそのまま眠りについてしまった。疲労困憊か、無理もなかろう。不用品処分と言うのは、頭と体をフル稼働してようやく完遂できる難業なのだ。

 それにしてもそのまま18時間もぶっ通しで眠り続けるとは、普段余程寝ていないのだろうか。

 

 ん? そういえば夫の姿が見当たらないが…。

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