夜行性の「あいつ」
曇りガラスに映る輪郭は、うっすらぼやけていても、ペッタリとはりついたあいつの吸盤だけはよく見える。
いつからか、一匹のヤモリが我が家の窓を夜の住みかとするようになった。と言って、時々窓の外っかわをペタペタ歩いているのを確認できるというだけで、住みかと言うのは大げさだったかもしれない。
ともかくも、お目当ては窓から外に漏れ出た明かりに寄ってくる夜の虫どもだろう。格好の狩場というわけだ。
観察していると面白いもので、普段はほとんど微動だにしないのに、ある瞬間、まるで違った生き物みたいに、窓の下から上まで一気に駆け上がったりする。よほど好物の獲物を見つけたに違いない。
ある日のことだった。窓にはヤモリがもう一匹増えていた。友達、兄弟、恋人か、それともたまたま居合わせた赤の他人か。
いや、待てよ。どうしてこの内の一匹がいつものあいつで、もう一匹が新入りだと言い切れる? そもそもいつも私が見ているあいつは、毎回違う「あいつ」かもしれないじゃないか。こっち側しか見ていないあいつのことを、俺はほとんど知らないんだ。
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