ナメクジとカタツムリ

 一匹のナメクジと、一匹のカタツムリが、葉っぱの裏で舌鋒鈍く論じ合っていました。

 

「カタツムリくん、きみにはりっぱな殻があるね」

「なめくじくん、きみは殻がないから、せまいすき間も通れるね」

「カタツムリくん、きみは僕みたいに乾きがこわくないだろうね。逃げ場があるものね」

「なめくじくん、殻がないきみは、カルシウム不足を気にしなくていいね」

「カタツムリくん、きみは人間からかわいがられていいね。歌まで作ってもらってさ」

「なめくじくん、殻がないきみは、人間の子どもたちに乱暴に遊ばれることがなくていいね」

 

 葉っぱがゆらゆらし始めました。

 おや、と思った二人は、葉っぱの表に来て、天の恵みに体をゆだねました。

 

 二匹とも、さっきまで何を論じ合っていたのか、とうに忘れてしまっています。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る