第44話 ギミヤのハンター、アンナ登場。

 ココは、休息所で水を飲んでいるラリッドに話しかけた。ココの後ろには、スンナがちょこんと両手を前に添えて、立っている。

 「ラリッド、ここにいたのか。どうだ、戦況は?」

 光が宿った目を細めて、ラリッドは、ココを見上げた。しかし、ああなんだココか、といった表情に変わる。

 「まあ、ぼちぼちだよ。俺のつても含めて、10体ぐらいか?結構、倒せた方じゃないかな?そっちは、どうだい?」ラリッドは、ココとスンナを交互に見てそう言った。

 「え?ああ、スンナとは、途中で会ったんだ。俺が一体のラージャンと接戦を繰り広げている時に。まあ、俺達は、二人で一体討伐だけどよ」

 「でも、1体でも倒せたならいいぜ。0よりかはな」

 「それより、ハンターの4分の1が死んだって本当スル?」ずっと黙っていたスンナが、こわばった物言いでそう訊いた。

 「ああ、時計塔とギルドが壊されて、放送が不可能になってから一気に死人が増えた。この休息所でも負傷者は、ごまんといるぜ。足や手などの体の一部を失った者もいれば、中の臓器が破壊された者もいる。もちろん、そいつらは、戦いから退いてもらうことになるがな」

 「ラージャンがまだ沢山残っているのに、そんなのきつ過ぎるでスル~」


 3人は一緒に、一息入れていた。

 すると突然、騒がしい複数の足が休息所入口の階段を踏み鳴らす音がした。耳が慣れてくると、馬も複数頭いることが分かった。

 階段を下りる足音は、徐々に増えていき、しばらくすると一人の女を先頭にした集団が顔を出した。休息を取っていたハンター達は皆、新顔たちに一斉に目を向けた。すると、先頭の女が声を高らかにこう話す。

 「我が名は、アンナ。ギミヤ所属、弓使いのSS級のハンターだ」

 彼女に向けられていた目が、怪しげから歓喜に変わった。ラージャンとの戦いに疲弊していた彼らは、顔を明るくさせて口々に喜びに言葉を交わす。

 しかし、それを妨げるようにアンナが次の言葉を続けた。

 「我々は、ギミヤからの援護だが、我々が危なくなったら、即刻立ち去るつもりだ。もちろん、どちらにしろ今回の援護は、高くつくぞ。だが、安心しろ。我々にはラージャン討伐のエキスパートがいる。そうそう、負けることはないだろうからな」


 「これで二体目ね」ソフィーは、一人でそう呟く。彼女の背中にはラージャンの死体が転がっていた。

 ソフィーは、三体目の標的を目に入れた。

 「剣、剣」と独り言をつぶやきながら、死んでいった同僚達の使っていたであろう放置されている武器を手当たりしだい物色する。丁度いい感じのものを、すぐに二本見つけることができると、逃さないように、すぐ獲物を追いかけた。

 ソフィーは、ラージャンを追いかけながら、途中で自身が宮殿に近づいていることに頭が回った。。

 城壁に開けっ放しになっている戸を発見する。ソフィーは、その中に駆け込んだ。壁を通り過ぎると、そこには二体のラージャンを相手するロナウドの姿があった。

 「ロナウド、、、。あんた、早いとは聞いていたけど、ラージャンと渡り合えるくらい早かったのね」ソフィーは、唖然としながらそう

 ソフィーは小声でいったはずだが、彼女のこぼした言葉はロナウドの耳にしっかり聞こえていたようで、ロナウドは、戦いながら「ありがとう。ソフィー!!」と声を張り上げた。

 終始目にも留まらぬ速さで動いていたロナウドが、突然ソフィーの真横に立ち止まった。そして、「ようやく、可愛い観客が現れたか。凄いものを見せてあげるよ」と言って、また姿を消した。

 突然のロナウドの消失に、ラージャン達は、立ち止まり背中を合わせて、顔をキョロキョロさせている。前からあったものだろうとも思えるくらいのほんの一瞬で、一方のラージャンが腹に大きな傷口が開いた。そのラージャンは、それに気づくと、バタン!と前方に倒れた。

 もう一方のラージャンが、背中を振り返って同胞の様子を見る。頭の処理がやっと追いついたのか、動揺を隠せない。

 そんなラージャンを憂うことなく、ロナウドの一撃は頭の上から喉ぼとけを貫いた。ズバッ!っと血が高く上がる。先のほうと同様の倒れ方をした。

 

 「どうだ。俺の剣技はすごいだろ」ロナウドは、ソフィーに歩み寄りながら、そう言う。ソフィーは、彼と少しでも目を合わせないように心がけて返事した。

 「そうね。クールぶっている普段のあなたにしてみれば、息が上がっているじゃない。なかなかの強敵だったのかしら」ソフィーは、一瞬ロナウドと目が合いそうになって、焦て目線を空に向けた。

 「そうでもないさ。ただ、観客がいなくてね。騎士団のみんながどっか行っちゃうもんでさ。まあ、いいんだ。君が来てくれたからさ」

 「元SS級のハンターの実力は健在ってことね」


 アンナの放った稲妻の走る矢は、光の速さで二体のラージャンを立て続けに葬った。

 「すげえ、、、」後ろで見ていたラリッドが感嘆の言葉を漏らした。

 「へへ~ん。凄いでしょ~。ラージャンも大したことないじゃん。この調子だと、全滅も時間の問題ね」

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