第32話 なぜラージャンがやってきた?
ロキオとマナは、お互いに身を寄せながら、木の陰に隠れていた。遠くの方で、巨体が崩れる振動が流れてくるも、それに耐えた。
「はぁ〜、もうなんで行くって言ったのよ」とマナが小声で愚痴を言った。
「だって、気になったんだもん。
モグリの森は、夜に活動してるモンスターが少ないって言ったのはマナさんじゃん。それにもうとっくに、討伐隊が討伐している頃だと思ったんだよ」
マナは、「ハァ」と短くため息をついた。
「あのモンスターね。多分、ラージャンだと思うわ。昔、辞典で見たことがあるの、完全な外来種ね。
本来は、モグリの森の向こう側にある山脈の奥地に生息しているんだけど、何故かここまで降りてきたみたい。
そもそも、人間に好戦的なタイプじゃないのよ。それがどうしたものかしら、不思議だわ」
「やはり、ラージャンか。ソフィーが言うなら間違いないだろう」ココは、うんうんと頷きながら言った。
「あら、ココも知っていたのね。だけど、鉄を必ず錆びらせる血なんて初めて見たわ。噂だと思っていたけど、本当だったみたいね」
2人の会話に、ラリッドが割り込んできた。
「あ〜、ラージャンか。俺も聞いたことあるぜ。確か、山脈の奥地にいるんだったよな。
というか、ここら辺だと滅多に見かけねぇモンスターがなんでここにいるんだ?おい、ココ。お前一回討伐したことあるんだろ?なんか、知っている習性とかないのか?」
「習性か〜。知っているものなら、縄張り意識が高いことかな。だけど、それは今回関係ないしな。
あ、あとは、自分または身内の所有物に厳しいって聞いたことあるな。特に、子供が居なくなったら、ビックリするくらい凶暴になるらしいぜ」
「つまり、この森にラージャンの子供が潜り込んできちゃったかもしれないってことね」とアンは言った。
「子供って、どんな見た目してるんだ?」とラリッドがココに尋ねた。
ココは、顎に手を当てて、顔を上に向けた。「う〜ん」 ココは、自身の記憶を遡りながら、ふととんでもないことに気が付いた。
そういえば、昼間の小動物狩りの最中、ラージャンの子供みたいな生き物いたな。珍しい、食べてみたいと思って、殺しちゃったけど…。
「知らないな〜、見たことない」
「そう言えば、ココ。あんた一人で狩りしていた時に、鉄が血で錆びるどうのこうの言ってなかったっけ?それラージャンの子供じゃない?」突然、リリアンが半目で鋭い発言をした。
5人の目線が一斉にココにいく。
ココは、目が泳ぎ始めた。
「ちょっと、その背中の籠見せてもらおうか」ラリッドが優しい声で言い、スッと籠の紐に指を通した。
ココが慌てて、籠から手を離させる。
「怪しいわね。場合によっては、重罪よ」とソフィーは言った。
ココは、自身の腰から片手剣を抜き取った。
「お、おい。俺じゃないぞ。ち、チチチチガウンダ。オレハヤッテイナイ」
ソファーは、「あら、私とやり合う気?無謀よ、やめなさい」と言うと、予備の剣を手に取った。
「ヤヤヤヤ、ヤロウジャナイカ。の、ノノノノゾムトコロダ」
ココは、ガクガクと足が震えている。前傾姿勢の膝をあまり曲げない歩きで、ソフィーに近づいて行った。
ラリッドは、ココが背中を向けたのを見て、ハンターで後頭部を殴ってみた。上手くいったのか、ココは、気絶して倒れた。
「上手くいったぜ」とラリッド。彼は、早速、ココから籠を取り外して、それを逆さにすると、大量の小動物たちの死体が転がって出てきた。
残りの3人も、籠周辺に集まる。
「うわっ!ウサギとリスばっかり。ココって案外小心者なのね」リリアンは、死体の山を見て、思わず口に出してしまった。
アンもリリアンと同じ反応を示した。
「おい、これじゃね?」
ラリッドが指をさす。確かにそこには、顔がゴリラで四足のモンスターがいる。
「ココが戦犯だったとはね。全く、無鉄砲に殺しすぎなのよ」リリアンはそう言った。
やっぱり、そこにいたのね。
ソフィーは、そう思いながら、木の陰に隠れているロキオとマナを発見した。彼女は、しれっと討伐隊を抜け出していた。
ソフィーは、物のオーラを感じ取ることが出来る。それこそ、彼女がハンターランクSSになった所以でもあった。そのため、暗いところでも、木々を避けることが出来、人の捜索も可能なのだ。
ソフィーが2人の側に立ち止まると、ピクンとまた別のオーラを感じた。ラージャンのオーラだ。
「ロキ様、マナさん。お迎えにあがりました」とソフィーは、ささやく。ゴソゴソと、物音がして、マナが返事した。
「あら、ソフィーさん?あの、ラージャン?は、もうおやりになったの?」
「まだです。ここが危険なので救出しにきました」
いきなり、周囲に光線が広がる。途端に、明るくなった。
顔を出していたマナが悲鳴を上げた。ソフィーの真後ろにラージャンが顔を覗かせていたからだ。
ソフィーは、すぐにラージャンに向き直ると、予備の剣を抜き取った。
「ロキ様!マナさん!早くお逃げ下さい!!ここは、私がなんとかしますので!」
ロキオも顔を出して、ラージャンの顔を覗いた。そんなロキオをマナは、グイッとラージャンとは逆の方向に引っ張る。
「待って、ソフィーさんが一人で…」
ロキオは、ソフィーの肩を掴もうとした。しかし、それをマナは防いだ。
「ソフィーなら大丈夫だわ。なんて言ったって街一番のハンターですから!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます