第27話 遭遇。
「スルスルリ~、おいら疲れたスル~」
スンナは、そう言うと、どしりと尻餅をついた。
討伐隊一行は、すでにモグリの森に入っており、それから1時間くらい経っていた。
「ちょっとスンナ!あんた、こん中で一番ハンターランク下なんだから、一番最初にへばってんじゃないわよ!!」リリアンが怒鳴った。
「まあいいじゃないの、リリアンちゃん」ラリッドがなだめる。
「良いわけないでしょ!一刻を争う時期なの!!みんな困っているんだから」
アンは、先頭を歩きながら、チラチラと後方を確認している。最後尾のココは、彼女と目が合うと、「そろそろここで休憩にしないか?」と提案した。
気が付けば、一行は、少し開けたところにいる。アンがシドロモドロになっていると、ソフィーの一声が最後の後押しをした。
6人が、輪になって座る。
ココが不意に立ち上がり、背負ってきた自身の籠の中身を漁る。残りの5人が、中を見ると、ウサギなどの小動物の死体が複数体ごろごろしていた。
「みんなは、休んでてくれ。俺は、ちょっと晩飯の調達に行ってくるからさ」
ココは、死体たちをもう一度籠の底に落とすと、それを背負って立ち上がった。
「あんた、それ。まさかとは思うけど、くる道中でやっていたわけ?」リリアンが睨み付ける。
「ああ、節約になるからな。安心しろ、討伐に支障はきたさないから」
「そんなわけないじゃない!ほんと、身勝手ね~。あんたって男は!!」
「これは、リリアンが正しい」ラリッドが追撃する。
「なんだよラリッドまで。討伐の時は、ちゃんと籠は、下に置くぜ」
「だから、討伐するまでに、疲れがたまるって言ってんでしょ!!」リリアンの頭は、沸騰寸前だ。
「ココさん。私たちは、十分間ここで休憩しています。それまでに戻って来れますか?約束できるなら、行ってもかまいません」
「うひょ~、アンちゃんやさし~」ラリッドが調子づくように言う。
「ちょっと、アンなに考えてるの?!!」リリアンの矛先が、アンに向きかわった。
「かたじけない。でわ」
ココが去ってしまうと、5人は、無言になった。リリアンは、あきれ果てたように、すねている。沈黙を断ち切ったのは、ソフィーだった。
「みんなに、聞きたいんだけど..。ここ最近のギルドって、ちょっと空気変わったと思わない?」
4人は、彼女の発言に一瞬戸惑う。しかし、一人だけ事情を知っているアンだけが、異様な反応を見せた。それを、ソフィーは、見逃さない。
「やっぱりアンさんも、そう思うでしょ?私が察するに、エギルの一件で、街人たちの本気に気づいて、それでやっと改心したんだと思うのよね。捨てたもんじゃないかも、今のギルド。そうちょっと思ってね」
ソフィーの口元に、いくつか振りの優しい笑みがこぼれた。それを見て、他の4人の心がポカポカした。
その時だった。ゴー!っと、激しくも瞬きすら許されない轟音が、彼らの横を通りすぎていった。
ハンターたちは、皆武器を手に、戦闘態勢に入る。アンは、ソフィーの懐に抱きかかえられた。
再び、同じ轟音が鳴り響く。しかし、今度は、さっきよりも大きく、さらにはその正体が目の端に映ったように感じた。
「おいおい、これ別々に分かれた方がいいんじゃねーか?」ラリッドは、冷や汗をかきながら、そう言った。
「でも、一人になるのはまずいわ。3手に別れましょ!」リリアンが即座に、返した。
新たな轟音が鳴り響こうとするその直前に、巨大な殺気の訪れを感じた一行は、別々に飛び散った。
一人逃げ遅れたスンナは、巨大モンスターに吹き飛ばされる。数十メートル浮遊した、その巨体は、森に端っこにたたきつけられた。ドシン!という鈍い音とともに、地面に亀裂を作った。
あまりの痛さに着地した部分を、すりすりと擦るスンナ。そんな彼の元に、一組の男女の話し声が近づいてきた。
「アン、けがはない?」ソフィーは、すっ転んでうつぶせのまま動かなくなったアンに話し掛けた。
ソフィーは、アンの左腕をつかんでいる。その状態で、引っ張りながら逃げたのが転んだ原因だと知りつつも、ソフィーは、ちょっとでも罪が軽くなるように、とぼけるような振る舞いをする。
アンがまったく、立とうとしないので、ソフィーは、彼女の顔を起こしてみた。
するとビックリ、アンの顔は血だらけ。体ごと起こしてあげると、その間に全面に赤い液体がいきわたり、イチゴのような風貌になった。
ソフィーは、アンを横にし、そのそばで穴を掘り始める。ある程度、深さが見えると、「ごめんね」と悲しそうにつぶやき、そっと埋葬した。
土を戻そうとすると、ソフィーは、アンに反撃を食らった。真っ赤な血で分かりにくかったが、実はアン、一部始終を目をかっぴらいてじっと見ていたのだ。
リリアンとラリッドは、すぐに再開できた。
リリアンは、再開するなりすぐに愚痴を言い始めた。
「まったく、あんなバケモンだなんて、聞いてないわよ」
それに対して、ラリッドはすかさず返した。
「ああ、実際、俺の部下にもアレと遭遇したやつがいるが、聞いたところ、なんなのかサッパリ分からなかったらしい」
「ねえ、機動性の低い武器使いの私たち二人じゃ、太刀打ちできないと思わない?」
「大丈夫だ。俺に作戦がある」
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