一章終わり 幕間
リヴィたちが出ていったそのすぐ後。ゴールドの髪をした男が慌ただしくギルドへと駆け込んできた。
「遅ればせながら、報告に上がりました……! 先程、【
「大丈夫。既にこちらでも情報は得ているから。それで、結果は――?」
「はい、混ざっていました。隷機の体躯にかすかに残っていた霊力の残滓がそれを物語っています」
「そう……。私も一人の【叛者】から持ち込まれた隷核を見てそうだと分かったわ」
「ではやはり【
門番から渡された無機に白い隷機の残骸をまじまじと見るライラ。その美眉にはしわが寄り、門番の顔には緊張が走っている。彼の顔に走る汗は疲労から来るものではないだろう。
「その可能性は高いわね。実際こうして証拠はあるんだし」
「……正直、信じられないですね。奴らが本当に存在していたなんて」
「貴方もギルドの人間なんだし、五十年前に【福音教】が何をしたかは知っているはずでしょ?」
「そうですけど、その当時はまだ俺生まれてなかったですし……。俺が見る空の景色は今も昔も変わっていませんよ」
「そんなの私だって同じよ」
一部の人間にしか伝わらぬこの会話。
これらを決して外に漏らすことをしない彼女らは、【上】へと報告するためそれぞれ証拠を持ってギルドの奥にある支部長室へと向かう。
その道中で、思わず零れる若干の焦りのため息を木の壁に聞かせながら。
「奴らの目的は多分だけど【
「【暴虐姫】がこの都市に来たことは不幸中の幸いでしたね」
「そうね。彼女がいなかったとしたら、ゾッとするわ。……まぁその彼女のせいで一つ厄介なことが出来たかもしれないんだけど」
「え?」
苦々しく笑ってしまうライラ。彼女の末尾の言葉に込められた想いはリヴィたちに向けられていたのだが、それを知らない門番は首を少しかしげた。
「なんでもないわ。とにかく今は支部長の判断に委ねましょう」
今は【月霊祭】の開催前。人が未来への希望を捨てぬためにも、これは何としても開催しなければならない。
それを成すべく、ライラたちはその裏で動き始めるのであった。
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