第11話 魔族
さてと、それじゃあの魔像を倒すとしますか。
「でも、いったいどうやってあれを倒すつもりなの、ショウヤ?」
「確かにやつには俺の攻撃は通用しなかった」
そう、あくまで俺の物理攻撃は効かなかった。
「だが、俺の魔法なら流石に効き目あるだろう」
「確かに、ショウヤの魔法の威力なら倒せると思うけど、ここらいったい吹き飛んで、私達生き埋めよ」
「なんだと! 生き埋め!? おい、お前やめとけ」
「大丈夫と思うよ、エルマ」
「なんでよ?」
「こっちには今、最強の盾があるから」
「最強の盾?」
「まさかお前、俺のスキル当てにしてんのか! けっ! 無理だよ無理、この結界の中から魔法は撃てねぇんだよ!」
「えぇ、ですから結界は解いて貰います」
「なんだと! それじゃ俺達死んじまうだろうが!」
「そうよ、ショウヤ」
「ショウヤ様、やはりここは私が囮になりますので」
「まぁ皆、落ち着いてくれ」
俺の作戦はこうだ。
まず、俺がファイヤーボールの詠唱に入る。
次に、この結界を解く。
俺がファイヤーボールを放ったら、もう一度結界で魔像とファイヤーボールを囲む。
「どうだ、完璧だろう!」
「んー、そんなに都合良くいくかしら……」
「でも、今のところ他に手は有りませんね」
「それじゃ期待してるぜ、おっさん!」
「勝手に任せるんじゃねぇよ!」
「それじゃ行くぜ!」
俺は魔像へと手を翳す。
「ハヤクデテキナサイ! ハァハァ」
「今よ、ショウヤ!」
「我が血潮よ、暑く猛り……」
「くそ、どうなっても知らないからな! 『解除!』」
結界は消え、魔像がこちらに襲いかかる。
「眼前の敵を焼き打て、ファイヤーボール!」
マズイ!
予想よりも魔像の動きが速い。
これじゃ良くて相討ち……。
そんなのはダメだ、いざとなればこの命。
いつでも……。
「アイスニードル!」
「パラライズアロー、五連射!」
氷の刃が魔像の足へと突き刺さり、ノーコンの弓矢は運良く牽制となった。
「エルマとユミ! ナイスだ! 行けぇオッサン!」
「くそったれ! 『パーソナルスペース!』」
魔像とファイヤーボールの間を結界が囲む。
すぐにファイヤーボールは魔像へと接触し、爆発を起こす。
激しい音とともに、爆発の痕跡は数分間に及び消えなかった。
「おい、そろそろ解いてみるか?」
「解いた瞬間に爆発が広がったりしないわよね」
「流石にただのファイヤーボールだから、そんなに継続して効果は無いだろう」
「解除!」
結界が解かれ、粉塵が辺りに広がる。
徐々に視界がはっきりとしだした。
最悪でも行動不能になっててくれよ。
そこに魔像の姿はなかった。
「ふぅ~、なんとかなったな」
「なんとかじゃないわよ、もう少しでやられてたわよ!」
「寿命が縮まったぜ、たくよ……」
「流石はショウヤ様です!」
確かに、今のはエルマとユミのサポートが無ければ危なかったな。
反省、反省。
・・・よくやってくれました、さぁ早くこちらへ
「うがぁっ!」
頭が割れるように痛てぇ。
またこれか、やっぱりあの少女が……。
「大丈夫!? ショウヤ!」
「大丈夫、大丈夫、さぁ奥の部屋へ行こう」
奥の部屋には柱に少女が張り付けにされている。
髪は銀色で、ファンタジーなその見た目に感動を覚えた。
その時、俺の腕が掴まれる。
掴んだ手は震えている。
「嘘よ、何でこんなところに……」
エルマ、いったいどうしたんだ。
怯えているのか?
「何でこんなところに魔族がいるのよ!」
魔族?
コイツがか?
「ショウヤ、殺さないとコイツ……」
「大丈夫かエルマ? とにかく落ち着け」
怖い顔してやがる。
俺のとても嫌いな顔だ。
「アイスニードル!」
いきなりエルマは、少女に攻撃を仕掛ける。
「バカやろう! いきなり殺す奴があるか!」
しかし、少女の回りを見えないバリアが守っている。
ふぅ、とりあえずは大丈夫だな。
「エルマ! 聞こえるか! とにかく落ち着け」
「殺さなきゃ、お母さん……お父さん……」
「これはダメだな、通じてねぇ」
「おい、おっさん! エルマを閉じ込めてくれ!」
「たくよ、何なんだよ『パーソナルスペース』」
エルマの周りを結界が囲む。
「出しなさいよ、私はソイツ達を殺さなきゃならないのよ……」
・・・全く乱暴な人族だな
「くぅっ! 来てやったぞ魔族様、次はどうすればいいんだ!」
・・・お主、なかなか理解が早いの。単刀直入に言おう、妾を救って欲しいのだ
「いちいち頭痛いな! で、正確には何すればいいんだよ!」
・・・妾の柱に手を当てて、魔力を流して欲しい。頼んだぞ
これが罠かもしれない。
目の前の少女が悪かもしれん。
だが、悪か正義かは、俺の目で決める。
「柱に魔力を流す……、こうか」
俺は柱に手を触れて、必死に魔力を込める。
すると徐々に少女を拘束していた物が、消えていく。
しばらくすると、少女の体は、柱から地面にズリ落ちた。
「おっとっと!」
俺は少女を受け止めた。
するとすぐに、少女の目が開いた。
「礼を言うぞ、我が名はロゼ」
「俺はショウヤだ」
「ふむ、ショウヤ、大義であった、褒美を与えよう」
「わーい、ありがとうございます! って違ぇよ!」
「どうしたのだ?」
「その……君はいったい何者なんだ? 」
小柄な少女、赤い瞳、さっき魔族って言ってたのは本当なんだろうか。
「妾は魔族、今はこれしか答えられん」
「どうしてこんな所で捕まってたんだ?」
「まぁ~ちょっとヘマをしての、魔王に異次元に隔離されとったんじゃ」
「魔王に!?」
「おっと、口が滑ったわい」
おいおい、いよいよ怪しくなってきたな。
少なくとも魔王に面識があるなら、魔族でも位は上なのか。
「ところでの、ショウヤ」
「うん?」
ロゼは頬を赤く染め、上目遣いで俺の方を向く。
「妾はお腹が空いたぞ、頼んでもよいか」
「おおぅ、そうか、なんか食べ物でも取りに行くか」
「必要ない、そこに座るのじゃ」
腹が減ったんじゃないのか?
俺は片膝を付き、その場に腰を落とす。
ロゼは俺に近寄り、抱きつき、俺の首元へ顔を付ける。
なんだ~、態度は大きいが子供なんだな、こうやって甘えたがるんだな~、よしよし。
ガブッ!
その音は俺の脳に直接響いた。
「痛っ!」
俺の首に噛みついて、血を吸ってる?
「案ずるな、害はない、貴様の魔力少し頂くだけだ。」
「ショウヤ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、ユミ、少し待っててくれ」
少しして、目の前の少女の身長がさっきよりも伸びていることに気づく。
いや、身長だけじゃない、あらゆる部分が大きくなっている。
間違いない、ゴクリ……。
「ぷはー! 生き返ったぞ!」
「ショウヤ様になんて事を! 早く離れなさい、この魔族め!」
「全く最近の人間は喧嘩ぱや過ぎるぞ、そう思わんか、お主」
先程まで、小柄だったロゼが今や、ボン・キュッ・ボンのナイスバディーになり、顔も妖艶さを纏わせていた。
「何が起きたんだ?」
「これが妾の本当の姿じゃ、魔力が切れると小そくなってしもうての」
「ハハハッ……流石魔族だぜ」
しかし、魔力はかなり吸われたのか?
なんか身体が怠くなってきた様な。
あれ、なんか、気持ち悪いな……。
「ショウヤよ、そなたには感謝の印に、二つ褒美を与えた。そなたが我らの敵にはなって欲しくないからの~。妾はやる事があるので、これで失礼するぞ」
「オェッ~!」
吐き気が止まらない。
目の焦点が定まらない。
意識が切れかかる。
この野郎、俺にいったい何しやがった!
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