第3話 初クエスト
冒険者ギルドに来て、俺のステータスを確認した。
俺はどうやら暗殺者という職種らしい。
戦士とか、魔法使いとかじゃなく暗殺者ってどうなの?
「あっ! 暗殺者って事はたぶんユニーク職ですね!」
受付嬢が覗き込み言い放つ。
「ユニーク職?」
何だよそれ。
あれか、俺だけの特権の職業って事か。
「はい、ユニーク職とは通常とは異なる職を持つ人の事です。噂で聞いた分では、『勇者』とか『聖女』、『神の遣い』とかがあるみたいですよ!」
なんでも話を聞いてみると、この世界には職業は大きく四つあるらしい。『剣士』、『弓使い』、『槍使い』『魔法使い』がほぼ全ての者の職業との事だ。
それ以外はユニーク職になるみたいだな。
それにしても、勇者や聖女に比べて暗殺者ってどうなのよ?
なんか弱そうじゃないか。
普通に剣士とかの方がカッコいいんだがな……。
「ありがとうございます! えっと?」
「申し遅れました、私は受付のアイシャと言います、何かあれば遠慮なく言ってくださいね!」
「それじゃアイシャさん、俺が受けれるクエストとかあるの?」
まずはクエストをやってみよう。
小さな事からコツコツと積み上げるぞ。
まずは手頃なスライムみたいな魔物を討伐してと……。
「そうですね、成り立てのショウヤさんにオススメは……」
「おっ、何ですか!」
「草むしりですね!」
「控えめな予想の遥か下!」
草むしりだと。
異世界にまで来て草むしりはないぜ。
「そんなんじゃなくて、もっと魔物の討伐とかは無いんですか?」
「そうですね、あちらの掲示板に張り出してはいますので、選んでもらっても大丈夫ですよ」
俺は掲示板に向かった。
依頼はA~Eのランク分けがされており、俺はまだEランクだ。
えっと、Eランクの内容は?
草むしり、屋根の修理、料理の助言、道具屋のアルバイトって、これじゃ便利屋じゃないか!
Eランクってこんな扱いなの?
ちなみにAランクだとどんななんだ?
ドラゴンの牙の納品、モンスターワームの討伐、オリハルコンの納品。
なるほど、流石に難しそうだな。
てか、モンスターワームAランクかよ。
やっぱり強かったんだな!
あの天使め、とんでもない所に落としやがって。
うん?
まだ依頼があるな?
《緊急依頼》『ポイズンフロッグの討伐』
「アイシャさん、この緊急依頼っていうのは何ですか?」
「それは緊急に解決して欲しい依頼よ、だからランク制限はないんだけど」
なるほど、これなら俺も受けれるのか。
しかしこの魔物は強いのか否か。
「エルマ、ちょっといいか?」
「なに?」
「ポイズンフロッグって強いの?」
「うーん、弱いわよ、毒さえ気を付ければ大丈夫と思うわ」
よし決めた、これにしよう。
「アイシャさん、これ受けます!」
「いきなり大丈夫ですか?」
アイシャさんは心配している。
そこへエルマが割り込んできた。
「大丈夫よアイシャ、私も付いていくから」
「は?」
いや待て、一応危険なんだからエルマも連れていくわけには。
「エルマさんが付いていくなら問題無いですね、こちらで依頼を受理しておきます」
俺よりもエルマの方が信用されてるんですね。
それは当然ですよね。
「エルマ、本当にいいのか?」
「何言ってんのよ、今さら遠慮しないでよ。私が冒険者の何たるかを一から教えてあげるわ!」
なんかエルマさん、生き生きしてるな。
まぁこの世界については何も知らないから、助かるんだよな。
「それじゃ頼むよ、エルマ」
「うん! でもその前にあなたの装備を買いに行くわよ」
「あっはは、了解」
今回のこの緊急依頼はポイズンフロッグの大量発生でこの町に被害が出る前にギルド側が出した依頼だ。
報酬はポイズンフロッグの皮一つにつき銅貨三枚らしい。
俺はエルマに武具屋で防具と短剣を選んでもらい、マーレの町を後にした。
「そういえばエルマって、職業は何なの?」
「私は魔法使いよ」
「マジで! 魔法使えんの?」
「初歩的な魔法しか使えないけどね」
エルマは魔法使いか。
意外といいパーティなんじゃね。
「ちなみに俺も魔法使えるのかな?」
「魔法使いじゃなくても使えるわよ。でもその前に、ショウヤは魔力コントロールを覚えないとね」
魔力コントロール?
誰もが自在に扱えるわけじゃないんだな。
みんな一応努力済みな訳ね。
「魔力コントロールができれば魔法も使えるし、自分の身体に魔力を流して強化もできるの」
「なるほど! なら今度教えてよエルマ!」
「この依頼が終わったら教えてあげるわ」
魔力の制御ができれば念願の魔法だ。
そのためにまずはこのクエストでスキルを見極めよう。
「そういえば、ショウヤの魔力量はどのくらいなの?」
「いくつだったかな……、確か千三百六十くらいだったかな」
「千三百六十? アッハハハ! 随分お粗末な魔力量ね」
「これって低いの?」
「ごめんね、でも私の魔力量は五万八千で、冒険者の平均が三万五千くらいじゃなかったかしら」
マジかよ……。
もしかしたら俺、魔法使えないんじゃね?
使えたとしてもすぐに魔力切れしそうだな。
そんな事を思っている内に目的地へたどり着く。
そこには何組かの冒険者達がすでに着いていた。
これ皆ポイズンフロッグを狩っているのか。
「着いたわよショウヤ、私達はあっちの方でやりましょう!」
他の冒険者の邪魔にならないように場所取りをする。
俺がモンスターワームの体内にある結晶を壊したら動かなくなった。
あの結晶を急所だと仮定すれば、俺のスキル『急所視認』はそれを見る能力なわけだ。
まずは一体を普通に倒そう。
俺は目を凝らし、ポイズンフロッグの急所を確認する。
この急所を貫くイメージで剣を突き刺す!
「ゲローー!」
ポイズンフロッグはその場に倒れる。
「お見事ね、ショウヤ! 私の手伝いは必要なさそうね」
やはりあの光は急所を示してるんだ。
よし、このままスキルを試してみるぞ。
俺は次のスキルを使ってみる。
「影渡り!」
そう叫ぶと、俺の影に俺自身が吸い込まれ、次の瞬間にはポイズンフロッグが目の前に居た。
「あ……どうもカエルさん、近くで見るとカワイイですね……」
「ゲローー!」
俺は毒の泡を受ける!
痛っ!
いや、気のせいか痛みはないような……。
俺はすぐに急所を貫きポイズンフロッグを倒す。
「大丈夫、ショウヤ!」
「エルマ、何ともないよ」
「でもショウヤ、口から血が出てるよ」
「え?」
俺はどうやら毒状態になったらしい。
状態異常とは何とも厄介だな。
でも、毒喰らってて痛み一つないのは何でだ?
「私が治すわ!」
そう言うと、エルマは俺の胸に手を触れ目を瞑る。
「我の声を聞き届け、かの者の災いを打ち消さん、リカバリー!」
手のひらが光り、次にその光が俺の身体を包み込んだ。
「これで大丈夫だわ、気を付けなさいよ!」
「サンキュー! エルマ」
魔法を間近で見て、やっと異世界に来たって感じがした。
その後俺はスキルを確認しつつポイズンフロッグを狩っていった。
最後は『遠隔暗殺』だな。
「遠隔暗殺!」
そう言うと、俺の目の前と、ポイズンフロッグの目の前に暗い穴が開いた。
まるで空間に穴が開いたみたいだな……。
その穴に手を入れると、ポイズンフロッグの目の前から俺の手が出てくる。
なるほど、これは使えるな!
座標設定が少々難しいが、慣れればかなりの武器になる。
その日俺は、合計三十八匹のポイズンフロッグを倒した。
いや~、思ったよりも倒したな。
《レベルが二十三へ上がりました》
おっ、レベルアップか。
意外にいい経験値稼ぎになったな。
俺とエルマが帰ろうとした時に、向こうから三人が近づいて来た。
「よぉー、お前新顔か?」
何だこの人、歳は二十代後半くらいか。
「どうも、今日こっちに飛ばされてきました……」
「見てたぞお前……」
男は俺をまじまじと見ている。
何を見たんだ、この人は。
「さっきのスキル! お前ユニーク職だな!」
「何で分かったんですか?」
「いや、誰も使ってないスキル使ってたからな、一目瞭然だよ」
そうか、確かに。
ユニーク職にしかないスキルを使えば一目でわかるよな。
「アッハハハ! まぁそうビビるなよ、俺はタクヤ、宜しくな!」
「俺はショウヤです、よろしく」
この人達は見ただけで分かる。
町にいた他の有象無象の冒険者とは格が違う。
なんか凄い余裕を持っている。
「まぁそう構えんなよ、どうせ今から町に戻るんだろ! 一緒に帰ろうぜ」
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