私は悪役魔女に転生した!?

意識が戻るとき、自分が中世ヨーロッパのような街に立っていることに気づいた。


規則な石で舗装されたきれいな道路、道端には同じ石で建てられた整然と並ぶ住居があり、人々は道路を行き来している。果物や花を売る行商人、馬車を乗って通り過ぎる車夫、笑って歩く婦人たち……それに、『一般人』のほか、騎兵のような鎧を着た戦士さえいて、全身に黒いローブをかぶっている人もいる──それはどう見ても魔術師の姿だ。


しかし、奇妙なことに、自分に襲いかかってきたのは、違和感ではなく、熟知感だった。

なぜこのシーンは、こんなに馴染みがあるような……?


遠くないところに、街の中央で一つの噴水池がある。

日は春先で、清冽な泉が噴水の中心から流れ落ちて、一面の水壁を形成している。日光が水面にこぼれ、飛び跳ねる雫は色とりどりの光を反射する──そして噴水池の真ん中には、大理石で彫刻された一つの像が立っている。

その像が視野に入ると、なぜか私は、すぐにそれが太陽神であることを分かった。


太陽神は背が高くてハンサムで、頭に無数の光を放つ太陽の金冠をかぶっていて、左手には太陽を象徴する金球を持ち、右手には権利を象徴する杖。

絵のような美しい一幕はずだが、私は一瞬に氷の洞窟に落ちたよう、寒気を感じた。

やっとそれが何なのかと気づいた後、私は両手で口を覆い、無声で叫んだ。


今の私がいる場所は、1周間游んでたゲーム「薔薇の王座」のカルサ城とそっくりだ!!

そして目の前の像は、光と正義を象徴する太阳神――この世界の支配神だ!!!


 

私は深く息を吸って、ようやく心を落ち着かせた。

そして前の噴水池に近づき、中をちらっと見る。

水面はとても澄んでいて、ちょうど私の大まかな姿が映っている。

微巻きの薄茶色の長い髪が散らばっていて、瞳が浅い紫の色、細い体は15歳のような……

驚いて、胸が一瞬につまる。

まさに青天の霹靂だ。

この見た目は、ゲーム中の悪役魔女リアにそっくりじゃない!?

ほぼ同時に、私には属していない記憶が急に頭に押し寄せる──それはリアの記憶だ。


『身元発見おめでとう!』

その時、脳内に突然音が響く。

さっきの暗闇にいた子供の声だ!

「誰!誰なの!?」

びっくりして、私はすぐに大声で叫び、噴水池の端から落ちそうになった。周りの通り人はまるで狂人を見たかのような目線を投げてくる。

「お母さん、どうしてあのお姉さん独り言しているの?」

「ふーん、変な人に構わうな」

耳に入ってくる無遠慮な議論から推測すると、自分以外の誰もその声を聞こえないらしい。

再び深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。

頭の中で、尋ねてみる。


『あなたは誰?さっきの暗闇での自称神なの?』

『酷いなぁ。自称じゃなくて、紛れも無く神様なんだけど』

その声は不満そうに言った。

『でも『ソル』って呼んでいいよ...それが僕の名前だ』

その神様は、親しげに答える。

 

……なんて勝手な神様だ。

そしてなぜ神様は子供なの!?

もう何処から突っ込めばいいのかさせ知らんよ!


『さて、君はすでに自分のキャラクターが分かった以上、最初のゲームミッションが始まるよ』

私の錯覚なのだろうか……その声はすごく機嫌がいいような気がする。

ソルの言葉が終わると、一瞬で金色の光が私のそばに広がり、周りには一つの結界が形成した!


『結界内の時間の流れは外とは違うよ。実世界の10万分の1くらいだから、他の人の目にはリアが瞬きしただけで、結界内の出来事に気づくことは不可能だ』

ソルが説明してる同時に、私の前に突然ゲームインタフェースのようなフレームが現れ、テキストの段落がその上に浮かび始める。


【ゲームミッション:孤児リアとして「薔薇の王座」の世界で生きていくために、キャラクターになりきってください。もし誰かに君のキャラ違いが発見された場合、合理的な言い訳も見つけてください】



「それはどういう意味?ここで生きていくって、元の世界は?元の世界に戻れないの!?」

私は肩がビクッと跳ねて、叫んだ。

「ははは、これからは頑張ってね。魔法の世界に生き残るのは大変だよ」

私の質問にもかかわらず、結界は一瞬にして溶け、ソルも姿を消した。


この臭ガキ!

もっとはっきり説明してくれよ!

──だめ、落ち着いて。

今から手がかりを整理しなければならない。

必死にそう自分に言い聞かせて、もう一度深呼吸をした。


ここが「薔薇の王座」ゲームの世界なら、主人公はリアと一緒にマリア修道院で育てられた親友、ベラという少女である。

だが二人はまったく異なっていて、ほぼ二つの極端とでもいえる。

ベラは性格が優しい、頑張り屋で一生懸命で、誰でも好きになる女の子だ。


そしてベラは、修道院でリアに親切にしてくれた唯一の人だった。

しかし、リアはベラにひそかに嫉妬し続け、ある日ベラがうっかりクリスタルリングを落とした時、無言で持って行った。

あいにく、その水紋の模様のクリスタルリングは、ベラの血統、かつ身元の証明――この世界の四大魔法家の一つ、アクア家の令嬢である。

それこそが、ゲーム「薔薇の王座」の序章の始まりだ。



リアはクリスタルリングを盗んで酒場のマスターに売り、修道院を出て大陸首都イカロス城に行くための資金を得ることを望んでいた。

意外にも、クリスタルリングが転売され転売され、結局アクア家のエディ執事の手に陥った。

エディは、アクア家の家主と奥様が暗黒神『ノクス』との戦争で亡くなった後、戦いに行方不明になったお嬢様を長年探していた。そして手がかりに沿って、ついにカルサ城のマリア修道院にたどり着いた。

そしてエディは、クリスタルリングを売ったリアをアクアのお嬢様と見なし、彼女を修道院から連れ去った。

リアは、ベラが本当のお嬢様であることを知っていたのに、貪欲と嫉妬に駆けられ、毅然とベラの身分を偽った。

それからリアは、修道院の過去と違う人生を歩んで始めた。


──あれ?

待って!

ここまで考えると、全身の毛が逆立つように感じた。

ゲームの序章って…今じゃない!!!?


震えながら、少しぼろぼろの修道服のポケットを触れて見る。

予想通り、金貨の財布にぶつかた。

────まずい。

まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいっ!


今は、クリスタルリングを売ったばかりのタイムじゃない!翌日になると、エディ執事が修道院に来て私を連れて行ってく!

嫌だ!

私は元のリアの末路を辿りたくない!!!!


ゲームの流れによると、リアは無事にベラの代わりに令嬢になったが、ランロス魔法学院に入学する時に再びベラとぶつかった。

それは、ベラがエディ執事とすれ違った後、ある兄弟二人に出会ったから。

その兄弟は、攻略対象のヴィックとニコ──4大魔法家のイグニス家の若様である。

彼らから助けをもらい、ベラはランロス学院に入学することに成功し、同じように自分の人生を変えた。それどころか、ベラがランロス学院内には、多くの貴族の少年たちから好意を持たされた。


二人の少女の運命は再び絡み合って、不安と嫉妬により、リアはベラを邪魔し、傷つけ続けていた。

結局、リアは自ら暗黒神『ノクス』の傀儡──魔女に化し、万魔の深淵に陥た。

ベラはいつも優しい子だが、親友と見なされていた人に何度も裏切られ、ついにリアを許すことができず、最も邪悪な魔女になったリアを打ち負かされた。その後、主人公の攻略対象の一人であり、リアの恋しい相手でもあったヴィック·イグニスは、リアの魔力を封印した。

最後に、魔女リアは中央神殿で公判され、火刑の結末を迎えた。


ゲームでの火刑のCGは少なくとも快適ではない。私はそれを思い出すと物凄く痛みを感じた。 

だめだ!絶対だめ!

私は魔女になりたくない!

 

クリスタルリングはベラのものだ!私は必ず持って帰って、ベラを本来のお嬢様の身分に帰らせる!

そう思って、私は酒場の方へ走っていく。

その同時、心の底から切に祈る。


──絶対に、間に合うように!

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