スタンピード2

「そろそろ、俺たちの番かな?」


 隣にいた冒険者が前線を見ながらそう呟いた。


「良し!F、Eランクのルーキー達は下がれ!

 D、Cランクの冒険者と変われ!

 そして、ルーキー達はサポートに回れ!」


「「「「了解!」」」」


 いつの間にか来ていたギルド長が、前線にオークやアント系の魔獣が出始めたのを確認し交代を指示する。

 その指示に俺は前線に行こうと踏み出した時、ギルド長に止められた。


「まて、アッシュ。

 お前はまだ温存しておけ」


「・・・」


「青の月の死体は見た。

 お前が怒り狂っているのも分かる、俺も前線に出て大暴れしたいしな、だが!まだだ!感情で動くな!頭で動け!此処でお前に消耗させる訳には行かない!」


「・・・ふぅ、分かりました」


 ギルド長に止められ、怒りでいっぱいだった頭が冷えていくのを感じ冷静になる。


 その後、ギルド長と今後の事を話し合っていると、ソフィアとエイミーが城壁の上から降りてきた。


「ん?ソフィア!エイミー!無事だったか!」


「あっ!ご主人様!はい無事です!」


「ええ、無事よ、ジャストさんが上に来て暫く休憩だって言ってきたから降りてきたのよ」


 ソフィアはアッシュに飛びつき、エイミーは何故、降りてきたのか説明しながら近づいてくる。


「成程な、俺達の出番は魔の森から魔獣達が来てからだ、ゆっくりしておけ」


 俺は二人に休憩を指示すると、エイミーが心配そうに聞いてきた。


「分かったわ・・・それで、ご主人様は大丈夫?」


「ああ、もう大丈夫だ」


「そう?もし辛かったら言いなさいよ?」


「ああ、ありがとう」


 エイミーはそう言うと、ソフィアを連れて離れて行った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ウオォォォォォォォォォォ!!!!!


 ドゴォォン!!  バゴォォォン!!


    ズドォォン!!   ボゴォォン!!


 さっきとは違い強力な魔獣が現れたからか、戦闘音も大きく激しいものに変化していた。


「それにしても、領主様との話し合いをした直ぐ後にスタンピードが起きるとは、、、」


 ギルド長は後方で、冒険者達の指揮をしつつ言葉をこぼす。


「そう言えば領主様との話し合いはどうなったんですか?」


 俺はその呟きに、領主はどんな人物なのか気になり、領主との話し合いの内容を聞き出そうとギルド長に問いかけた。


「・・・うむ、領主様もスタンピードを警戒して見張り兵の増員を決めて貰えたが、、、こんなに早くスタンピードが起きるなんて最悪だ」


「A、Bランクの冒険者の帰還予定はどのくらいですか?」


「・・・まだ帰って来ないだろうな。

 だから、王都に緊急の連絡を領主様がしている筈だ。

 それに、そろそろ領主様自ら騎士団を率いて来るはずだ、そしたら後は消耗戦だ。

 頼んだぞ、アッシュ」


「了解です。

 それにしても領主様は良い人なんですね、自ら戦闘に参加するなんて、貴族なんて選民意識の塊みたいな連中ばっかりだと思ってました」


 俺はギルド長との会話で、此処の貴族がまともな部類に入っていると確信し、ギルド長に心の中で思っていた事を話した。


「ハハハ、まぁ、分からんでもないな。

 だが、いくら強くとも貴族の前で絶対に言うなよ、それ」

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