混線

 「…羨ましいわね…」

 「へ?」

 「何でもないわよ!」

 出てきた途端にキレられた。

 しかし、ヨーデルの人の視線は、女装?した空っ海に注がれている。

 もしかして、空っ海みたいな格好がしてみたいのだろうか。

 「もしかして、ヨーデルの人も…」

 「何でもないって言ってるでしょう!?」

 「…」

 食い気味にキレられた。

 オタクに、リアルツンデレはハードルが高過ぎる。


 「それより、貴方!」

 「ナンデゴザイマスカ。」

 「電話とメールの仕組みについて説明しなさい。」

 何でだよ!

 何時もながら唐突だな!

 「あのさあ。確かに俺はオタクではあるけれども、漫画や小説とかが好きってだけで、機械関係はからっきしなんだけど…」

 オタクが皆、機械関係が得意だなんて大きな誤解だ。

 メガネだからって、賢いわけじゃない。 

 ただ視力が悪いだけだ。

 「貴方が、こうなんじゃないかと思う事でいいわ。」

 えええ~

 「えーと、基本的に電話もメールもモールス信号と同じようなもんじゃなかろうか。電話は電流の強弱で振動板が震えて、音の区別をする。メールは、0と1だっけ、組み合わせを情報として送り、文字とかに表示するんかな…」

 「どうして、映像として表示されるのかしら?」

 「え?え~、元々約束事があって、ツートントンみたいな音は、この文字とか決まってるんじゃないかな…だから、その形に吸い寄せられる?」

 「その通りだわ。」

 相変わらず凄いな。

 よく分かるもんだ

 こんな、しどろもどろで良かったんだろうか。

 「いいのよ!敵が凄くビクンビクンしてるわ!合ってるんだわ!」

 おおお。

 何と頼もしい。

 それと、相変わらず心を読まれてる。

 恐い。


 「さあ!今、敵から得られた情報を横浜銀河に送るわよ!」

 何だと!?

 また、モテ男が美少年になりやがるのか!?

 「ちょっと待った!情報を送るのは、どうして横浜銀河なんだ?中日如来じゃ駄目なのか?」

 「そうねえ。何だか、横浜銀河は感覚が合わせやすいのよ。何故かしら?」

 「あの…多分なのですが、俺が俳優をしているからだと。役に入り込んで芝居することに慣れてるので、他人の感覚に合わせ易いような気がします。」

 「なるほどな!非常に納得出来る回答であった!」

 「あの…直ぐに終わるので、ちょっと我慢して下さいね?」

 遂には、気使われてるじゃねえか!

 薄く爽やかな微笑みを浮かべやがって…デフォルトなのか?


 横浜銀河が美少年になり…

 お次は、中日如来と融合し、行楽地の仏像の顔だけ横浜銀河になっている。

 恥ずかしそうだ。

 ジロジロ見てやろう。

 決して嫌がらせではない。

 皆を心配しているからだ。

 

 中日如来と空っ海も融合した。

 こっちはあまり、変わらん。

 仏像っぽい感じだ。

 

 それで、あちこちで、シャンシャンやってる。

 中日如来の分体の数が異様に多い。

 数十人はいる。


 「中日如来って、何人くらいまで、分体を増やせるんだ?」

 「そうじゃのう。頑張れば600人くらいに増やせるのじゃ。」

 「凄いな!」

 mytubeで喚ばれた人間の所に行くのだから、それくらいは必要か…

 「よくそんな人数をコントロール出来るな。」

 「だから、操られ易いのじゃ…」

 「駄目じゃん!」

 横浜銀河を見てみると、ぱっと視線を逸らされた。

 モテ男と思いきや、結構駄目男なんじゃ…


 「分かりました。」

 どうにかして横浜銀河の弱みを握れないかと考えていると、空っ海のシリアスな声が聞こえた。

 「真っ言宗で信頼している坊っ主がいるのですが、その者が、他の坊っ主に利用されていたようです。」

 「確か、前にヨーデルの人と話したな。信頼する人間に心を預けて、その相手が敵に操られると、自分も操られてしまうと。その坊っ主は今、生きてる奴だよな?」

 「はい…そして、そのようなことが、真っ言宗を開いた時にもあったのです。私に、真っ言宗を盛りたてなければという焦りがあり、しかし自分を不甲斐なく思い、お師匠様に縋りたい甘えが、坊っ主に利用されて、お師匠様をまんだーらに固定したのです。」

 「まんだーらは、空っ海と共に作った思い入れがあるものじゃから、引き寄せられてしもうたのじゃ。」

 「…よく分からんのだが、まんだーらってのは、何の作用があるんだ?」

 「魂が帰る場所かのう。」

 「力としては、どうなんだ?梵っ字は関係してるのか?」

 「梵っ字が集約される場所かのう。」 

 梵っ字が集約…

 もしかして、さっきの話は…

 「知らないわ!」

 「まだ、何も言ってないだろ。」

 「難しいことは分からないって言ってるでしょ!感覚的にやってるだけだから、意味なんか分からないわ!」

 「分からなくてこれだけ正確なら、余計凄いんじゃないか?」

 「そうかしら?」

 途端に機嫌が治る。

 自信満々で、胸を張って偉そうだ。

 ここまで、態度がはっきりしてると可愛く見えてくるな…

 「可愛いだなんて!そんな!」

 ツンデレのデレが来た。

 こりゃ、意外とモテそうだな。

 「こんな態度は貴方にしか、しないわ!」

 おお。

 今のは、ぐっと来た。

 

 「何の話か、分からんのじゃ。」

 おや。

 何故だろう。 

 横浜銀河の悪意を感じる。

 横浜銀河を見遣ると、あからさまに目を逸らされる。

 「もしかして、横浜銀河がある程度、中日如来をコントロールすることが出来るのか?」

 「そうじゃのう。儂も、横浜銀河に仕向けられた気がするのじゃ。ヨーデルの人との会話を邪魔したくて、儂をけしかけたのじゃ。儂を侮っておるのじゃ!けしからんのじゃ!」

 あいつ、あんなにモテるくせに、自分以外がモテるのは気に食わないのか。

 なんて、心の狭い男なんだ!


 「何の話か分からないのですが。」


 あ、はい。


  

 

 

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