第6話
「だめだめだめだめだめ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!!」
リツカの鎖分銅──長い鎖の先に、金属のおもりが付いた武器は、片側が本格的な殺傷用の銅でできていて、もう片側は非殺傷用のゴム製のおもりとなっていた。
ツミキを取り戻しに来た、京都の攫い屋が沙羅であることは完全に想定外だったが、そういうことなら流石に殺しはしたくない。今までも殺したことは無いけど。
──だというのに、あろうことか沙羅は、拳銃を取り出してきた。
「攫い屋じゃなくて殺し屋の間違いでしょーーー!!!!???」
リツカの悲鳴も、沙羅の発砲音にかき消される。顔を見られたことで、向こうもパニック状態だった。
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「銃声が止んだ…」
指定された午前二時に、指定された大原の決闘場に着いた渡里だったが、先客が2人、決闘しているらしい音がするので、茂みに潜んで聞き耳を立てていた。
満月の夜だが、雲がときどき光を遮り、山を本物の暗闇へと変える。
直接姿が見えなくとも、音だけで人数、距離、状況を知らなければ、渡里の稼業は成り立たない。どうやら決闘している2人のうち片方は、何かの格闘武器を使っているようだ。重いものが空を切る音がする。
もう片方は、普通に拳銃を使っている。発砲音からして、9㎜の自動拳銃だろう。
そうやって音を聞いているうちに、叫び声も聞こえなくなった。
(悲鳴も聞こえないから、誰かが撃たれたようなことはないと思うけど…。)
もしツミキちゃんが動転して追われてたりしたら…。撃たれでもしていたら。
渡里の屋号に一生モノの傷がつく。
自分の商売道具であり、父の形見であるS&W M4506のセーフティを解除した。
飛び道具持ちが1人だけなら、銃は一挺のみで問題ない。
(余計なことは考えない。プロの根性を見せろ、渡里!)
勢いよく、しかし静かに飛び出す。
「2人とも武器を置きなさい!」
「「あ?」」
争っている2人が手を止め、お互いの獲物を渡里の方に向け構えてくる。
しばしの沈黙。お互いがお互いの動向を注視しあう。
やがて雲が晴れ、満月が3人を照らす。それぞれがそれぞれの顔を認識する。
「え!?リツカちゃん沙羅ちゃんなんでぇ!?」
「ねぇ話がややこしくなったんだけど」
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