第4話
京都は大原。洛北の里山には、数々の寺社仏閣や里山らしい食・風景等が楽しめる、京都市街地からもアクセス良好。通な観光スポットと言えるだろう。
そんな山中のバス停。日付が変わって十数分。女子大生2人、降車。
流石に運転手に怪訝な顔で見られた。だが今はそんなことは過ぎ去った後の些細な問題だ。
「じゃ!私こっちだから!またね!」
「あ、うん!私こっち!またね!」
そうして2人は真逆の方向に歩き出した。それぞれがお互いの、帰る家に。
「そんなわけあるかあああああああ~~~~~~!!!!!」
リツカは声が響かない程度に、半分以上は心の中で絶叫しながら、草木をかき分けて獣道を進んでいく。本来の道はもっと快適なのだが、そっちへは沙羅が歩いて行ってしまった。
「そもそも設定に無理があった!近いよ!近すぎるよ!仮にこんなど田舎山中にお互いの家があったら幼なじみみたいな距離感だよ!?違うよ!?私たち大学で初めて会ったんだから!どうしよう…。言い訳が思いつかない…。めちゃくちゃ怪しんでたよ沙羅ちゃん…うぅ…」
怒ったり落ち込んだり感情の起伏が面白いことになっているが、それでも今は目的地に向け進む手を止めなかった。
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「リツカちゃん怪しい~~~~~~…。」
沙羅は夜道を歩きつつ、先ほどまで一緒にいた友人の焦りようを思い出していた。
普通に考えて、大原のこんな山奥でバスを降りて、民家のない方向に歩き出すわけがない。絶対何か隠している。
いや、何かを隠しているというか、確実に心当たりは一つある。まさかと思い、考えたくもないが。
あのお店で働いてるから、てっきりリツカちゃんも”組合”の人間と思っていた。しかし渡里さんの感じからすると、どうやら違う風ではあった。というか、”組合”の人間にしては動きがお粗末すぎた。
というか、渡里さんが「沙羅ちゃん次第…かな」ってドヤっていたが、普通に意味が分からなかった。あれどういう意味だったんだろう。
こっちの世界の人間ではないという意味でのみ込みはした。まあ、渡里さんが買い出しを頼んだ実包を見て「なんですこれ?」なんて能天気な顔していたので、違うと信じたい。
「…ツミキちゃんを攫ったのが六花ちゃんな気しかしない…。」
待ち合わせ場所に居た場合、かなり嫌だである。念のために渡里さんの来る時間より早く来たが、もし本当にリツカが居た場合、どうすればいいか皆目見当もつかない。
嫌だ嫌だと思いつつも、しなければならないことは変わらない。待ち合わせ場所が近づいてくる。先客の気配を感じ、自身の足音を消して、近くの遮蔽物に隠れた。
──居た。
(うわぁマジか…。)
存在が知られる危険があったとしても、ため息をつかざるを得なかった。
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