第4話 試験期間は逃げられない?
王都は初夏の暑さがジリジリ迫ってきている。夏休みは目前。今、大事なのは夏休みの計画ではなくて、その前に大事な事が近付いて来ている。
……そう。
大事な大事な学期試験である。
コレをパスしない事には夏休みを満喫出来ない。
王立イシュフォン魔法学園は1年を2期に分かれて勉強する。
1学期は3月〜6月。
2学期は9月〜12月。
1月〜2月は雪が多く、貴族の多いこの学園では皆、領地に戻り家業を手伝う生徒が多い。
7月〜8月は王都は暑さが酷く、貴族達は家族と避暑地へバカンスに。平民の生徒は避暑地でアルバイトをする者も多い。それこそ、稼ぎ期らしくてここでいかに稼いでおくかが、今後の学園生活や実家への援助や生活に繋がるらしい。
だが、そんなアンナコンなのが出来るのも。
全ては学期末試験に、無事合格出来た者達だけである。
試験に落ちた者達がどうなるか?
実は知らない。
………。
我が侯爵家には小さな頃から、家庭教師という者がいるから、まずそんな事はあり得ない。
しかも、勉強で解らない事があれば、カイン公爵が丁寧に教えてくれるから、魔法教科でも父に聞けば済む事で、何とかなっている。私は。
そう。私は。
カウンセル?
さぁ、でも、王太子の取り巻きが成績悪いとか聞いた事ないから、大丈夫なんじゃないかな。
ユリアンナ?
どちらかというと、王太子と主席を争っている位は頭も魔法も優秀らしいよ?
………。
我が王立イシュフォン魔法学園は10〜18歳が通っている学校である。
さっきから、何のフラグかって?
………。
そう。
実は、私はこのクリスタル侯爵家で跡取りではない。女性侯爵もいるらしいけど、私には兄弟がいるからである。
ハイハイ。紹介しますよ。
長男:ラインハルト・クリスタル18歳。イシュフォン王立学園9年生。最高学年だから、来年は卒業です。金髪、紅目の父と母の容姿を丁度割ったような容姿。
性格は父に似て、調子が良い。魔力は結構あるので、上手く生きてイケれば父のようになれる筈なのに、そこそこに生きてイケれば良いんじゃないかと思っている。しかも、遅く来た絶賛反抗期中で風魔法や時間魔法を使って逃げるので、タチが悪い。たが、男女共に友達が多く、クラスの人気者。困った人を助ける事無理なくするので、父と同じで聖なるオーラを持つ。飄々としていて、将来は侯爵家を継ぐつもりはない。冒険者か旅人になるとかふざけた事を言って、父を笑わす。
次男:マクシミアン・クリスタル12歳。イシュフォン王立学園3年生。紅髪紅目の父方祖父とそっくりな顔立ち。学園に入学した時から研究クラブに所属し、生活の殆どを研究に捧げている。そんな所も祖父に似てしまった。今でも時々祖父の所に行って、共に研究発表し合うのが楽しみ。研究対象には興味を示して成績もトップだか、興味のないもの、運動系は不得意。落第レベルではないので、好きにさせている。将来は研究職を目指すつもりらしい。本や魔法が大好きなので、目が悪くなってしまい眼鏡をかけている。将来は侯爵家を継ぐつもりはない。
三男:ザクスダイ・クリスタル。10歳。イシュフォン王立学園1年生。赤髪、紫の瞳。性格も成績も程々に良いが、特出する程ではない。寧ろ、余り目立ちたくない。兄や姉が派手目な顔立ちなので、埋没し平凡に生きていきたい性格。唯一の趣味は体を使う事。将来は侯爵家を継ぐつもりはない。寧ろ、騎士を目指している。近衛騎士とか派手な職業ではなく、普通に騎士団に入れたら、幸せだと思っている。
四男:アンリ・クリスタル7歳。クリスタル家で一番頭も魔力もある。スーパー児童。まだ入学前なのに、既に3年生の知識は備えている。そう。次男のマクシミアンの学年までは余裕である。それ以上の勉強は抑えている所が次兄ちゃんに気を使っているのか、愛いところである。将来はクリスタル家を継ぐのは自分だと思っている。
父様!
病弱な母に何で5人も子供産ませているの!
……と私もそう思うよ。
ラブラブにしても、程があるでしょうと。
このアホ兄だけが、心配。
もし、試験落ちたら、クリスタル家長男としてダメでしょ。後継げない。っていっても喜ぶ姿しか想像出来ない。一応、父も落ちたら、寧ろ自由にさせないって言っているから、頑張ってくれるとは思うんだけど。
今回の試験は魔法防御についての試験だけは、ちょっと心配だった。だって、森に行っての実施試験だから。戦う方の魔法試験は良いのよ。制御する方さえ気をつければね。
紅茶カップを硬化させたり、自分の体の周りに幕をはったりとか、魔法防御は得意なんだけど。
森に行くのはちょっと心配なんだ。なんせ、試験では防御対象者がいるらしくて、自分を守る為の防御ではないらしいの。対象者っていう第三者を守るってちょっと怖いし、心配だよね。
試験用の森は王都から少し離れている。
イシュフォン魔法学園の奥にある転移門から、五大公爵家のバーミリアン公爵家の魔王の森で試験が行われるからだ。
魔王の森は魔王がいるわけではない。
昔、2000年程前には居たらしいんだけどね。当時は聖女も聖王や勇者も居て、魔王を封印したらしい。だけど、魔王の魔力は凄まじくて、封印した後でも魔力が漏れ、漏れ出た魔力が魔獣を作る。2000年も経っているのに、未だに漏れ出る魔力。凄いよね。何かに使えないのかな。その魔力。上手い事活用出来たら、良いのにって父様に言ったら、腹抱えて笑われた。
「その発想はなかった」
ですって!
フンだ!!
魔獣が生まれちゃう位なら、使えたら良いのにって思わない?
如何やら、王立イシュフォン魔法学園の9年生から移動が始まったみたい。引率のリズナー先生とマイク先生、学園騎士団の人達が大凡、5メートルは高さのある巨大な転移門の側にに立ち、9年生を教室ごとに並ばせて、次々と転移させている。
「結構、転移門て迫力がありますわよね。少し怖いわ。私、魔王の森って初めてでしてよ。」
ユリアンナが私の腕にしがみ付いて震えていた。
「うん。私もちょっと怖い。だって、魔王の森って自分の魔力も上がるんでしょ?制御が大変そう。」
そう。通常なら、制御するのは大変ではない。でも魔王の森では何が起きるか分からないから。よく、こんな場所を試験場所に選んだわよね。
その時、油断していた私は不意に声をかけられてしまった。
「大丈夫だ。何があっても、学園の騎士団や今回は近衛騎士団も参加予定だから、君達を必ず守るからね。」
うへぇ。
ジークフリード王太子がミアベルの前に立ち塞がり、キンキラキンな瞳で迫る。逃すものかと後ろには側近という名の取り巻き達に囲まれた。
「そうだぜ。安心して試験に臨む事だ。いざとなったら、俺達上級生達の所まで来い。」
ブルーム・フォーガン公爵子息が後ろから、声をかける。この人、ガタイが良いし、いるだけで威圧感が半端ない。『威圧』魔法使ってないのにコレって如何なの!?
「そうだよ。僕の領地の騎士団も魔王の森に同行するから、君達は試験の事だけを考えれば良いからね。」
ユーストス・バーミリアン公爵子息が右側から。そうでしたね。あなたの領地ですよね。だから、ユーストス公爵子息って魔力が強いんだ。私も魔力多い方だけど、制御とか魔力を扱う事はまだまだだもん。
「まぁ、怖いもんは怖いだろうけどな。何事も経験だ。」
カウンセルが左に現れた。
テッテレー!!
思わず、カウンセルに右拳で腹バンすると「グエッという声を後ろに聞きながら、ユリアンナを背負って逃げ出した。
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