第3話 王太子妃なんか!絶対ならないからね。
「だ〜か〜ら〜、俺らみたいな上位貴族にとっては政略結婚なんて、当たり前な事なんだって!そりゃあ、恋愛結婚とか憧れるのも解るよ?でも、こんな良い物件早々無いだろう?相手はこの国の王太子である、ジークフリード・ラムザ・イシュフォン王太子殿下だぞ!今をトキメク、ジーク様って言ったら、金の髪に金の瞳の王家の金の王子様じゃないか!何故、そんな彼に打診されて嫌がるのか解らないよ。」
悪びれる事なく、もうバレたとカウンセルったら、説得にかかってきやがった。
そうだった。こういう奴だった。
私は目も合わすのも嫌になって、だって涙目になっちゃったんだけど、そんな顔をカウンセルにだけは見られたくなくて、カウンセルから思いっきり顔を背けた。
見た目や雰囲気に騙され、カウンセルの性格。スッカリ忘れていたかもしれない。あまりに側に居過ぎて、本質が見えていなかったというか、
ちゃんと見えていなかったのは私だったのね。
そうね。カウンセルの言っていた事、正しかったのかもしれない。
思春期にありがちな恋に恋しているだけで勘違いだったとか?
たまたま側にいたから?
ハイハイハイ!!
その通りですね。
あ〜私の黒歴史に1頁刻まれましたとさ。
トホホ。
「ミアベルちゃん。そんな馬鹿放っておいて、コッチに来て、お茶にしよう。」
カイン公爵が最高にキラキラした笑顔で手招きした。
陛下に『空の煌めき』と二つ名を戴いたサファイアブルーの瞳。そして、銀の長い髪を編み込んで濃紺のシルクのリボンで後ろに一つに束ねた髪型。リボンと同じ濃紺に銀の縁取りの制服は宰相や管理官の制服。
カイン公爵って、本当に綺麗で素敵。好みど真ん中。カウンセルがカイン公爵にこんなに似ていなければ、私だって黒い歴史に名を残さなくても済んでいたかもしれないのに!!
何だろう、何かモヤモヤする。
この後、父や王宮の管理官達と王宮で会議があるらしいので、ちゃんとした正装で出勤しないといけないらしい。
私はあのふざけた服装で本気で堂々と王宮に行こうとしていた父を土魔法の縄縛りで捕縛。執事のハウルに頼んで、自室に無理矢理戻して魔法省のグレーと金縁の制服に着替えさせると、父に再び向き合った。
「父様、王太子妃の打診があった場合は絶対にお断りしてください。」
この際、上位に逆らえない云々は言わない。だって、王様って元学友でしょ?
上手いこと出来るよね?上手い事生きて来たんでショ?
ポカンと半開きな父の口がなんかゴニョゴニョ言っていたので、私はキッパリ伝えた。
「…そうだね。ミアベル今はちょっと傷心…「私には王妃になりたいといった憧れも覚悟もないので、真剣に検討した結果、辞退いたします!と伝えてくださいませ。」」
バン!!っと紅茶カップを叩きつけるように、勢いよくテーブルにおいた。
カップは土魔法の硬化でガードしながら、紅茶が溢れないよう、時間魔法使ったから、テーブルからヤヤ跳ねたけど、ヒビも入ってないし紅茶も溢れてないよ?ハシタナイ?アラ、ナンノコトデショ?
一歩も引かない。なんなら、火魔法で火傷さしたるぞという眼光で父の紅い瞳を睨みつけた。
この時、私の紫色の瞳が紅く変化して、ユラユラと煌めいていたらしい。
威圧魔法もちょっとダケ、使っちゃったかもしれない。あ、精神魔法って私もちょっとダケ使えるんだって、前にカイン公爵が言ってたかも。
「………ミアベルちゃん、こぁいよ?僕、婚約受けるとか言ってないのにぃ。」
子鹿の様に涙目でプルプル震える父に、そっとカイン公爵が微笑みながら、父を抱きしめるように寄り添って、『行ってキマス』といって2人は出かけて行った。『マッテマッテ。僕モイクカラ。オイテカナイデェ。』とカウンセルも父達の後を追うように、プルプルの足をもつれさせながらも、足早に去っていった。
フン!!
この後、再び温室に戻ると、この日私は温室所か、庭園の雑草から、枯葉や害虫駆除、土質改善まで淡々とこなし、庭師達の仕事を取らないであげてくださいと。庭師長のマルクにやんわりと諭された。
この後、魔力を使いすぎて、魔力酔いを起こした私は熱が出て、三日程寝込んでしまった。
やっぱり、草刈りする時、足や腕や掌に強化魔法をかけてしまったのがやり過ぎだったのかな?
それとも植物魔法と光魔法で病気の植物を消毒しまくったのが原因かな?
それとも、その後、庭園全体の大地に恵みを与え過ぎちゃった事だったのかな?
「「「全部だ!」」」
暫く、魔法を使用禁止令が父からも執事や侍女達からも出てしまった。
*****
そして、再び学園に通い始めて2週間程は、心が荒れに荒れていた私は、仲の良い女生徒同士のお茶会以外の夜会やお茶会等の招待を全て断り、魔法学園の授業が終わると速攻家に帰り、王太子、取り巻きの姿を避けて、自宅に引き篭もっていた。
引き篭もっていたせいか、病弱だって母の事もあったせいか、ミアベル病弱説が浮上し、時々ため息を吐く儚げな姿に、10歳〜18歳までの王立イシュフォン学園中の生徒達をドキドキワキワキさせてしまった。
彼女には迂闊に近寄ってはいけない。この時期、〝ミアベル見守り隊〟なるものが発足してしまったのだった。
「取り付く島もないってこの事だよね。」
長いため息を吐くと、ジークフリード王太子殿下は姿が見えたと思ったら、直ぐに消えてしまった愛しいミアベルを想った。
「ミアベル侯爵令嬢って、妖精伝説のまぼろし姫みたいだね。」
側近のユーストスがニヤけた顔で呟く。
「妖精?美しく儚い、アメジストのような紫の瞳にラベンダーの髪の月の眷属精霊の話じゃなかった?まぼろし姫って、月の出ている間だけ姿を現すってやつだよね?ミアベル侯爵令嬢はアメジストの瞳は同じだけど、髪の色は薄い金色じゃん?月の精霊っぽいかなぁ。眼力あるし、どちらかというと、銀の女騎士ヴァルキリーっぽくない?」
同じく側近のブルームが降参ポーズをしながら呟く。
「………まぁ、ミアベルって怒ると時々怖いからネ。基本は大人しめで良い子なんだけど、スイッチが入っちゃうトネ。………殿下も、程々にしてクダサイネ。」
同じく側近のカウンセルがボソボソと呟いた。
「……断られるにしても、せめて気持ちだけでも、伝えたいんだ。」
落ち込むように、俯く殿下。中々引かないジークフリードは意地になっていたとしか思えない。それでも、王太子の一世一代の告白ってやつを、応援したいって思ったんだよな。だって、いじらしいじゃないかよ!
ミアベルだって、俺みたいなフラフラしている奴より、将来は安泰な王太子妃、王妃様になれるんだから。何を迷う事があるんだかな。
まぁ、俺は恋心とか実はよく解らないんだよな。父があんなんだしさぁ。
母は事故で亡くなってしまったし、突然大事な人が居なくなるって感覚が俺を臆病にしているとは解っているんだけどな。今はそんな怖いもの作りたくないし。いっそ、政略結婚とかだったら、気楽なんだけどな。そんな弱気な事、言えないだろ?
いずれは公爵家を継がなくちゃいけないし、五大公爵家って、足元狙われる事も多い。それこそ、ミアベルみたいなホンワカした奴は
うちはなぁ。父があんなんなっちゃったの、爺さんのせいだと思うんだよな。厳しいだけで、氷そのものと言われてたバーンズワース家、元公爵。
ミアベルには幸せになってもらいたいんだ。俺だって、幼馴染で妹のように思ってはいたんだから。すっかり、嫌われちゃったろうけどな。仕方ないな。父にフォローしてもらおう。なぜか、ミアベルに対しては普通に対応出来るみたいだからな。あんな父ちゃん。俺にだってしてもらった事ないのにな。やっぱ聖なるオーラってヤツが最強なのか?
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