41credit.世界が変わる日
「――僕もずっと待っていたよ!!!!」
そこで「ぐえぇっ!?」と苦しい声を上げることになった俺。
キティのように横からいきなり抱きついてきたのは、なんとあの王者スバルだった。
「ちょぉっ! な、なんだよアンタいきなり抱きついてくんな! 痛いから離れ――ってぇ!? オイオイオイ! なんでアンタまで泣いてんだよ!? しかもアリスよりボロ泣きじゃん!」
「それはもちろん嬉しいからさッ! やっと、やっと僕と同じ速さで走れる人を見つけたのだから涙も溢れるというものだろう! 見ているかいキョウ! 君の弟もまた僕の素晴らしいライバルになってくれたよ!」
「ラ、ラ、ライバルぅ!? ちょっと待てよ! アンタ何言って――」
「共に遙か未来へ飛びだそうじゃないか! 僕の愛おしいライバル、マナカ・シュンくん!」
「だから勝手にライバル宣言すんのやめろやああああ!」
ここめちゃくちゃ人集まってんだぞ! しかも配信とかされてんだぞ! ほらお前のファンらしき女の子たちがめっちゃキャーキャー騒いでんじゃんか! 自分の影響力考えろやスピードキングうううう!
と、そんなときだった。
「ダ、ダ、ダメですーーーーーーっ!!」
俺の反対の腕を引っ張るように抱きついてきたのは、アリス。
彼女は叫ぶような大声量で言った。
「シュンくんは私のですっ!! 絶対! 誰にも渡しませええええん!!」
……静寂。
とんでもないことを口走ったおてんばお嬢様は、そこでハッとして周りをキョロキョロ見渡した。その顔が猛烈に赤く染まっていく。
「――あ。あっ、あの! そ、そうじゃなくて! シュンくんは私のライバルでっ、約束しててっ、だ、だから誰にも、あ、あのののお!」
時既に遅し。
世界王者と人気アイドルゲーマーが大勢の前でそんなことを言いやがったもんだから――
『ななな! なんとなんと! 王者ハクバ・スバルからライバル宣言が飛び出したかと思いきや、さらにアイドルプロゲーマートキノミヤ・アリスの大胆発言ッ!
この場にお集まりの皆さま、そしてネット配信をご覧くださっている一千万人超の皆さま! 間違いなく! この日から我々ゲーマーの世界は大きく変わることになるでしょう! このときこの瞬間を共に過ごせましたこと、私も心より感謝しております!
それでは本日はこの辺で! 実況解説は私、ゲームセンター『サンシャイン』の看板娘なラビットガール! シラフジ・イロハちゃんでした! またお会いしましょうね! シーユーアゲイーン!』
いろんなカメラの方へ笑顔で手を振るイロハさん。
次の瞬間、パシャパシャパシャとあちこちからフラッシュが焚かれて、記者らしき人たちがインタビューをしようと我先に俺たちの方へ詰め寄ってきた。
「ハクバ選手! 今のお気持ちを一言!」「マナカ・キョウ選手以来のライバル宣言となりますがそれほどの手応えだったのでしょうか!」「マナカ・シュン選手はプロではないとのことですが、今後の展望をお聞かせください!」「やはり兄であるマナカ選手のようなプロを目指されるのでしょうか!」「マナカ選手とトキノミヤ選手はどういったご関係なのでしょうか!」「先ほどお泊まりという発言がありましたが、既にそういったご関係と考えてよろしいのでしょうか!」「トキノミヤ選手のお気持ちも知りたいです!」「トキノミヤ・ユキノCEOも公認ということでしょうか!」
「こりゃすげぇニュースだ! オイさっさとネット記事あげろ!」「美少女アイドルプロゲーマートキノミヤ・アリスに熱愛発覚! 既にお泊まり済みラブラブ同級生! 稼げますわよこれは!」「期待の超新星マナカ・シュン! ハクバ・スバルとトキノミヤ・アリスとの三角関係! 面白いことになってきましたねぇ!」
押し寄せる記者たちにくわえ、周りのゲーマーやファンたちもめちゃくちゃに盛り上がってもう収集のつけられないような馬鹿騒ぎになってしまった。それでもスバルは爽やかに一つ一つ受け答えしていき、赤面のアリスはぷるぷる小刻みに震えながら涙目で俺にくっついている。キティがケラケラと笑って、バンさんはちょっと頭を抱えていた。
オイオイオイオイ……勘弁してくれよマジでさああああああ!!
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