温羅(4)

 学校についてタクシーをおりた子竜たちは、家庭科室にいそぐ。

 室内では、優たちをはじめ、恒岡先生は気を失ったまま。

「先生! 起きてくださいっ!」

 子竜が身体を優しくゆすると、先生が目をあけた。

「……つ、土御門、くん……? あら? わ、私は……?」

「じいちゃん!」

「さあ、先生。身体を起こしてください。何があったか覚えておりますか?」

「……土御門くんが稲荷さんが行方不明だって……それで、私……」

「なるほど」

「じいちゃん。先生はとりつかれてるのか?」

「いや。くわしくは神社で調べる必要がありそうじゃが……先生自身かも、しれんな」

「なんだよ、それ……」

「たとえれば、子竜。お前の中に温羅がいるような状況に似ているかもしれん。自分の意思ではどうにもならないものが、内にいる……」

「先生の中に?」

「ともかく、ワシは先生と一緒に神社へ行く」

「俺も!」

「おじい様、私も行きます!」

「お前さんたちはそこにいる子たちに説明を。先生のことはワシに任せなさい」

 じいちゃんは、先生をだきあげると教室をでていった。

(先生……)

 飛鳥に肩をぽんとたたかれる。

「ここはおじい様にお任せしよ。私たちは先輩たちを」

「そうだな。――先輩、起きてください。こんなところで寝てるとカゼを引きますよ」

 優たちが目をさます。

 最初は「蛇の化け物だ!」「ぎゃあ! 食われるっ!」とパニックになっていたけど、子竜たちがなんとか落ち着かせた。

「し、子竜」

「先輩。終わりましたよ。なにもかも」

「ほ、本当か? あああ……助かった! お前のおかげだ! 本当にありがとうございます!!」

 優がその場で土下座をした。

 これには俊一郎と昭夫もあぜんとする。

「先輩、やめてください!」

「ずーっといじめてて悪かった! お前のおかげで助かった! お前ら謝れ!」

「で、でも……」

「俺たちだけで、あの空間から逃げられたか? どうなんだ!?」

 俊一郎と昭夫は気まずそうな顔で土下座する。

「いやあ、そこまでされちゃうと……。いや、参ったな」

「子竜」

「わ、分かってるよ。もういいですから。土下座とかやめてください……」

「本当に、いいのか? 許してくれるのか?」

「はい。もういいです」

「おおおお! 友よぉぉぉぉぉぉぉ!」

「は!? ちょ、ちょっと!?」

 いきなり抱きしめられ、混乱する。

「あれだけのことをくぐりぬけたんだ! 俺たちは親友だよな!」

「あはは……。それなら、友人としてひとつお願いがあるんですけど」

「なんだ!? 何でも言ってくれっ!!」

「このことは誰にも言わないでください。もちろん配信でもあつかわないでください」

「そ、そんなぁ……」

「親友としてのお願いです」

 うぐぐ、とうなっていた優だったが、

「わ、分かった! 親友との約束だからな!」

「じゃあ、帰りましょう」

 優たちは、さわぎながら帰っていった。

 飛鳥がひじでこづいてくる。

「良かったじゃん、親友ができて」

「かんべんしてくれ」


 その数日後、学校で過去、行方不明になった学生たちが次々と発見されることになった。

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