温羅(3)

「――――――――――っ!」

 子竜がはっと我に返れば、そこは道路のどまんなか。

「……あ、飛鳥?」

「子竜? 本当に? 本当に本当に本当に、子竜なの!?」

 飛鳥が、子竜の顔を両手で包みこみ、顔をのぞきこんでくる。

「な、なんだよ。気持ち悪いな……」

「温羅じゃない、本当に子竜だっ!!」

 飛鳥がだきついてくる。

「顔をみるだけで分かるのかよ」

「当たり前! どれくらいの付き合いだと思ってるの!」

 子竜は、だきつく飛鳥の背中を優しくさすった。

「飛鳥こそ無事か? ケガとか……」

「ぜんぜん大丈夫っ! びっくりしたよ! いきなり温羅が意識をうしなったからチャンスだと思って、数珠をつけて。なのに全然、目をさまさないし……」

「ありがとう、飛鳥」

 飛鳥の目が別の方を向く。

 目線を追いかけると、タクシーが子竜たちの横でとまった。後部座席の扉があくと、じいちゃんが「子竜、平気か!」ととびだしてきた。

「じ、じいちゃん……?」

「子竜。お前、温羅の封印をといたじゃろう!?」

「……ご、ごめん」

「どうして約束を守らなかったのじゃ!!」

「おじい様、やめてください!」

「あ、飛鳥ちゃん?」

 じいちゃんは飛鳥に言葉をさえぎられ、目を丸くした。

「子竜は私たちを助けるために封印をといたんです! 怒らないでください! 怒られるのは、私のほうなんです!」

「たすける……? 飛鳥ちゃん、それはどういう……?」

「とにかく学校へ一緒にきてください!」

「よう分からんが……急ごう」

 子竜たちはタクシーにのりこんだ。

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