ミリしら田原総一郎

@fuziyama

第1話

 ここは某県某市のマンションの一室。

四十程の少し不精ひげを生やした男と、パリッと糊の効いたスーツを着た若い男が

ソファを挟んで座っていた。


編集者

「で、先生には『田原総一郎』をテーマに何か書いていただきたいのですが」

先生

「そっか。えと、質問があるんだけけどさ」

編集者

「なんでしょう?」

先生

「誰?」

編集者

「は?」

先生

「いや、だから田原総一郎 is 誰?」

編集者

「え………………」


放送事故みたいな沈黙が流れた。


先生

「いや、オレ、知らんのよ。その人」

編集者

「『朝まで生テ〇ビ』の人ですよ!? 知らないんですかっ!?」

先生

「『朝まで生テレ〇』? ははーん?」



先生

「エッチな番組だなっ!!」

編集者

「なんでそうなるっ!!!!!!!!!」


先生

「だって番組名的に深夜番組だろ?」

編集者

「ええ、まぁ」

先生

「で、生だろう?」

編集者

「ええ、まぁ」

先生

「ふーん、エッチじゃん」

編集者

「なぜっ!?」

先生

「ハッ! ネットで検索すればエロ画像がゴロゴロ出てくるのが当たり前な

 若い世代とは違ってな!深夜のエロい番組が有力なエロ享受手段

 だったんだよっ!」

編集者

「べつに乳首が見えた訳じゃないでしょう」

先生

「いや、見える事もあったが」

編集者

「うっ、嘘だっ!!!」


うろたえる若い編集者に、四十を過ぎたオッサンは自慢げに言い放つ。



先生

「今じゃ信じられないかもしれないがな。あったんだよ昔は!

 地上波でも! 命がけでおっぱいを流した奴らがいたんだ!!」

編集者

「命かけるんならもっと別のモノにかけましょうよっ」

先生

「傲慢だな」

編集者

「なっ、なにがですか…………」


若い男は鼻白む。それは生まれてこの方、これほど冷たい視線を

浴びた事はなかったから。


先生

「『命を賭けるもの』を他人にどうこう言われたり、まして指定される事ほど

 傲慢な事はこの世にねぇからだよ」


そして付け加えるように。


先生

「他人の生命を奪うような事なら話は別だがな」


ほんのわずかな時間、シリアスな空気がマンション(築35年)の一室に漂う。が。


先生

「で、田原総一郎と乳首の関係についてだが」

編集者

「だから、乳首関係ありませんてっ!」

先生

「分かってるよ」


何がだ。


先生

「この令和のご時世にテレビで乳首が拝めるはずもない。

 つまり田原総一郎は…………」


先生

「目から『謎の光』を発する事が出来るんだな?」

編集

「できませんよっ!」

先生

「じゃあ、口からだな? おのれ田原総一郎っ!!」

編集

「やらんてっ!」


 ちなみに『謎の光』とは漫画やアニメで

写ってはいけない、ちち、しり、その他を隠す不思議な光である。悔しい。


先生

「つまり、アレだ。『朝まで生テ〇ビ』というのは

 田原総一郎がキレイなお姉さんと連結しながら朝まで腰を振りたくりつつ

 目から謎の光を放つのを夜が明けるまで眺める番組だな?」

編集

「そんな番組あるかっ!!!」

先生

「まっ、まさかチ〇コから謎の光がっ!?」

編集

「謎の光から離れろぉっ!!!」

先生

「いや、もはや謎の光なくしてエッチな場面は成り立たないから……」

編集

「さめざめと泣きながら言う事ですかっ!!!」

先生

「流せるものなら血涙でも流したい今日この頃…………」


 それはさておき。


先生

「んー、エッチな番組が関係ないとすると…………あ、分かった!」

編集

「なんですか」

先生

「通販番組だな? ほらたとえば…………」

そう言うと、彼はやおら立ち上がり、急にイキイキとした声で。


先生

「はい! 本日ご紹介するのはこちらの商品!

 ヘルヒャーの光圧洗浄機『田原総一郎』!」

編集

「売るな! 田原総一郎を売るなっ!!!」


 だが、一部読者からの抗議で鍛えられた面の皮は若年編集者の抗議などでは

キズ一つ付かない。まるで何事も無かったていで。


先生

「家の外のお掃除って大変ですよね? 外壁、門柱、塹壕。泥やらなんやらで

 なかなかお掃除もはかどらない」

編集

「今、しれっと日本の一般家庭にない施設混ぜませんでした?」

先生

「そこでこの田原総一郎!」

編集

「なんでやっ!」

先生

「累計販売数200万人! 謎の光パワーでどんな汚れでもたちまち分解します!」

編集

「まだ生きてたんですか、その設定っ!!」


あたぼうよ。


先生

「階段、シャッター、網戸から浴室の奥様・娘さんの乳首まで!

 謎の光ならなんでも消せますっ!」

編集

「私、先生の存在を消したいですよ」

先生

「今なら! ユ■クロの上下がセットでついてきて大変おトク!」

編集

「待って! 別売りなのっ⁉ 『今』じゃなかったら

 裸の田原先生がダンボールに入って送られてくるのっ!!?」

先生

「しかもグ●ゼの下着まで付いて19800円っ!!!」

編集

「安いっ! 人ひとりの命が驚きのバーゲン価格ッ!!!」

先生

「最近、安くなってるからなー、人命(TVで某戦争のニュース映像見ながら)」

編集

「イヤな事言いますね…………」

先生

「ついでに言えば今暴落したワケじゃないのかもな。

 『他人の命』や権利を軽視する人間に権力あずけたら、そりゃあ……

 ……見覚えある道すぎて父ちゃん泣けてくらぁ」

編集

「へぇ、そんな国あったんですか?」


先生

「…………………………………………(絶句)」


編集

「えっ? えっ? どうしたんですかっ? 私、何か変な事でも

 言いましたかね?」

先生

「『売り家と唐様(からよう)で書く三代目』ってヤツかねー……(遠い目)」

編集

「え? なんですか、売り家って? このマンション、売るんですか?」

先生

「しっかりしてくれよぅ、この三代目よぅーーっ!」


よぅーっ、よぅーっ、よぅーっ、よぅーっ…………。

















カクヨム

「……というような先生をなめくさった頭のおかしい作品も届いておりますが」

田原総一郎

「いいんじゃないの」

カクヨム

「え?」

田原総一郎

「失礼と言うなら僕も随分しでかしてきたからね。

 それに切り口や考え方はあればあるだけ良い」

 カクヨム

「はぁ」

田原総一郎

「まぁ、僕も頑張らないと」

カクヨム

「先生が元気出すような作品ではまったくありませんでしたがっ!?」

田原総一郎

「まぁ、そうなんだけど。でも、三代目に届く言葉は必要だし。それに」

カクヨム

「それに?」

田原総一郎

「売り家にも焼け野原にもしたくないから」













































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