第62話「予定通り」

「ねぇ~俺達こう見えても全員もうすぐCランク目前の有望株なんだよ~そんな奴ら別れて俺達のパーティに入って来なよ~」 

「え? え?」

「いきなり何言ってるの?」


 俺と豪志を無視して井波さんに迫ってくる青年を押し返す。


「いってーなおい、お前ら俺達よりも下だよな? 何個だよ」

「下? 何個?」

「多分、歳の事を言ってるんだろ。いい、俺が相手する」

「おい、シカトこいてんじゃねーよ? 泣かすぞ?」


 やたらと高圧的な青年に対して豪志が一歩前に出る。


「別にシカトなんかしてないっすよ。アンタらがいくつかは知らないけど、俺は高2、この二人は高1っす」

「はぁ? 高校生1年!? ここは10階層だぜ? ガキ共がこれるところじゃねーだろ?」

「いや、歳は関係ねーっしょ?」

「てか、テメーなんだその口の利き方は? こっちはテメーよりも5個も上なんだぞ!?」

「迷宮潜ってるのに歳なんか関係ないっすよね? あんたら下級ランクだよな?」

「もうすぐCランクだよクソガキが!」

「だから下級じゃねぇか」


 そう言って、豪志は自分のライセンスカードを取り出して青年達に見せる。


「なッ!? Cランクだと!? 高2で!?」

「俺、聞いた事あるぜ。高校生でソロで潜ってるやつがいるって、確かそいつがCランクだったはず」

「はん! こっちは全員Dランクだ。どうせ、後ろのガキは駆け出しのペーペーなんだろうよ。Cランク1人くらいどうってことねぇだろ。おい、アフロ。舐めた口利いてごめんなさいって謝ってその子を置いてここから消えろ。そうしたらボコるのは勘弁してやる」

「はぁ? なんで俺が謝んなきゃいけねぇんだよ? そもそも突っかかってきたのはそっちだろうが!」

「クソガキがッ、痛い目に合わないと分からねぇらしいな? おい、暇つぶしに遊んでやろうぜ!」

 

 青年達は下卑た表情を浮かべそれぞれの武器を抜く。


「おいおい、こいつらマジかよ?」

「豪志、この人達は俺達を危害を加えようとしてる、で間違いないよね?」

「あぁ、しかも、春風まで置いて行けとさ」

「そう、井波さんを……」

「何をごちゃごちゃ――へッ……ひぎゃあああああああ! 腕が、俺の腕がああああああああああ!」


 俺の胸ぐらに手を伸ばしたツーブロックの青年の腕を手刀で切り落とす。

 ツーブロックの青年は自分が作った血だまりの上で泣き叫びながら野垂れまわる。


「何だよ!? 何があったんだ!? お前が斬ったのか! こいつの腕をお前が斬ったのか!?」

「まぁね。そのまま首を落としても良かったんだけど……それで、アナタ達もかかって来るってことでいいよね?」


 俺は収納箱からライセンスカードを取り出して青年達に見せる。


「え、え、Sランクうううう!?」

「ま、マジかよ!?」

「俺、聞いた事ある。昨日、Sランクのガキが現れたって! まさ、かこいつが!?」

「Sランクなんて勝てるワケねぇだろおお! 逃げるぞ!」


 青年達は、俺に両腕を落とされた青年と腕を担いで一目散にこの場から去っていた。まぁ、死にさえしなければ腕の再生くらい調達屋協会お抱えの治癒特化のマスターに治してもらえる。


「ちっ、胸糞わりぃやつらだったぜ」

「ごめんなさい、私がいたせいで……」

「なんで井波さんが謝るの? 井波さん全然悪くないよ?」

「そうだぜ春風。あの馬鹿どもがバカだっただけで春風はなんもわるくねぇよ」


 気まずそうにしている井波さんを宥めていると、階層主の間の扉が赤から青へと変わる。赤は入室不可、青は入室可能を意味しており俺達より前に入っていた人達が終わった合図でもある。


「入れるね。時間も押してるしさっさと終わらせよう」

「おう!」

「はい!」


 扉を開けて中に入る。

 バスケットコート程の大きさの部屋の奥には祭壇見たいのがあり、祭壇の前には緑のローブを着て右手に樫の杖をもつ豚人間がこちらを睨むように見ている。マジシャンオークだ。


「qdkwpk>??edoqewfr」

 

 マジシャンオークが何らかの詠唱を唱え始めると豪志がくるぞ!と身構える。

 程なくして、床からモリモリと土が盛り上がりあっという間に高さ10メートルはありそうな2体のゴーレムが完成する。


「eori924irk」


 マジシャンオークが何らかの言葉を発するとゴーレム達は俺達に向かって攻撃を仕掛ける。

 喰らってやる義理もないので攻撃をよけてゴーレムの頭部付近まで飛び、ゴーレムの頭部をデコピンで弾くと頭部が粉々に吹き飛ぶ。

 レベル999とはこういう事だ。


「はは……デコピンって……」

 

 もう一体のゴーレムの攻撃を受け止めている豪志は、その様子に何度も見た呆れ顔を浮かべていた。


「豪志、5秒だけ踏ん張ってもらえる? その間にアイツ倒してくるから」

「頼む!」


 俺は着地と同時に、再度ゴーレムを生成しようとしているマジシャンオークとの距離を一瞬で詰める!


「kqp9wqpo!?」

「さよなら」


 手刀でマジシャンオークの首を落とすと、醜い豚の頭がコロコロと祭壇から転げ落ち、ポンと音を立て霧となって散っていき、豪志と対峙していたゴーレムも砂の山と化した。


「よし、11階層に行って。今日は終わろう」


 俺達は予定通り11階層の到達ポイントを登録した後、協会に戻った。

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