第61話「10階層へ」

 昼食を取ったのち、俺と井波さんは到達ポイントの登録をするために1階層の球体の前に並ぶ。豪志は10階層まで到達しているため並ぶ必要がないため待ってもらっている。

 1階層だからなのか長蛇の列ができていて、球体の前に立っている協会の職員らしき人達にライセンスカードを渡すと流れ作業の様に球体に近づけて登録をしてくれていた。

 

 ちなみに2階層以降は協会の職員が登録をしていくれる事はない。

 1階層はシステムの扱いが乏しい駆け出しの人達が多いため円滑に到達ポイント登録を行うための措置だという。


 俺と井波さんは並んで10分ほど登録を終え、豪志の元へと戻る。 


「お待たせ」

「お待たせしました」

「おう。週末だからやっぱり結構掛ったな」


 週末は、副業で迷宮に潜る人達もいるため1階層は特に混み合っているという。 


「さて、俺としては一気に6階層まで進もうと思うんだけど、どうだ?」

「うん、俺も似たような事を考えていたよ」


 俺は豪志の提案に賛同する。


「えっと? なんで6階層なんですか?」

「あぁ~春風は初めてだから分からないか。いいか、迷宮って言うのは5階層ずつフィアーの強さが変化するんだよ」


 迷宮は5階層毎に階層主が存在していて、階層主を突破できない限りその上の階層に行く事はできない。

 そして、階層主を突破した事で難易度が上がっていく様に現れるフィアーの強さも変化していく。


「迷宮に潜っている人達の過半数は、基本5階層までに集中しているから回ってくるフィアーの数が圧倒的にすくない。だけど、6階層以降は人が一気に減るから効率よくレベル上げをしたいならまずは6階層に向かうのが定石なんだ。俺はこの通りレベルカンストだし、豪志も10階層まで到達しているからね、1階層から時間をかける必要はないと思うんだ」

「なるほど! 理解しました。じゃあ、6階層に向かう事でいいんですね」

「いや、一気に10階層まで行こう」

「へ?」

「おい、海人。それはなんでも飛ばし過ぎじゃないか?」


 10階層で長い事足止めを喰らっている豪志からすればいきなり井波さんを連れて10階層までに行くという事は腰が引けるのだろう。

 でも、ここには俺がいる。


「10階層の階層主を一人では突破できなくて豪志はパーティに入りたがっていたんだよね?」

「あぁ、そうだ」

「階層主はどんなやつ?」

「2体のゴーレムを操るマジシャンオークだよ」


 マジシャンオークは、その名の通り魔法を扱える豚人間で、俺も一番初めに潜った、エジプトの迷宮で戦った事がある。マジシャンオークの特徴としてはゴーレムを操りながら離れた場所で魔法を放ってくる。

 俺は、色々なアークを使う事が出来るためそんなに苦労することなく倒すことができたが、確かに豪志一人では難しいだろう。何故なら、いくらゴーレムを倒してもそれを操作しているマジシャンオークを倒さない限りゴーレムは無限に修復されるからだ。


「マジシャンオークは前に倒した事があるから問題ないよ。恐らく瞬殺できると思う」

「まぁ、お前ならそうかもだけど」

「俺と井波さんは、基本週末しか迷宮に潜る事はできない。それは、豪志に悪いからね。一緒にいれる時に出来るだけ先に進みたいと思ってるんだ。どうかな?」

「俺はありがたいけど、春風はいいのか?」

「不安はあるんですけど……鷹刃君が出来るというなら」

「じゃあ、決まりだね。10階層に向かって、まずそこで井波さんのレベルを豪志に近けてから階層主を倒して11階層まで行って今日は終わりにしよう」

「スパルタだな、でも、嫌いじゃねーぜ!」

「じゃあ、行こう!」


 ◇


「これでレベル75になりました」

「はは……一日でレベル75って……世界最速じゃねぇか?」

 

 10階層までは豪志のマッピングした地図があったため、迷うことなく最短で来ることができた。そこから3時間ほどで井波さんのレベルは75に達した。

 

 レベル75になった井波さんのステータスは次の通りだ。


名 前:井波春風

ランク:Fランク

パーティ:カイト

レベル:75(+54)

H  P: 232(+162)

攻撃力:332(+100)(+162)

防御力:232(+162)

敏 捷:332(+100)(+162)

技巧性:232(+162)

運  :777

装備:フェザースピア(攻撃力+100、敏捷+100)


 強運によるステータス上昇値のMAXの恩恵でステータスだけだと豪志を超えている。それに、レベル60を超えた辺りから自信もついたらしく率先してフィアーを倒せる様になった。


 それに、取得品もかなりの量で、ほぼ毎日潜っている豪志の3ケ月分くらいの量はあるという。


 さて、現在時刻の16:00。


「じゃあ、階層主の間に行こうか」

「おうよ!」

「はい!」


 階層主の間に到着すると先客がいた。

 大学生くらいの青年5人組のパーティだ。

 その中の一人、ツーブロックの青年が俺達に気付く。


「可愛い子ちゃんみっけ~~」

「おぉ~いいじゃん!」


 決して友好的には見えない青年達はぞろぞろと俺達の前に近づいてきた。


―――――――――――――――――――――――

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

次回は、2/27 8AM更新予定です。


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