第53話「レベルとステータス」
井波さんが会員登録をした翌日
俺は、待ち合わせ場所である調達屋協会日本支部のロビーに来ていた。
ロビーにはすでに井波さんと豪志の姿が見え二人に近づく。
「あッ、鷹刃君! おはようございます」
「よッ、海人」
「おはよう。二人とも早いね。俺も結構早めに来たつもりだったけど」
待ち合わせ時間は、9:00。
そして、今は8:40だ。
「緊張で、その、あまり寝れなくて」
「俺はいつも8時前にはここに来てるからな習慣みたいなモノだから気にしないでくれ」
「そうなんだ。まぁ、今日からよろしくね」
「おう、こちらこそだぜ」
「よ、よろしくお願いします」
「じゃあ、さっそく打ち合わせといこうか」
樹海に入る前に情報交換やパーティとしての決まり事などなどの話し合いをするために俺達は食堂にあるテーブルに移動する。
俺は井波さんの人となりを知っているので俺と井波さんだけだったら別にこんなミーティングは必要ないのだが、豪志に関してはまだ出会って日も浅く色々と事前に決めておかなければ後で揉める原因になる可能性があるためにこの場を設ける事にした。
それに対して豪志もなんら疑問も持たないのでスムーズに話合いに入る事ができた。
各々の飲み物がテーブルに運ばれ、俺はコーヒーを一口飲み込み話を切り出す。
「まず大前提として、俺は井波さんが自立できるまでのヘルプであってずっとこのパーティを続ける気はない。それは分かってくれているよね?」
「はい」
「もちろん」
「ありがとう。では、迷宮内での取得物は均等に人数割りで考えている。まぁ、武器防具など各々の適正にあった物があればそれはパーティの戦力強化のために適性のあるメンバーが使うことにしようと思う」
別に俺はこれ以上お金はいらないけど、ここで俺はいらないと言ったら長引きそうだし一応人数割りという形を取る事にする。
井波さんと豪志は頷く形で返事をしてくれる。
「次にパーティの活動については、基本毎週土日の2日間。時間は、9:00~17:00とする。土日以外の休みの日の場合は協議の上活動するかどうかを決める事にする」
「おう、その代わり平日は一人で自由に潜らせてもうぜ?」
「うん。今の所決まり事はこれくらいかな。後は、都度都度何かあった場合話し合いで決めよう」
「はい」
「次に、各自の能力の確認だけど……今の所、俺は中級の【格闘士】だと思ってもらえるといいかな」
俺のアークはなんというか説明が難しいが、説明ができないわけではない。
信じるか信じないかは相手次第だからだ。
だけど、豪志の事を完全に信頼するには時間が必要だ。
なので、俺はいつも通り【格闘士】という事にした。
「“思ってもらえる”ねぇ……ソロのレコードホルダーがそんなありふれた中級マスターだとは思えないが……まぁ、いいさ。それでもお前はレコードホルダーなんだからな。それで、春風のアークは何なんだ? まさか、春風も【格闘士】とは言わないよな?」
「私は……」
「今は明かせないと言った方がいいかな」
「今は?」
「まだ、井波さんのアークが迷宮内で作用できるかどうかが不透明なんだ。ちゃんと作用している事が確認出来たら豪志に教えても良いと思うけど、井波さんはどう?」
「私は構いませんよ」
「という訳だから、分かってもらえると嬉しい」
「わーったよ。俺もまずはお前らの信用を勝ち取る事から始めないとな。俺は、操作系中級アークマスター【
へぇ~デュアルマスターなんだ。
それなら、この歳のソロで10階層というのも納得がいく。
「良かったの? 俺達はちゃんと開示してないのに」
「別に構わねぇよ。俺のアークなんてこの日本支部にいる奴ならほとんど知っているからな。それに、俺の事を少しでも早く信頼してもらいたしよ」
と気恥ずかしそうにポリポリとアフロを掻く豪志。
ここで何も開示しないのは、フェアじゃないよね。
「俺のレベルは999」
「はぁ!? 999だって!? まじかよ!?」
本当は偽装もできるんだけど、これくらいは豪志に教えてあげても良いよね。
「ほら、これ」
俺はライセンスカードの裏面を豪志に見せる。
そこには、俺のステータスが記載されていた。
名 前:カイト
ランク:Sランク
レベル:999
H P: 2,500
攻撃力:2,700
防御力:2,700
敏 捷:2,600
技巧性:2,500
運 :50
基本レベルが上がると各ステータスのパラメータは1~3でランダムに上昇するが、ミニマム2ポイントくらいに落ち着くと言われている
俺は平均的に2.5~2.7ポイントで上がっている。
かなり高い上昇率だと言えるだろう。
因みに、運は最初から決まっており運気上昇効果のあるアイテムでもない限り上昇する事はない。
「化け物かよ……」
「まぁ、言っても迷宮内でしか適用されないからね」
レベルやステータスはあくまでも迷宮内で適用される楔専用のシステムだ。
迷宮の外に出れば何の恩恵も受けられない。
なぜそうなのかは、未だに解明されていない。
「お前がレコードホルダーの訳が分かったよ……因みに俺はこれだ」
名 前:宮本豪志
ランク:Cランク
レベル:78
H P: 156
攻撃力:172
防御力:162
敏 捷:195
技巧性:210
運 :55
「いや、その歳で78レベルなら立派だよ」
「お前に言われてもなぁ」
「あ、の……」
「どうしたの?」
「これ、私のステータスです」
名 前:井波春風
ランク:Fランク
レベル:1
H P: 10
攻撃力:10
防御力:10
敏 捷:10
技巧性:10
運 :777
「おいおい、なんだその運の高さは!」
「これは、予想以上だね」
「正直、海人。お前のステータスよりビックリだぜこれは」
「あの……私、おかしいのでしょうか?」
「おかしくはないんだけどよ……いや、おかしいのか……てか、俺すげぇ奴らのパーティに入れてもらったんじゃ!?」
「おかしくはないよ。むしろ調達屋に運は必要だから、井波さんの運だけみると調達屋に向いてるともいえるよ」
「本当ですか!?」
「あと、戦えるように鍛えるだけかな」
「よ、よろしくお願いいたします!」
「じゃあ、そろそろ樹海に向かおうか」
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