第52話「パーティ結成」
「俺もお前達のパーティに入れて貰えないか?」
宮本君は、真剣な表情で俺にそう言った。
「えっと、なんでか聞いても? 先ほどの失礼な受付嬢の話だと、君は、現役高校生にしてCランク調達屋になったこの日本支部の期待の星のハズだよね? そんな君ならこの日本支部では引く手あまたなのでは?」
宮本君の調達屋ランクはCランク、つまり、上位50パーセントに入ると中級調達屋だ。
俺は例外として、この歳でそのランクに昇りつめた宮本君はかなり優秀だと思う。あの失礼な受付嬢が自分の事の様に自慢するのも頷ける程に。
「それがよ……若気の至りでーー」
宮本君は自分の力を過信した宮本君はソロで挑む事に誇示してパーティの誘いを全て断ってきたらしい。
それでも順調に今までやってこれたのだが、今、攻略中の10階層でかなり苦戦しているらしい。
今からパーティを組んでも、古参の会員には生意気だとかで嫌われているし、今更パーティに入れてくれなんて言えない。
また、宮本君の事情を知らない
それなら1人で粛々と攻略していくしかないと頭を悩ませていた時に現れたのが俺達だ。
新参者かつ、レコードホルダーのSランクライセンス所有者の俺は宮本君にとってうってつけの人材なのだろう。
「なぁ、頼むよ~。もう、お前らしか居ないんだよ」
手を合わせて拝むように宮本君が頼み込んで来る。
期待のルーキーと言うほどだ、宮本君とパーティを組む事にはこっちにも利がある。
それに、俺も頃合いをみてパーティメンバーを増やそうと考えていた。
その理由は、井波さんの存在だ。
井波さんはこれから調達屋として生きる事を決めている。そして、俺はそんな井波さんを
だけど、寿命が尽きかけている俺がそれをずっと出来るわけもないし、ある程度井波さんが育ったらパーティを出るつもりだ。
だから必要だったんだ。
井波さんを任せられるパーティメンバーが。
宮本君は、年齢も近いし実績をみる限り確かな実力も兼ねている。彼の人となりは追々判断するとして、現時点では井波さんを任せるには適した人材だと思う。
だから――
「俺はいいと思うけど、井波さんは?」
「鷹刃君がそう思うなら私は構いませんよ」
「いいのか!?」
「そうだね……俺達は今のところ学校がない日しか活動するつもりはないけど、君はそれでもいいの? それと俺は調達屋になるつもりはないからいつかはパーティを抜けるつもりでいる。それでも良ければになってしまうけど」
宮本君はCランク調達屋だ。
学校には殆んど行かずこのアマテラスの根幹に潜っているのだろう。そうでなければこの歳でCランクライセンスなんて取れないと思う。
それに宮本君は2年生。と言うことはそんな彼でも進級出来ている程に優秀なアークマスターはイチコーでは優遇されているのだろう。
だけど、俺達はそうではない。
少なくともサンコーは、アークマスター養成に重きを置いていないからだ。
また、前述通り俺はある程度井波さんの力が着いたところでパーティを抜けるつもりだ。
それらについて事前に了承を貰わないといけないと思い、俺は宮本君に伝えた。それでもいいのかと。
「そうか……うん、分かった! それでもいいよ」
「そう、ならこちらも断る必要はないかな」
「ありがとう2人とも! よろしくな」
「よろしく、宮本君」
「よろしくお願いします宮本さん」
「あっ、俺の事は豪志って呼んでくれ! 俺も海人、春風って呼ぶから」
「わかった」
「っしゃゃゃゃや! それで、いつから始めるんだ?」
「そうだね……ちょうど明日は土曜日で学校もないし、早速明日からでもいいと思うけど。二人はどう?」
「私は大丈夫ですよ」
「俺も問題ないぜ。どうせほぼ毎日潜ってるからな」
「じゃあ、決まりだね」
この日本支部のロビーに明朝集まる事にして俺達はそれぞれの帰路についた。
◇
「ただいま」
「おかえり海人」
リビングに入ると義父さんがウミを撫でながら寛いでいた。
研究室に籠りっぱなしで中々家に帰ってこれなかった義父さんだが、研究が一段落ついたらしく最近は良く家にいる。
「ルミとスミはお風呂?」
「うん、そうだよ。二人が出てきたら君も入っておいで」
「うん、そうするよ。それにしても随分懐いているね」
義父さんの膝の上からテコとも動こうとしないウミ。義父さんをかなり警戒して近付こうとさえしなかったのがウソみたいだ。
「愛情を持って真摯に接すれば壁を乗り越える事なんて難しい事ではないと僕は信じているからね」
「勉強になります」
義父さんと談笑しているとリビングのドアが開かれパジャマ姿の双子の義妹達が入ってくる。
「あっ、おにぃちゃん帰ってきてる!」
「おかえり、アニキ」
「ただいま」
「アニキ、最近帰りが遅いんじゃないの?」
スミが不機嫌そうに詰めてくる。
「ごめんね、色々と忙しくて」
「スミはおにぃちゃんが居なくて寂しいんだよね~」
「ちょっと、ルミ!? 私は、ただアニキの事が心配で! 勘違いしないでよね!?」
「でたーツンデレ」
「誰がツンデレよッ!」
「スミねぇが怒った~助けておにぃちゃ~ん」
そんな義妹達のやり取りに目尻が緩む俺は、残り少ない時間を少しでも多く家族と過ごしたいと思った。
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