推しのフラメん子

アほリ

推しのフラメん子

 俺は、『推し』に命を賭けている。


 俺は、『推し』を全力で応援している。


 俺は、『推し』の為なら何でも出来る。


 だって、『推し』を俺はこんなにも愛してるんだから!!


 この思いは誰にも負けられない!!



 その俺の『推し』を教えてやろうか?


 それはな・・・やっぱやめとこ。


 いや、教えちゃおうかな?


 超有名売れっ子アイドルのな、YUKARI・・・



 ・・・の飼ってるペットの猫の、



 アメショの・・・



 フラメちゃんにゾッコンなのだ!!


 あのにこやかな顔、


 あのセクシィーな足腰。


 あの豊満な身体。たまんねぇー!!


 アメショのフラメちゃん!!アメショのフラメちゃん!!アメショのフラメちゃん!!アメショの美しい毛並み!!


 う~~~~~~んたまらん!!


 それは、テレビ番組のペット番組をたまたま観ていたのが運命の出逢いだった。


 「これがYUKARIの相棒の『フラメ』でーす!!」


 にゃ~ん!と甘えた声で鳴くフラメちゃんに、俺の母性本能が擽られたぁーー!!


 俺は興奮した。


 この世の中に、こんなにも美しくて可愛い猫が居たなんて!!


 これは運命の神の思し召しなのかも知れない・・・


 フラメちゃん可愛い!!フラメちゃん可愛い!!フラメちゃん可愛い!!フラメちゃん可愛い!!

 フラメちゃんフラメちゃんフラメちゃんフラメちゃんフラメちゃんフラメちゃんフラメちゃんフラメちゃん!!

 めんこいめんこいフラメちゃん!!


 俺の頭の中は、猫のフラメしか頭に無くなった。


 猫のフラメちゃんは、今何してるかな?

 猫のフラメちゃんは、今YUKARIに抱かれてるのかな?

 今、YUKARIは芸能活動中なら家の中で寝っ転がってるのかなあ?

 

 想像するだけで、風船のように膨らんでいく俺の妄想。


 フラメちゃ~ん!!モフモフしたーーーーい!!


 俺の猫のフラメちゃんへの『愛』は今、どんどん無限に膨らんでいく。

 膨らんで膨らんで、巨大風船の如くだ。


 YUKARIのファングッズは、ポスターから団扇から何から何までゴマンとあるが、

 猫のフラメちゃんのグッズはまだ無い。


 なら、俺が作ればいいのだ!!


 録画したテレビ番組からキャプチャーした猫のフラメちゃんの画像を使って、


 Tシャツやら、


 シールやら、


 ポスターやら、


 縫いぐるみ・・・は裁縫苦手だから、紙粘土でフラメちゃんフィギュアを作って、


 枕には猫のフラメちゃんの画像を張り付けて、抱き枕にしちゃったり、


 いつの間にか、俺の部屋には雑誌の切り抜きを猫のフラメちゃんだけの拡大コピーやテレビキャプチャーの写真を1面に張りつけ、


 パソコンやスマホの壁紙には猫のフラメちゃん。


 あらゆる家の家財道具には、猫のフラメちゃんのシールをペタペタ張り、


 1面の猫のフラメちゃんだらけ!!


 もう、俺には猫のフラメちゃん無しでは生きては生きてられけなーーーい!!


 キャーーーー!!フラメちゃ~~~~~~~~~~~~!!!!!


 大好きだよーーーーーーーー!!


 誰よりも愛してるよーーーーーー!!


 にゃ~~~~~~~~ん!!



 ある日の事、俺はドキドキワクワクした。


 テレビのバラエティー番組で、また YUKARIのペット猫のフラメちゃんが出るというので、俺は録画までして観た。


 「にゃ~~~~ん!!

 これが私の相棒のフラメちゃんですっ!!」


 キャーーーー!!フラメちゃーーーーーーん!!好きだよーーーーー!!


 テレビに、猫のフラメちゃんが部屋いっぱいに置かれたカラフルなゴム風船に戯れていた。


 「フラメちゃんは風船がとっても大好きで、こうやって・・・」


 と、YUKARIは萎んだ風船を吐息でぷ~~~~~~~!!ぷ~~~~~~!!と大きく膨らますと、猫のフラメちゃんの目の前で膨らませた風船の吹き口を離して、




 ぷしゅ~~~~~~~~~~!!しゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅる!!ぶぉーーーーー!!



 YUKARIの吐息吹き出して吹っ飛んでいく、風船を猫のフラメちゃんがピョンピョンと跳び跳ねて追いかけた。


 か、か、可愛いいいいいいいーーーーーーっ!!!!!!!!!


 この風船の吐息が俺の吐息だったらいいのに!!俺の吐息にフラメちゃんに・・・!!

 だったらいいのに。


 「この風船はね。風船が大好きな猫のフラメちゃんの為にテレビのセットで飾ってた風船をスタッフに別けて貰って、私が膨らましたのよ。

 あ、このでっかい風船は風船割りで割れなかった風船よ。これはさすがに私の息じゃねぇ。

 このでっかい風船はフラメちゃんの1番のお気に入りでねぇ。」



 パァーーーーーーーーン!!



 「あらぁ!!フラメちゃん!!また風船に爪振れちゃたのね。」


 割れた風船の目の前でキョトンとしてる、猫のフラメちゃんを見て俺は、正に興奮度はマックスに達していた。


 きゃーーーーーん!!フラメちゃ~~~~~~~~~~~ん!!可愛いぃぃーーーーーーーーーーー!!


 はあはあ、ぜぇぜぇ。


 余りにも悶絶して興奮過ぎて鼻血ブーだ。


 そうなんだ!!猫のフラメちゃんは、風船が大好きなんだ!!


 俺はすぐさまゴム風船を買ってきて膨らまして、猫のフラメちゃんの顔をマジックで書いて、テレビで猫のフラメちゃんが風船で遊んだように突いたり掴んだり抱きしめたりして、一緒にフラメちゃんと遊んでいる妄想に浸った。



 パァーーーーーン!!



 駄目だ。妄想だと、虚しいだけだ。


  今すぐ!!


 俺は!!


 猫のフラメちゃんに逢いたい!!


 そして猫のフラメちゃんと俺と風船で遊びたい!!


 俺は激しい衝動に駆られるまま、猫のフラメちゃんの居るYUKARIの家の手懸かりを探した。


 スター名鑑に住所探しても、それは個人情報になるから役にたたない。


 手段としては、ネットで調べるか?


 YUKARIの家の有りかさえ・・・あった!!

 なーんだ、大型掲示板のスレッドの芸能人板調べたら住所載せてる奴居たぜ。


 プライバシーなんかスカスカじゃん。 


 俺はゴム風船いっぱいと猫のフラメちゃんへの『愛』を伝える為の猫缶を買い求めて、一目散にYUKARIの家の側へ向かった。


 ここだ。愛する猫のフラメちゃんの住んでる高級アパートは。


 俺は塀の陰に隠れた。

 

 さて・・・どつやって入ろうか。


 鍵はどうやって開けるか?


 それとも、ベランダから浸入・・・・


 「おたくも、YUKARIちゃんのファンなの?」


 うわっ!!


 隣にヌッと現れたのは、全身をYUKARIグッズで覆われた如何にもYUKARI『推し』の小太りな男だった。


 え・・・ええ。お、俺はYUKARIじゃなくて、飼ってる猫のフラメちゃん推しなんすけど?


 「へぇ~~~~~?」


 YUKARI推しの男は、俺を怪訝な顔で見詰めた。


 「猫、おたく好きなんだ。」


 ええ・・・まあ・・・


 「なんだおめー!!我はあの猫が憎いんじゃ!!YUKARIちゃんとベタベタしやがって!!

 猫ごときにYUKARIちゃんを一人占めしやがって!!我はあの猫を追い払いたいんじゃ!!

 我がYUKARIちゃんの『愛』を一身に受ける資格があるんじゃ!!」


 声がでけーよ。

 って、こいつはヤベェ奴だ。

 ストーカーを通り越して、サイコパスやんけ?


 こんな異常な妄想癖の奴から、俺の愛する猫のフラメちゃんを守らねば・・・


 ・・・って、こいつ!!YUKARIの家の鍵を容易に開けちゃって入っちゃったよ。


 もしかしたら、空き巣の常習犯かも。


 「ほーらニャンちゃん!!こっちおいで。」


 フラメちゃん!あいつの方に来るな!!・・・って、可愛いぃぃぃぃーー!!!!フラメちゃーーーん!逢いたかったよーーーーって、何思ってんだ俺?


 って、フラメちゃんがあいつの方に行ったら・・・そうだ!!


 俺はおもむろにバッグから風船を取り出して膨らまして投げて、猫のフラメちゃんをサイコパス野郎に行かせないようにした。




 パァーーーーーーーーン!!



 何するんだ!!俺はフラメちゃんと遊びたいんだ!!


 「こんにゃろ!!YUKARちゃんに縋る猫をやっつけるチャンスをブッコワシやがって!!」


 俺とサイコパス野郎はYUKARIの家の中でお互い羽交いじめになって格闘した。


 俺は風船を膨らましてフラメちゃんへ投げる。


 サイコパス野郎がそれを割る。


 俺は風船を膨らましてフラメちゃんへ投げる。


 サイコパス野郎がそれを割る。


 俺は風船を膨らまして・・・


 「ギャーーーーーーーー!!浸入者よ!!」


 「またお前か!!今度こそ不法侵入で警察呼ぶぞ!!」


 部屋に帰ってきたYUKARIとそのマネージャーの声で我にかえった。


 そして、このストーカーのサイコパス野郎はYUKARIの家に何度も侵入する常習犯だった事も。



 ・・・・・・


 ・・・・・・



 結局、俺はこのストーカーのサイコパス野郎と仲良く警察に逮捕された。


 何で俺まで?そもそも、俺もあの猫のフラメちゃんと風船で遊びたいが為に侵入を試みた同類だし。


 しかし、直に見た猫のフラメちゃん可愛かったなあ。

 あの時、猫のフラメちゃんと同じ空気を吸ったんだ。それだけでも充分さ。





 ~推しのフラメん子~


 ~fin ~

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推しのフラメん子 アほリ @ahori1970

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