4.戻らない身体

ピギーは食べたり寝たりと寛いだ時間を過ごしながらウォーレンのラボラトリーでまったりとしていた。


多忙な日々を忘れウォーレンと昔の思い出話に花が咲く。


そして、ウォーレンが動物実験で元に戻ったという投与から18時間というタイムリミットを迎えた。


「おかしいな。猿やオランウータンでは大体これくらいの時間でスカルボーンの効力は切れたんだけどな。人間は身体が大きいから50ccは動物よりも多く投与したんだけど…ピギー、もうちょっと様子を見ないと何とも言えないよ。予定通り後6時間いてくれるね」


「オッケー、俺は全然構わねえぜ」


ローリングストーン誌を読みながら答えるピギー。


そして、24時間が経過した。


右手でピストルの形を作りそれを顎の下に当てて思案するウォーレン。


「おかしいな。もう元に戻ってもおかしくないんだが…済まない、ピギー。もう5時間だけ様子を見させてもらってもいいかい?」


「オッケー、それよりもドク、このねえちゃんのパイオツ見てみろよ。すっげー堪んねえな」


プレイボーイのモデルのヌード写真をウォーレンに見せつけるピギー。


「僕には刺激が強すぎるから勘弁してくれないかい、ピギー」


頬を赤らめるウォーレン。


そして、5時間が経過した。


「済まない、ピギー。僕の見通しが甘かった。何て謝っていいんだか…」


申し訳なさそうにウォーレンが謝罪する。


「おいおい、ドク、気にすんなって。往生際が肝心って言っただろ。ほら、俺スリムになったみてえだろ。骨と皮ってよりもよ、骨と骨ってみてえな。ウケるよな。つー事で俺、仕事もあっから帰るからよ。ドク、マジ気にすんなって」


リアル生きる屍と化しても意にも介さず飄々と言ってのけるピギー。


「ピギー、何か身体に異変があったらすぐに連絡してくれるね」


「オッケー、ドク。まあ、死んだ時は死んだ時だ。そんじゃ、またな」


ピギーは着て来たバーニーズニューヨークの特注のスーツを身に纏い家路に就いた。


道行く人々は口をあんぐり開けて呆気に取られていた。


「うえーん、ママ、あのおじさん怖いよー」


泣きじゃくる子供。


ピギーのその様相はスタイリッシュなバーニーズニューヨークのスーツに身を包んだ死神のようであった。

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