第11話 薄味

金宮が殺害されたのが分かった翌日。

俺はいつものように1人で登校していた。

「……」

昨日金宮が死んだ後、白雪の父さんに計画が成功したことの連絡をした。

文面だけでも分かるくらい喜んでいた。

これで本当に終わったんだ。

「……」

なんだこれ。

すごく釈然としない。

Youtube テロリストが行ったことは確実だが全然真相が分からない。

まるで独裁スイッチだ。

「……多分、金宮を殺したのは俺なんだろうな」

俺は橋を止まること無く渡りきった。


――教室。

「桐林君、金宮と仲良かったよな」

休み時間、俺はやることがなく桐林君に話しかける。

「はい、金宮君は転校したばかりの僕と仲良くしてくれました」

「……もし、もしもその優しいやつを殺したのが俺だったら…君はどう思う?」

何を聞いているんだ俺は。

なんで人の恨みを買おうとしているんだよ。

「何も思いませんし何もしませんよ。まだ短い仲なので」

「そうか……」

思った以上にドライな返しが来たので困惑してしまう。

だけど俺は知っている。

金宮が死んだことで悲しんでいるやつがいることは。

「ごめん、変なこと聞いた。金宮みたいなやつと出会えて良かったな」

「はい、彼のおかげで新しい友達とも出会えたので」

俺はそれを聞いてからは何も言わず自分の席に着いた。


――放課後。

「……」

もう誰も傷つけたくない。

今になって金宮を殺したのを後悔している。

完全に卑怯者だ。

俺はもう奪うのでは無く守りたい。

これからの人生はこの罪を償えるような職に就こう。

それこそ白雪が喜びそうだ。

「警察……とか良さそうだな!」

俺は気分転換のつもりで歩道の中を大声で笑う。

「ははは!はは!ははは!!!」

どうだ白雪、これが答えだ。

「はは!は!」

俺は強くなったよ。

――公園。

「はぁ〜……」

サングラスをかけた男は壁にボールをぶつけて遊んでいる1人の男の子を見ながらタバコを吸う。

「なぁ僕、一緒にキャッチボールをしないかい?」

サングラス男はタバコを踏み潰して男の子に提案する。

「え、うん…おじさん、お仕事は?」

子供の意表を突く言葉を聞いた数秒後サングラス男は質問をする。

「なぁ僕、4万円と新しい友達がいるとしたらどっちを選ぶ?」

男の子は迷うことなく答えた。

「友達!どれだけお金があってもつまらないもん!」

男の子の返答を聞きサングラス男はその頭を撫でる。

「正解だよ、大人の世界でもお金より信頼関係、友達が大事なんだ。だからこれあげる」

サングラス男は男の子に4万円差し出す。

「え……そんな大金、もしかしてくれるの!?」

男の子は子供らしく動揺を隠しきれていない。

「そのお金でSwitchでも買いな。今の子供はゲームが大好きだからねぇ」

「ありがとうおじさん!!」

子供は4万を握りしめて公園から飛び出した。

「何やってるんだ?矢芝理樹やしばりき

子供が立ち去った後に木陰から男が現れる。

「なんでもないですよ秋山さん。ただの遊びですから」

矢芝はそう言い秋山に報告した。

「白雪佑斗の副産物はしっかり死にました。次の依頼まで本部で待ちましょうか」

「……そうか」


第12話に続く…

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