第11話 薄味
金宮が殺害されたのが分かった翌日。
俺はいつものように1人で登校していた。
「……」
昨日金宮が死んだ後、白雪の父さんに計画が成功したことの連絡をした。
文面だけでも分かるくらい喜んでいた。
これで本当に終わったんだ。
「……」
なんだこれ。
すごく釈然としない。
Youtube テロリストが行ったことは確実だが全然真相が分からない。
まるで独裁スイッチだ。
「……多分、金宮を殺したのは俺なんだろうな」
俺は橋を止まること無く渡りきった。
※
――教室。
「桐林君、金宮と仲良かったよな」
休み時間、俺はやることがなく桐林君に話しかける。
「はい、金宮君は転校したばかりの僕と仲良くしてくれました」
「……もし、もしもその優しいやつを殺したのが俺だったら…君はどう思う?」
何を聞いているんだ俺は。
なんで人の恨みを買おうとしているんだよ。
「何も思いませんし何もしませんよ。まだ短い仲なので」
「そうか……」
思った以上にドライな返しが来たので困惑してしまう。
だけど俺は知っている。
金宮が死んだことで悲しんでいるやつがいることは。
「ごめん、変なこと聞いた。金宮みたいなやつと出会えて良かったな」
「はい、彼のおかげで新しい友達とも出会えたので」
俺はそれを聞いてからは何も言わず自分の席に着いた。
※
――放課後。
「……」
もう誰も傷つけたくない。
今になって金宮を殺したのを後悔している。
完全に卑怯者だ。
俺はもう奪うのでは無く守りたい。
これからの人生はこの罪を償えるような職に就こう。
それこそ白雪が喜びそうだ。
「警察……とか良さそうだな!」
俺は気分転換のつもりで歩道の中を大声で笑う。
「ははは!はは!ははは!!!」
どうだ白雪、これが答えだ。
「はは!は!」
俺は強くなったよ。
・
・
・
――公園。
「はぁ〜……」
サングラスをかけた男は壁にボールをぶつけて遊んでいる1人の男の子を見ながらタバコを吸う。
「なぁ僕、一緒にキャッチボールをしないかい?」
サングラス男はタバコを踏み潰して男の子に提案する。
「え、うん…おじさん、お仕事は?」
子供の意表を突く言葉を聞いた数秒後サングラス男は質問をする。
「なぁ僕、4万円と新しい友達がいるとしたらどっちを選ぶ?」
男の子は迷うことなく答えた。
「友達!どれだけお金があってもつまらないもん!」
男の子の返答を聞きサングラス男はその頭を撫でる。
「正解だよ、大人の世界でもお金より信頼関係、友達が大事なんだ。だからこれあげる」
サングラス男は男の子に4万円差し出す。
「え……そんな大金、もしかしてくれるの!?」
男の子は子供らしく動揺を隠しきれていない。
「そのお金でSwitchでも買いな。今の子供はゲームが大好きだからねぇ」
「ありがとうおじさん!!」
子供は4万を握りしめて公園から飛び出した。
「何やってるんだ?
子供が立ち去った後に木陰から男が現れる。
「なんでもないですよ秋山さん。ただの遊びですから」
矢芝はそう言い秋山に報告した。
「白雪佑斗の副産物はしっかり死にました。次の依頼まで本部で待ちましょうか」
「……そうか」
第12話に続く…
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