第9話 事件
――月曜日。
俺は退院後いつものように学校に来ていた。
「杉浦、お前本当に災難続きだな!」
クラスメートの男子は俺が来るなり笑いながら俺を煽る。
「そうだな。でも俺はもう慣れちゃったよ」
「あれ?一人称変えた?」
俺はクラスメートを押しのけ金宮の方へ直進する。
「よぉ杉浦。お前ケガ大変だったな」
「あぁ、心配してくれてありがとよ」
俺と金宮は仲が良さそうに会話をする。
傍から見たら仲がいいのかもしれないが俺と金宮の間ではもう修復できないほどの裂け目があった。
「すまん、先週提出する宿題まだやってないんだわ」
俺はそう言って椅子に腰掛ける。
「はは!なんでお前入院してる間とかにやらないんだよ!」
……それはお前を殺すために計画を立ててたからだよ。
「そうだけど…スプラで新作出る前にX帯行きたかったんだよ。仕方ない仕方ない」
俺は平然と嘘をつきながら空欄を埋めていった。
※
――金曜日、教室。
……おかしい。
依頼してから早5日経つが金宮に変化が見られない。
「そうそう!それでよ〜」
金宮はいつものようにクラスメートと楽しそうに会話してやがる。
やはり詐欺サイトだったのだろうか。
せっかく白雪の父親と良好な関係になれたっていうのにまた一からスタートかよ。
「はぁ……」
俺は耐えきれずため息をつく。
「なんでため息ついてるのー?」
近くの席に座っていた女子が聞いてくる。
「別に、入院で溜まった未受験の小テストが昨日中に終わらなかっただけだよ」
「そっかー!大変だね!」
俺は半分本当の嘘を言いながら学校で禁止されているスマホを開く。
『今のところ金宮光太郎に変化はありません。まだ様子を見る必要がありそうです』と白雪の父親に送っておいた。
おそらく返ってくるのは『やはり詐欺サイトだったのでしょうか?』みたいな内容だろう。
「ちくしょう……!」
「未受験そんなに大変なの!?が……頑張ってね?」
俺は唇を噛み締めながら小テストの勉強をしていた。
※
――日曜日。
俺はその日、白雪の父親の家に尋ねていた。
「結局、金宮光太郎は目立った動きを見せませんでした」
俺は前と同じ席に座り白雪の父親に報告する。
「しかし、影響が出るのはもう1週間後になる可能性があるかもしれません。ほら、これを見てください」
白雪の父親はそう言ってタブレットに写った画面を見せてくる。
「ここですか?''チャンネル削除方法は我々独自の手段及び非公開になります''」
「はい、もしかしたら我々が予想できない手段で来るかもしれないのでまだ待つ必要はあるかもしれません」
白雪の父親は少しじれったそうな表情をして言う。
「そうですか……もう1週間待ってみて何も無ければ別の手段を考えましょう」
俺は悠長な事を言うが白雪の父親が首を振る。
「引っ越し日が近いのでそれは少し厳しいです。延期しようにもイタズラが激化して引っ越し先まで特定されたら私としてはとてもマズイので」
確かに、Youtube テロリストだけを頼りにすると協力してくれる白雪の父さんに悪い。
「……何か無いのか」
結局、俺と白雪の父さんは解決策を出せることなくその日は家に帰った。
※
――翌朝。
昨晩は騒音でよく寝れず、朝6時に目覚めてしまった。
「……」
俺は半目で階段を降りてテレビをつける。
「…………は!?」
俺はテレビに写った画面を見て眠気が吹き飛んだ。
『昨夜✕✕県✕✕市の集合住宅で14歳の少年を殺害したとして、少年の母親と思われる金宮春子容疑者が殺人の容疑で逮捕されました。母親の息子である、金宮光太郎くんは刃物で体中を切りつけられたとされています』
第10話に続く…
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