第8話 理解者
「それで、早速本題に入るのですが」
俺は高そうな紅茶を飲みながら目の前に座っている白雪の父親に言う。
「白雪を殺した人物を殺す手伝いをして欲しいです」
「……誰が殺ったか分かるのですか?」
白雪の父さんは濁りきった目を俺に向ける。
「はい、白雪を自殺へと追いやった主犯は金宮光太郎です。彼が住所を流出させた事が全ての始まりです」
ガンッ!
僕がそう答えた瞬間テーブルから甲高い音が響いた。
「あいつが……いや、すみません。少し気が高まってしまい……」
白雪の父さんはおどおどしながら頭を下げる。
怒るのも無理はない。
俺なんてその怒りを実行にまで移し、失敗したのだから。
「気持ちは痛いほど分かります。……むしろ俺が白雪の自殺を止められなかったのは今でも申し訳なく思っています」
俺も頭を深々と下げる。
「それで…金宮光太郎を警察に突き出すのですか?」
白雪の父さんの質問に俺は首を振る。
「いえ、あいつは白雪の死に直接関与している訳では無いので罪は軽くなると思います。ですので……」
そして俺はスマホをテーブルの上に置く。
「これは……?」
白雪の父さんは眉をひそめながら問う。
「これはYoutuberのチャンネルを削除したり追加料金で殺害も頼めるサイトです」
半信半疑な白雪の父さんに俺は真面目な顔で返す。
「なるほど、依頼料を払う手助けをするのが目的ですか。……それで、信憑性は?」
白雪の父さんの疑問は最もだ。
こんなサイト信じる方がバカだと俺も思う。
「信憑性は正直言ってありません。金を騙し取られるだけかもしれません。それでも……」
俺は立ち上がって頭を下げる。
「少しの可能性でも……白雪に顔向けできるようにしたいんです。だから…お願いします」
「……」
僕が頭を下げてから30秒くらい経った頃だろうか。
「……分かりました。Youtube テロリストの依頼及びその料金は私が受け持ちます」
白雪の父さんは声を軽くして言った。
「ほ、本当ですか!?」
俺は思わず涙が出る。
ようやく、ようやく白雪に会いに行けるから。
「泣かないでください。むしろ私は感謝しているんです。何もできないまま終わらないと知れたので」
白雪の父さんは無機質な笑顔を見せて立ち上がる。
「俺も白雪の父さんみたいな理解者に出会えて嬉しいです。誰にも理解してもらえないと思っていたので」
俺は出された紅茶を飲み干し立ち上がる。
「では改めて、協力よろしくお願いします」
俺は白雪の父親と大人の握手をした直後に帰宅した。
※
俺が帰宅した頃一通のメールが来ていた。
『Youtube テロリストの依頼完了しました。追加料金を含めた代金は4万円でした』
「……追加料金はチャンネルを削除する料金の2倍って感じか。ほんと、白雪の父さんには感謝しかないな」
俺はポッキーを冷凍庫に投げ入れる。
「和樹ー夕飯できてるわよー?」
俺は1週間ぶりの家庭の味を味わった後、自分の部屋でスマホを見る。
「LINE?あー白雪の父さんからか」
内容は今回の協力に関する規約みたいなものだった。
『今回の協力で私が全料金負担する代わりに以下のルールを守って欲しいです。※無理な内容では無いので安心してください。1つ目、金宮光太郎の様子を随時こちらに伝えてください。2つ目、今回の協力を第三者に口外しないでください。以上です』
俺はこの内容を見て全代金負担させるのは申し訳ないと思っていたから逆に安心した。
「……寝よ」
俺は1週間ぶりによく寝れた気がした。
・
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――とある居酒屋。
「秋山さん、例の人物から依頼が入りました。さすがの洞察力ですね」
派手なスーツとサングラスをつけた若い男はサラリーマンみたいな服装の男に言う。
「仕事の話はやめてくれ。酒が不味くなる」
男は焼き鳥を串から外しながら返す。
「で、今回はどうやって殺すんですか?」
サングラス男は楽しそうな顔つきで問う。
「そうだな……同じ事をやり返す感じにしようか」
男はそう言ってビール缶を飲み干した。
「ほんと、安酒ばっか飲みますね」
第9話に続く…
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