第6話 逆ギレ

詐欺っぽいサイトを見つけた翌日。

「おはよう」

僕はいつものように教室に入った。

だがいつもと1つ違うのは学校に行く目的が増えた事だけだ。

「杉浦!お前大丈夫だったか!?」

「白雪がまだ川にいるってのは本当かよ!?」

「杉浦君、なんで白雪君自殺したの!?」

僕が教室に入った瞬間これだ。

デリカシーの無いクズ共め。

「ごめん、白雪の事はやめてくれ」

「ぁ……ごめん!」

僕は人ごみを押しのけて席につく。

「金宮、白雪がいないから今日一緒に帰らないか?」

僕は教室に入った時に迫らなかった金宮に聞く。

「え?あーいいよ」

金宮は机にうつ伏せになりながら返す。

よかった、了承してくれた。

「本当か?ありがとう!」

僕はなるべく笑顔でいることに徹する。

僕の目的を遂行するために。

「お前が辛いのは分かる。気にすんな」

金宮は薄い笑みを浮かべている。

なに笑ってやがる。

僕が今日学校に来た理由はただ1つだった。


金宮を殺す。


――放課後、通学路。

「金宮……すまん何でもない」

どうにかして金宮の注意を引かないといけないが何も話題が思いつかない。

「杉浦、白雪の件だけど……何もできなくてごめん」

金宮は申し訳無さそうな顔をして言う。

やめてくれ、本当はお前じゃないのではって思ってしまう。

「いや、大丈夫だ。むしろお前に変な責任与えちまった」

僕は抗う感情を無にして返す。

「……」

緊張で視界が狭まっていく。

僕はこれから金宮を殺さないといけないから。

「俺さ、あれから頑張って登録者増やしたんだ。1100人だ。笑えるだろ?どれだけ頑張ってもあいつの力には及ばなかった」

金宮は苦笑する。

「あー……すっごく」

僕は近道だとの細い路地に入る。

「まじか、こんな近道があるなんて初めて知ったよ」

「……あっ」

僕は路地のコンクリートに躓いて転ぶ。

「ふっ…おいおい、大丈夫かよ?」

金宮は笑いながら手を差し伸べる。

よし、完璧だ。

細い路地で金宮殺害対象の大きな隙。

金宮の手を掴んだところでもう片方の手でカッターナイフを使い、動脈出血させ金宮が動揺したところで首を狙う。

「ありがとう、金宮」

僕は金宮の手をギュッと握り、右手を地面から振り上げた。

これで、ようやく白雪に会える。

「しゃがんでいると蹴りやすいな。某兵長が言っていた通りだ」

「……は?」


金宮の謎の言葉の後に響いたのは、僕の断末魔だった。


「ごはぁ!」

金宮の蹴りで僕の頭が壁に強打される。

「ぐぅ……この!人殺しがぁ!!!」

僕は叫びと右の拳を金宮に放つ。

「お前が俺を殺そうとしてたの知ってたよ」

しかし金宮のカウンターの蹴りが僕の顔面に突き刺さり路地の奥へ吹っ飛ばされる。

「ぐぁ……ごほっごほごほ!!」

……そういえば金宮はスポーツテスト上位だったな。

これは駄目だ…勝てない。

「お前さっき、この人殺しって言ってたな?」

金宮は僕の胸ぐらを掴む。

「……何も間違って無いだろ。お前が白雪を!」

「ふざけんな!」

金宮の一喝と共に僕の腹に鈍い痛みが走る。

「がぁ!はぁ……はぁ……」

僕はもう呼吸をする事に必死だ。

「いいか?次の言葉よく聞けよ」

次の金宮の言葉は僕の心を再度壊した。

「何勝手に罪を擦りつけてやがんだこのクソ野郎。白雪が死んだのは自殺だろうが!確かに白雪が死んだ大元は俺かもしれない。だが住所を教えたただ1人が広めただけだ。幾つもの可能性が重なって、白雪が死んだんだよ。俺だけのせいにしやがってよ!人殺しって言うんなら自殺を止められなかったお前こそ人殺しじゃねぇか!俺にだけ罪を押しつけやがって……クズが!」

……要するに自分は悪くないって言いたいんだろ?

お前の一時の幼稚な感情が白雪を殺したんだろ?

金宮の幼稚な発言に僕は再度スイッチが入る。

「……ふざけんなこのクズが。結局自分のした事を正当化したいだけだろ」

僕は負け犬の如く金宮に吠える。

「……そうだな、お前の言う通りだ。俺がどれだけ正しいって言ってもみんな口を揃えて俺が悪いって言うだろうな」

金宮はコンクリートブロックについた血を見て言う。

「お前が今それを知ったって――

「だから」

金宮は笑顔で言い放った。

「お前は事実を隠蔽しろ。そうすれば白雪が死んだ原因は誰にも分からない」

……意味が分からない。

そんな事僕が受け入れる訳が無い。

「でもお前はそんな事受け入れないし俺を絶対に許しはしない。だから」

次の言葉からは痛みで音が遮断された。


「このブロックが真っ赤になるまで殴る」


その言葉の直後に全身が砕かれるような激痛が走った。


――30分後。

ポツ…ポツ…

梅雨の影響もあってか夕方になって雨が降り出す。

「ちっ雨か。自転車に乗って坂から転げ落ちたとでも言っとけ。そうすればお前の事は言わないからよ」

痛みのせいでよく聞こえ無かったが助かったのだろうか。

「じゃあな」

「……」

怖い。

嫌だ。

死にたくない死にたくない死にたくない……

ザーザー……

金宮がいなくなった後、僕の殺意はしきりに強くなる雨で流されていた。


第7話に続く…

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