俺なんかまだまだw

大黒天半太

ヲタクの道はけものみちw

 ヲタクの道は、物欲と情報欲にまみれた『まっすぐけものみち』である。


 鉄腕アトムにはまった第一世代より下の世代なので、生まれてこの方完全なテレビっ子であり、白黒からカラーになるのも見て来た。テレビまんが(アニメ)も大好きだったが、何より実写(特撮)が好きだった。

 ウルトラマンやウルトラセブンで夢中になり、バンパイヤや怪奇大作戦を恐怖に怯えながら見ることを止められなかった。


 そして、恐るべき番組が始まる。

 闇に蠢くおぞましきものショッカー、等身大の怪人や戦闘員は、扉を開けて入って来る恐怖であり、街角に潜む悪夢だ。

 それに立ち向かうのは、悪の組織に改造され、忌まわしい怪人と同じ力を正義の心でふるって弱き人々を救うヒーロー、仮面ライダーの登場だ。

 はまらないわけが無い。


 と、同時に、文字通りの小さなおともだちだった私の胸の奥の柔らかい場所を鷲掴みにしたのは、テレビの中のきれいなお姉さん、緑川ルリ子(演:真樹千恵子)だった。


 本郷猛を父の仇とつけ狙い、誤解が解けてからは、知的なパートナーになる。ツンデレなんて言葉も無かったあの時代の幼気な少年たちを、どれだけ惑わせたのだろう。


 後のライダーガールズを考えても、島田陽子や山本リンダが居たわけで、紛れもなく『特撮のきれいなお姉さん』は定番であり、重要な構成要素の一つだと断言する(自分の性癖に対する、製作サイドへの責任転嫁とも言う)。


 連綿と続く仮面ライダーと戦隊シリーズのヒロイン達は、まさにヲタクの萌芽である特撮大好き少年たちにとっての知の女神ミューズであり、美の女神アフロディーテであった。


 年月が経ち、小さなおともだちが小さくなくなってしまうと、それは子どもの頃の思い出になってしまうわけだが、そこで卒業しないことを選択すると、大きなおともだち、いわゆる、特撮ヲタクが誕生する。


 サブスクもブルーレイもDVDも、いやビデオすら無かった時代の、文献と記憶のみが頼りのヲタク達は、どのジャンルでも濃度は高かったが、特撮ヲタクはまた特濃だった。


 怪獣怪人の造形・デザイン、撮影に使われたプロップやギミック、世界観や設定、脚本家や監督の演出、得意分野を語らせれば何時間も止まらぬ猛者ばかり。


 だから、当時むかし現在いまも私は特撮ヲタを名乗ったことはないし、卒業してない大きなおともだちレベルで楽しんで来た。温いぬるいヲタク、いわゆる、ヌルヲタだ。


 歳を取るにつれ、『特撮のきれいなお姉さん』は、憧れのお姉様から素敵な女性になり、可愛いお嬢さんになってしまったが、その魅力は変わらない。


 主人公側に可憐なヒロインがいれば、悪の側にも美しき幹部がいる。

 まぁ、偉大過ぎるへドリアン女王陛下(子供心にも迫力あり過ぎのレジェンド曽我町子)は別格として置いておいくとしても、強くてカッコいい女幹部も特撮には必須なのだ。


 ひたすら怖いお姉様がたから、ダークサイドだけど、宿命を背負った一人の女性という、アクションにドラマ性も加わったキャラにシフトして行く。その重い宿命は悪の側にこそ配置されるに相応しい。


 ダイナマンで、失脚から自力で這い上がるメギド王子と共に帝国を簒奪する王女キメラ(香野麻里)。ターボレンジャーの流れ暴魔ヤミマルとキリカ(森下雅子)も、本流の暴魔百族に対して似た展開だった。


 チェンジマンで、滅びた星の王女でありながら、侵略者の部下として男として生き延び、同僚でしかなかったはずのブーマに命懸けで護られたことで女に戻りゴズマに反旗を翻す副官シーマ(藤枝かな)。似た立場ながら女王アハメス(黒田福美)は、自分の星の再興のために積極的に従っていたが、結局ゴズマに裏切られる。


 マスクマンで、レッドと愛し合い、人類との共存を願いながら封印されるイアル姫(浅見美那:双子のイガム王子と二役)。


 ジェットマンのマリア(丸山真穂)も、アバレンジャーのジャンヌ(桜井映里)もヒーローの恋人が洗脳されて敵幹部で登場する。


 どのキャラも味があり、演じる女優さん達も美しく可憐だった。ちょうど特撮熱が再燃した頃で、当然主人公側のヒロイン達も素敵ではあるんだが、どちらも捨てがたかった。


 で、今もずっと一番の推しである特撮ヒロインはと言うと、獣拳戦隊ゲキレンジャー(2007年)の敵、臨獣拳アクガタの女幹部、臨獣カメレオン拳のメレ(平田裕香)だ。


 マクドナルドのCMでマックの制服着た笑顔のチャーミングな女の子というイメージしかなかった平田裕香が、突然かなり際どい衣装のキャラで非情で強い女拳士の幹部って大丈夫なのと思ったが、始まっての一挙手一投足に惚れた。


 自分を蘇らせた臨獣殿の主、臨獣ライオン拳の理央(演:荒木宏文)に惚れ、どれだけ邪険にされても慕い続け、「理央様の愛のために生き、理央様の愛のために戦うラヴウォリアー」と見栄を切り、「格下とは戦わない主義なの」とゲキレンジャー達をカクシターズと呼んで相手にしない。強烈に振り切ったキャラ。


 最終回前のラスト数話の間だけ、理央とメレが両想いだったことがわかり、束の間の幸せを感じる乙女になり、戦いの中で再び命を落とす。

「理央様申し訳ありません。メレは先に参ります」

「メレ、俺もすぐに行く」

 本当に掛け値なしに、愛のために(第二の生を)生き、愛のための戦いの中で再び死ぬラヴウォリアーだった。


 特撮ヒロイン特集のムックとかではなく、女優さん自身の写真集とか買うようになったのは、ヒロインサイドでは特捜戦隊デカレンジャー(2004)のデカイエロー/ジャスミン役の木下あゆ美が初めてだった。

 が、悪のヒロインサイドでは、平田裕香が最初でしかも自分なりにかなり頑張ったが、初期の写真集はソールドアウトで入手できなかったのが心残りだ。

 私的な推し活の事始めだったことは間違いない。


 惜しむらくは、地方在住なので、イベントや舞台を見に行く機会が無いこと。東京の友人の推し活の充実ぶりがうらやましい。


 昔の幽遊白書の舞台で、荒木宏文がコエンマ様役、平田裕香がぼたん役と聞いた時には地方在住がどれだけうらめしかったか。


 仮面ライダーW(2009)での学芸員・轟響子としての登場も嬉しかった。

 宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド(2018)では、敵側の戦士として宇宙忍デモストに召喚され戦わされるが、同じ属性であり同じく愛情深いカメレオングリーン/ハミィ(大久保桜子)を庇いデモストの支配を撥ね退ける。強くてカッコいい、そして愛に溢れたメレが見られたことが何より嬉しかった。

 キャラとしても特撮&アクション経験のある女優としても、メレと平田裕香は私の推しであり続けるに違いないと思う。





 

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